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ぬくもりのテーブル

幼い頃、
あたたかいお湯に茶葉を浮かべ、
ほうじ茶をすすった。
湯気の向こうで、
日々の味わいが
何よりも深かった。

甘さを求めた季節がある。
ミルクティー、ココア、アップルティー、
ホットラテの甘美な響きは、
子供の夢の続きを描くために。
甘くなくちゃ、生きる意味も薄れると信じていた。

やがて、大人になりたくて。
たっぷりのミルクと砂糖を溶かしたコーヒーに、
少し背伸びした自分を映し込む。
それでも、
いつしか甘さより苦みを知ることに憧れた。
ブラックコーヒーを手に、
心の奥に潜む影と向き合うように。

そして今、
白湯を飲む。
ただ、そこにある温もりを感じながら。
「なんも、味せんねぇ」
昔の私が笑う声が聞こえた気がして、
私もふっと笑った。

味を求め続けた日々の果てに、
無味という豊かさに気づくのは、
きっと静かな奇跡だ。


あとがき
むすめが小さいころ、白湯を飲ませたときの一言と
私が小さいころ白湯に対して思っていた言葉が
重なりました。

今日は雨で寒くって、白湯を飲みながら
そんなことを思い出しました

長女だったかな、次女が言ったんだっけ。。。
記憶はあいまいです(;´Д`)


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SAI - 青の世界と物語
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