追いかける風
人間は怖い。一昔前、人間の友達が出来た。僕は化けて人間と遊んでいた。冷やかしてやろうと思ったんだけど、すんごく楽しくていつしか友達になっていたんだ。
あの日は風が少し強くって、でも一緒に遊んでいたら突風が吹いて、僕は驚いて耳としっぽが出てきちゃったんだ。そしたら友達がすごく怖い顔をして大人たちを呼んで、僕を追いかけまわしてきたんだ。怖かった僕は森の中に逃げ込んだ。
友達だと思ってたのに、悲しかった。あれ以来人間が怖い。だらか僕は人間にちょっと悪戯をしては驚かすんだ。自分の存在を確かめるように。
森の風景もすっかり変わったこの頃、人間に出会うことも少なくなった。面白くないなーって森の中を歩いていたら男の子を見つけたんだ。その子は一人で遊んでた。
僕は驚かしてやろうと思って人間に化けてみたんだ。「一緒に遊ぼう」って。そしたらそいつはにこって笑ってたけど涙を流してた。僕は気にせず一緒に遊んだんだ。木漏れ日がこぼれる昼下がり、僕たちの笑い声とセミの鳴き声が響いてそれは特別な時間へと変わっていった。「また明日も会える?」そういうもんだから、「また明日ね」って僕は答えたんだ。
今日もあいつが来たから、森の中を探検したんだ。疲れて木の陰で休んでいた時、あいつが教えてくれた。学校に居場所がないんだって。僕は学校ってのがわかんないから「そうなんだ」としか言えなかった。
数日後、あいつは静かに川辺に座ってメダカを見ていた。「メダカが好きなのか?」って聞いたら「泳いでいるメダカって可愛いね」って言ってたから食べたいわけではなさそうだ。
今日は何して遊ぶか聞くと、あいつは静かに話し出した。友達だと思っていた奴に意地悪されるんだって。だから学校に行きたくないって言ってた。なんか、ドキってした。
また別の日は、「もうすぐ夏休み終わっちゃうね」って言ってた。どうやらあいつは夏の間しか遊べないらしい。
僕はタヌキだーって言って脅かしてやりたいんだけど、もう友達ではいれなくなるのかなって思うと言えなくなった。
あいつが「今日で最後なんだ」って言ってた。せっかく仲良くなれたのに。でもあいつ、「帰りたくないな」って言うから、「じゃぁずっといればいいだろ」って言ってやったんだ。そしたら、また泣いて笑ってた。遠くからあいつのばあさんの声が聞こえた。「そろそろ行けよ」って言ったら「また会えるかな」って聞いてくるから嬉しくて仕方なかった。
だから微笑んで答えようとしたら突風が吹いて、思わず耳としっぽが出てきてしまった。僕はあの日のことを思い出して怖くなった。こいつを失くしてしまうことが。あいつの顔を見るのも怖くて僕は逃げた。
あれからまた暑い夏がやってきた。あいつのことを思い出す。僕は涼を求めて川辺へ行った。水は冷たくておいしくて、泳いでいるメダカを食べずに眺めてた。僕はそのまま眠ってしまったんだ。
夢の中であいつと僕は遊んでた。あいつの声がする。「ずっと友達だよ。」って何度も言ってくる。でも僕はその言葉が嬉しかった。その声はだんだんと鮮明に聞こえ僕はそこで目を覚ました。
目の前にはあいつがニコニコしながらこっちをみていた。僕は化けていないことをすっかり忘れて、「来るの遅いじゃないか」って言ったんだ。そしたらあいつが「遅くなってごめん。これからはいつでも会えるよ」って言ってきた。
だから僕は、「居場所ができたな」と二人で笑った。
あとがき
この話をアレンジしました(*^-^*)
タヌキと少年、同じような苦しみを抱える二人が出会う物語。
最初は人間を騙してやろうと思っていたタヌキが、徐々に少年に心を許し、本当の友情を育んでいく過程が描かれています。しかし、過去に友達だと思っていた人間に裏切られた辛い経験がトラウマとなり、再び友達を失うことへの恐怖がタヌキを襲います。そのため、正体がばれそうになると、恐怖と悲しみからタヌキは逃げ出してしまうのです。
一方、少年はタヌキとの出会いを通じて、自分の心に抱える傷を癒していきます。学校での孤独や辛い経験を、タヌキとの時間の中で忘れ、心を安らげることができたのです。物語を通じて描かれるのは、形を超えた深い友情の物語。タヌキが過去のトラウマを乗り越え、少年という本当の友達を見つけることで、互いに心を癒し、共に成長していく様子が温かく描かれています。
この物語は私の動物占いが「社交的なタヌキ」というところから派生していますが、ペガサスやクロヒョウに憧れます(/ω\)かっこいいやんめっちゃ。
たぬきって。
まぁ、可愛いかw
儚く/美しく/繊細で/生きる/葛藤/幻想的で/勇敢な 詩や物語を作る糧となります