協働に苦しむ経験 ~仕事が影響力を持った時【いちばん身近な協働論】
今回は、関わる人たちの「感情」を大切にしながら協働に取り組んでいる方々への、微かなエールとなればと思い、執筆します。
周りの人たちの気持ちを汲み取りながら進めて来たはずなのに、結果も出してきたはずなのに、だんだん雲行きが怪しくなる。
「あれ? 私、嫌われている…?どうして?」。
そんな風にもがいた経験と、書籍等も参考に手探りでつかんだことについて、「大丈夫だよ!」というメッセージと共にお届けします!
1、仕事が影響力を持ち始めた頃…
▶協働のムーブメント
関わる人たちの相乗効果で、協働のムーブメントが巻き起こっていくこと。
これは、協働の最も本質的な成果であり、一番の喜びでもあります。
小さなムーブメントは、さまざまな方向に影響を与え、大きなムーブメントにつながります。
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このような協働のムーブメントは、関わる人たちに喜びや幸せをもたらす一方で、一部の人たちには「脅威」を与えてしまうという現実があります。
▶協働が脅威を与える
協働のムーブメントは、得体のしれない新興勢力のようなものとして、他者に脅威を与えることがあります。
現場から力強いエネルギーで、協働が自走し始めることは、何か今まで体験したことのない、制御不可能な動きのように感じられてしまいます。
例えば、ピラミッド構造の中で「指示」によって動くことが一般的な人たちにとっては、そう受け取られる場合があるでしょう。
また、協働のムーブメントによって新たな動きが次々生まれれば、その一つ一つがはらむ失敗のリスクについて、気にする人もいるでしょう。
指示命令で行う仕事の場合は、責任は指示者にありますが、協働の場合は責任のありかが必ずしも明確ではありません。
一定の価値観の人たちにとっては、協働は実にリスキーで、その動きを止めてしまおうというモチベーションが湧くのです。
▶無自覚だと足を取られる
携わっている協働がムーブメントを巻き起こし始めた時、その影響力に自覚を持つことが必要です。良い影響についても、また一部に与える「脅威」というネガティブな影響についても。
その影響力に無自覚だと、以下の章で述べる周りの動きが理解出来ず、足を取られてしまいます。
協働のムーブメントは、本当に大きな力で、強い影響力があるのだと知ることが大切です!
2、一部の「ネガティブな反応」について
協働のムーブメントが影響力を放つ時、一部の人たちからのネガティブな反応について説明します。
▶書籍からひも解く!反応の「基本テンプレート」
以下の書籍等をひも解けば、一部のネガティブな反応は、仕事が影響力を持った時にしばしば起こる「基本テンプレート」なのだと分かってきます。
リーダーシップに出会う瞬間 成人発達理論による自己成長のプロセス [ 有冬 典子 ]
→小説仕立てで、成人発達理論による自己成長のプロセスが学べる書籍。陥りがちないくつかのパターンと周囲との関係性が解説されています。苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」 [ 森岡 毅 ]
→有名なマーケターである著者の実体験から学べる書籍。アメリカ駐在時代には、とても多くの苦労があったようです。
たとえ周囲からのネガティブな反応に苦しんだとしても、それは往々にして起こりうること。あなただけではないから、大丈夫です。素晴らしいリーダーシップを発揮している方々も、通って来ている道なのです。
そう、飽くまで基本テンプレート!
もちろん改善・反省すべきところは見直しながらも、ネガティブな反応は想定の範囲内だと思っておくぐらいで丁度良いのです。
▶情報が届かない/嘘が伝えられる
ネガティブな反応の最も基本的なものは、必要な情報を与えないこと。つまり情報共有の拒否です。
必要な情報がないと、こちらも動きようがなくなります。
これは、能動的に攻撃したりすることなく、ただ情報を伝えないということによって、相手の動きを止めることができるので、一番簡単な方法です。
「〇〇の件は、今どうなっていますか?」などと質問して、必要な情報をこちらから一つ一つ取りに行かなければなりません。
ただしエスカレートすると、今度は嘘が伝えられるということも起こります。
例えば「企画案が否決された」と伝えられたり、「批判の声が上がっている」と伝えられたり、嘘や噂で、封じ込めようとする動きが発生します。
この場合、「〇〇さんが、こう言っていた」という伝達に不信感を抱いた時には、「そうなんですね。〇〇さんに詳細を確認してみます。」と伝えると良いと思います。定かでない情報を鵜のみにせず、本当か嘘か毎回確認するスタンスを示すことが大切です。
▶メンバーからの排除
もっともらしい理由付けによってメンバーから外されるということも、悔しいですが起きます。ミーティングに呼ばれない、重要な案件が勝手に進んでいる…、など。
なぜそんな風にされるのか分からず苦しみ、怒りや悲しみが湧くこともあるでしょう。
協働のムーブメントにネガティブな反応を示す人にとって、ムーブメントが起きないように、統制できるメンバーだけで固めたいとうのは、当然の欲求とも言えます。
▶仕事の無価値化
イキイキとした協働のムーブメントという成果自体が、無価値化されることもあります。
こういう場合、頑張って成果を出すほど、ますます逆効果となります。主体的な仕事は、求められていません。
そして、このような無価値化は、一部の人によって行われることで、日和見層に広がります。その結果、悲しい事に、四面楚歌になっていくこともあり得ます。
3、自分自身が大きく成長する時
それでは、周囲からのネガティブな反応に遭遇した時、どのように対処すれば良いのかを考えていきましょう。
▶自らの立ち位置を俯瞰する
まず何よりも、今、自分の周りで何が起きているのかを、俯瞰的に知ることが重要です。
ネガティブな反応を受け取ると、「自分が全て悪いのかな」「やってきたことは全部間違っていたのかな」という気持ちに追い込まれます。
でも、本当にそうでしょうか?
例えば、小学生が同級生を「キモイ」などと排斥する時、その子は本当にキモくて価値がありませんか?そんなことはないのです。
もしも、あなたの仕事が少し間違った方向に進んでいたとしたら、そのことについて、きちんと対話が行われるはずです。
上述したような理不尽なことが起きている時、問題は相手にあることが多いのです。
言われるがままに受け止めて、潰れてしまわないようにしたいものです。
▶自己の「弱さ」を受け止める
その上で、自己が強く揺さぶられる時というのは、自分自身を見つめ直す良いチャンスでもあります。
他者を変えることは出来ません。なので、自分自身と向き合うのです。
例えば相手に腹が立った時、あなたの何が脅かされたのでしょうか?
何も脅かされることがなければ、そんなに腹は立たないものです。
例えば、「やっぱり私は仕事ができないんだ。評価されないんだ。」と感じているのなら、その気持ちの源泉はどこから来ていますか?
きっと、今初めて抱く気持ちではないはずです。過去に原体験があるのではないでしょうか?
こんな風に、自身の中に隠れている「弱さ」を、覚悟を持って受け止めるのです。他者に対して無意識に発動してしまう自身の心の内側の動きを、自覚するのです。
このような内観は、その後の関係性を大きく変える起点となります。
▶「強み」と「想い」を掴み直す
覚悟をもって「弱さ」を見つめ直した後は、自身の「強み」と「想い」を掴み直します。
他者からのネガティブな反応によって、自身の強みを見失いかけていませんか?あなたの強みは何ですか?
逆境の中でも、抱き続けた想いはなんですか?
自身の「強み」を掴み直すと、それは再び進みだす時の大きな支えとなります。再び胸に抱いた「想い」は、あなたの仕事のビジョンとなります。
▶無理に「対話」を求めない
さて、協働では「対話」を大切に、関わる主体間の相乗効果を叶えるように働きかけることが大切でした。
しかし対話というのは、それを苦痛に感じる人もいるということを、知っておく必要があります。
対話とは、常に自分の頭で考えて言語化して伝えるという営みです。少なからず思考に負担がかかるので、しんどい人もいるのです。
その事を隠すために、攻撃的な態度を取る人もいるでしょう。
対話の無理強いは、強い嫌悪感に繋がることもあります。
対話を求めない相手に、無理に対話を求めることはしなくても良いのです。
▶相手は宇宙人。私も宇宙人。
必ずしも全員と、対話を通して分かり合える訳ではない…。
その限界を、腹を立てることなく静かに受け入れることは、逆説的かもしれませんが、協働の新たな1ページに繋がると思います。
そもそも、他者は皆「宇宙人」。多かれ少なかれ、分かり合えない部分があります。価値観も行動様式も異なります。
そしてまた、自分自身も一人の「宇宙人」。相手にとっては、理解しきれない存在なのです。
だから、分かり合えなくて当然。宇宙人と宇宙人なのだから!
そう思うと逆に、他者との間に理解や共感、相乗効果が生まれた時の喜びが、より一層感じられて嬉しくなりませんか?
▶現場の力学の観察を楽しむ
「協働」は、多くの可能性を秘めた素敵な在り方です。
その一方で、協働が唯一絶対の解、という訳ではありません。
他の力学で動く現場もあるのです。
協働とは違う力学で動く現場で、協働が行き詰ってしまった時は、少し立ち止まって観察してみるのも良い経験です。さまざまなベクトルのエネルギーが交差する様を見るのは、とても面白いものです。
そうすれば、広い視野を持って目の前の現象を捉えることができるようになります。
決して一つの現場に固執すべきという意味ではありません。
軽やかに、進みたい方向に踏み出せば良いのですが、もしも少し立ち往生している時には、観察を楽しむのも一手です。
4、未来への飛躍に!
以上、「協働」に苦しむ経験について、ネガティブな反応の基本テンプレートや、それを自身の成長に変えるための考え方について、まとめました。
悩みや葛藤は、今後の飛躍に必要な「自己の器」を大きく整えてくれる機会です。
丁寧に向き合い、乗り越えたいものです。
締めくくりとして、忘れないでほしいことをお伝えします。
味方は必ずいます。味方を見失わないでください。
有意義な対話を重ねられる相手もいます。外の環境で、新たな人たちとの出会いや交流を享受してください。
今が苦しくても、まっすぐに歩み続ければ、新しいチャンスが訪れます。訪れたチャンスは、勇気を出して掴んで下さい。
協働を通したさまざまな感情や経験が、未来への飛躍につながり、次の幸せな協働のムーブメントを生み出していきますように…!
この記事が、微力ながら、壁を乗り越える一助になれば幸いです。
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※このnoteでは、各地での協働の推進を目的に、協働や協働コーディネーターについての一般論や考察、個人での地域との関わりなどを発信しています。