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雪の音を集めるクマ
冬の森に、雪の音が響いていました。
その森に住む小さな白いクマの ノエル は、木製の小箱を抱えて雪の音を集めていました。
「さらさら……」
木々を撫でる雪の音を、そっと箱にしまいます。
「キュッキュ…..」
雪を踏む確かな足音も、そっと拾って。
「ふわり……」
雪が風に乗って舞う音も大切に詰めます。
ノエルは静かに微笑みながらつぶやきます。
「冬の音はなんて美しいんだろう。」
ある日、ノエルは森の奥で オオカミ に出会いました。
オオカミは木の根元に座り込み、どこか疲れた様子をしています。
「どうしたの?」とノエルが尋ねると、オオカミは静かに答えました。
「なんだか、毎日がむなしいんだ。心の中に何か空っぽな場所がある気がして……それが怖いんだ。」
ノエルは少し考え、小箱を差し出しました。
「耳を澄ませてごらん。君には何が聞こえるかな?」
オオカミが小箱を耳に当てると、さらさらと柔らかな雪の音が優しく響きました。
その音は、静かな森の中で雪が舞い、風に運ばれる音――幼い頃、雪の上を駆け回った後、疲れてふと立ち止まった瞬間に耳にした音そのものでした。
オオカミの記憶の中に、あの頃の景色が鮮やかに蘇ります。
駆け回る足音、冷たい風、月明かりに照らされた白い世界。
そして、その全てを包み込むような「さらさら」という静かな雪の音――それは幼い頃の安心感と喜びを思い出させるものでした。
オオカミは心の奥底に眠っていた気持ちに気づきました。
「そうだ……僕は、寒い冬なんて嫌いだって思っていたけど、本当はこの雪の音が大好きだったんだ。」
ノエルは優しく言います。
「雪はいずれ消えてしまうけど、雪の音はずっと君の心の中で残り続けるよ。君が耳を澄ませれば、いつだって聞こえるはず。」
オオカミは深く頭を下げ、ノエルにお礼を言いました。
「ありがとう。大切なことを思い出せたよ。」
ノエルはにっこり笑って答えました。
「大切なものはずっと君の中にあったんだね。その気持ちを忘れないで。」
オオカミが去り、森には再び静かな雪が降り始めます。
ノエルは小箱を抱えながら歩きました。
「雪の音は一瞬だけ。でも、その儚い瞬間が心に大切なものを残してくれる。それが冬の音の魔法なんだ。」
ノエルが立ち去ると、森にはただ雪が降り続ける音だけが残りました。
その音はまるで、空気そのものが語りかけているように静かで優しいものでした。
おしまい
大切なものを見失いそうなあなたへ
本当に大切なものは、目には見えなくても、ずっとあなたの中にある。
静かな雪の音のように、ふとした瞬間に心が気づく日がくるよ。
あとがき
雪は、やがて消えてしまうもの。
でも、その音は心の中にそっと残り続ける。
雪の音を集めるクマ、ノエル。
何かを失い、心に空白を抱えるオオカミ。
この出会いは、ただの偶然だったのだろうか。
それとも、オオカミが本当に大切なものを思い出すための必然だったのか。
ノエルが集めていたのは、オオカミが失ったはずの記憶。
それは、「大切なものは最初から君の中にあった」と伝えるためだった。
雪は消えても、その音は心に残る。
儚いものの中に宿る、確かなもの。
それが、冬の音の魔法なのかもしれません。
この物語が、あなたの心にもそっと届きますように。
動画を見てくださった方本当にいつもありがとうございます♡
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