医療福祉業界の質と量のジレンマ
医療福祉業界の中でよくある話として、質と量のジレンマがあります。
目の前の患者様や利用者様に対してしっかりと時間を使って関わっていきたい…
しかし、単位や時間の制限があって十分にケアを提供できないながらも、決められた単位をこなさなければならない…
という「質と量のジレンマ」です。
同じような悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。
先日、医療福祉業界で活躍する方から、このような質と量のジレンマとも言える内容について相談をいただきました。
このような悩みは、医療福祉業界で働く「やりがい」にも繋がる大切なものです。
医療福祉業界で働く中で、同じように悩んでいる方の少しでも力になれたらと思い、一つの考え方としてご紹介したいと思います。
同じように悩んでいる方、医療福祉業界に興味のある方はぜひ最後までご覧ください。
医療福祉業界は専門職の集団(質を問う)
医療福祉業界は専門職の集まりであり、大半の人が患者様や利用者様へのケアやサービスを提供して活躍することを志してその道(職業)を選んでいます。
そのため、経営的な視点や収益などに対して強い思いを持っている人はあまり多くありません。
資格取得の際に学ぶ専門課程のカリキュラムにも、事業運営や収益などについての学習が含まれているわけではないんです。
簡単に表現するのであれば、患者様や利用者様の権利や尊厳を大切にしながらどのように専門職として関わっていくのかを学び、これらのことを中心とした自分のキャリアを描いて専門職として働きはじめるんです。
そのため、現場で働く専門職としては目の前の患者様や利用者様の声や思いを聞きながら「自分には何ができるんだろう」という、より良い医療やケアについて日々悩んだり、切瑳琢磨して「質を高める努力」をしている人が大半なんです。
医療福祉業界も事業(量を確保する)
とはいえ、医療福祉業界も事業性を持たなければ存在することはできなくなってしまいます。
事業として成立しなければ法人や事業所自体が存在することもできなくなってしまい、結果的に患者様や利用者様に対して求められるケアやサービスを提供することができなくなってしまうんです。
医療や福祉を提供する法人や事業所、職員たちがいなくなってしまえば、医療やケアを必要とする人たちがより良い生活を送れない状態になってしまいます。
そのため、事業として存続していくためには収益が必要であり、事業を運営する上で必要な収益をあげるためには日々の医療・ケアなどのサービスについて数値化された目標が必要になるんです。
これが言い換えると「量の確保」という内容になります。
目的のための目標
病院でも介護保険事業所でも、それぞれに理念が存在します。
理念というのは言わば事業の目的となるところです。
とはいえ、医療福祉業界以外の業界にも言えることですが、理念は非常に抽象的な表現となっているものです。
特に医療福祉業界では「地域貢献」や「健やかな暮らしを支える」であったり「その人らしく」「必要とされる医療を…」「安心・安全」「信頼」などの言葉が並んでいることが大半です。
そこで重要となるのが「数字」です。
目的を達成するためには、何をどのようにどこまで行なっていくのかという目標となる数字、具体的な数値目標を定めることが大切なんです。
なぜ数値目標かというと、数値化することによって現在地と目指すべき目標の差がわかりやすくなるからです。
逆に数値化された目標でなければ、現在地や目指す先が曖昧になってしまい、今行なっていることが目指す場所に到達できるものなのかどうかもわからない状態になってしまいます。
この時、私たち医療福祉業界で使う一つの目標値の決め方に「単位」があり、達成するための人の配置や時間配分を決めています。
患者様や利用者様お一人お一人の尊厳を保持しながら、生活や人生をサポートしていくという目的のためには数値化された目標をクリアしていくことが必要なんです。
質と量のバランスが大切
二宮尊徳の有名な言葉にこんな言葉があります。
「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」
この言葉は、私たち医療福祉業界に通じる内容です。
医療福祉の業界でも事業所自体が存続できなければ、医療やケアを必要とする方々がサービスを受けられなくなってしまい、結果的により良い生活を送れなくなってしまいます。
そのため「事業」という認識は必要なことであり、事業を支えるためには数値目標を達成するためのサービスの量が必要になります。
しかし、事業が存続していくための数値管理というのは、中間管理職や事業管理者などが経過を把握しながら、達成に向けての舵取りを行っていることが大半です。
現場で活躍する専門職たちは、目の前の患者様や利用者様に対してどのようにすればより良い医療やケアが提供できるのかということを第一に考えているんです。
そのため、事業の視点を持って数値目標の管理や達成の責任を持つ中間管理職や管理者と、医療やケアなどのサービスの質に責任を持つ現場の専門職との間で意見の相違が出てくることがあります。
では、どちらが正しいかというところですが、その答えとしては両方が正しいものなんです。
両方があってはじめて事業が成立するものであり、両方が議論をしたり時にはぶつかり合って意見をし合うことが、ある意味正常な状態と言えます。
数字を管理し目標値を達成するための事業としての視点を持った量の管理、より良い医療・ケアやサービスを提供していこうとする質へのこだわり、その双方が合わさりながらバランスを取りつつも同じ方向性を持って進んでいくことが、より良い事業に繋がるんです。
患者様や利用者様に対してケアやサービスの質を確保できるように最善を尽くし試行錯誤することも必要、単位や時間などの事業としての収益を意識した行動も必要、その両方のバランスが大切ということです。
チームとして互いの役割を尊重しつつ方向性を合わせる
先ほどご紹介したように、目標数値への達成に関しての日々のマネジメントは、中間管理職や管理者が担うことが大半です。
現場で活躍する専門職達が「上司は数字のことばかり言ってくる…自分はそんな風に働きたいわけじゃない…」とやる気を削がれてしまうこともあります。
逆に中間管理職や管理者は「数値目標の達成に至ってないのはやり方が悪いからだ、何をしてるんだ」と感情的にストレスが強くなってしまうこともあります。
しかし、これには互いの立場の尊重と理解しあえるような歩み寄りが大切であり、チームとして同じ方向性を持つ努力が必要です。
事業が存在出来なくなってしまえば、目の前の大事にしている患者様や利用者様は途方にくれてしまい、大切にしてきたものを守れなくなるだけでなく、自分が志したキャリアも失いかねません。
逆に数値ばかりを追ってしまうと、本来の専門職として提供していかなければならないサービスの質を損ねてしまったり、専門職としての役割について純粋な気持ちで頑張る貴重な人財を失ってしまうことに繋がってしまいます。
少し話は脱線しますが…、人は堀、人は石垣…という言葉がありますが、人が全てと言っても過言ではない医療福祉業界で、人を失うことがどれほどの損失かを失ってから気づくようでは手遅れになります。
互いを尊重しながら歩み寄り、方向性を合わせていくことが大切なんです。
医療福祉業界に求められるものは何か(期待と責任)をチームで考える
私たち医療福祉業界で働いている人はどこから給料が出ているのか、なぜそのような仕組みになっているのか、医療福祉業界が世間から寄せられている期待は何か、自分たちが専門職として行わなければならないものは何か、自分が患者様や利用者様の立場であれば何を求めるのか…など
これらの様々なフィルターを通して、チームで考えた上で日々の実務に励むことが出来れば、医療福祉業界の「質と量のジレンマ」についても考え方や目の前の捉え方が変わっていきます。
簡単にジレンマがなくならないにしても、見方や考え方を変えることはできるんです。
誰かが何を言うからではなく自分自身が使命感と責任感を持って日々のサービスに繋げられるようになると、質と量のジレンマがあったとしても、自分自身の志しやモチベーションを保ちながらより良いサービスが提供できるるようになるのではないかと思います。
このプロセスを大切にして、目の前の患者様や利用者様、そしてそのご家族と真摯に向き合うことで、自ずと結果は数字となってくるはずです。
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