AIと心理的安全性:生成AIが組織風土をどう変えるか
少し前より、心理的安全性という言葉が注目されています。
心理的安全性とは、「サイコロジカル・セーフティ(psychological safety)」を日本語に訳した言葉で、 ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン教授が1999年に概念を提唱しました。
要は、組織や集団において、メンバーが自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態のことです。
通常、組織やチームにおいて、「こんなこと言ったら怒られるかも・・・」「KY(死後かも)って思われるかもしれない・・・」といった不安がある状態では、言いたいことや提案もできません。
一方で、Googleの「プロジェクト・アリストテレス」でも、心理的安全性が高いチームほど高いパフォーマンスを発揮することが明らかになりました。
社員一人ひとりが自分の意見を自由に言える環境は、イノベーションや業績向上に直結する、ということですね。
しかし、実際に心理的安全性を高めようとする企業が直面するのは、「どこから手をつけていいかわからない」「具体的な解決策が見えない」といった課題です。
そこで、注目したいのが生成AIの活用です。AIは職場文化の透明性と公平性を高め、心理的安全性の向上に寄与できる可能性を秘めています。
本稿は、心理的安全性を高める組織風土醸成に向け、生成AIをどのように活用できるのか、という点で考察したいと思います。
この記事を開いていただき、ありがとうございます。グローネクサス代表の小出です。元デロイトで14年、最終的にはディレクターで多くの大手企業を支援していました。
現在ではグローネクサス代表として、主に大手企業における人材戦略・人材マネジメント策定やワークスタイル変革、リスキリングのお手伝いしています。
心理的安全性の職場での重要性
改めてですが、心理的安全性とは、「職場で失敗や質問、異なる意見を自由に表明できる環境」のことを指します。
この概念は、特に以下のような課題を持つ企業で重要視されています。
コミュニケーション不足:発言の少ない会議や、社員の意見が共有されない状況
上下関係や無意識バイアス:日本特有の上下関係が原因で、意見を言いづらい雰囲気
課題の見えづらさ:心理的安全性が低下している職場の兆候が把握しにくい
では、これらの課題に生成AIがどのように役立つのでしょうか?
生成AIが心理的安全性を向上させる方法
1.フィードバックの質と量を向上
生成AIは、匿名のフィードバックをリアルタイムで収集・分析し、ポジティブな言い回しや具体的な提案を提示してくれます。
具体例
・社員アンケート結果をAIが即座に分析し、全体傾向をレポート化
・AIがポジティブな表現を提案し、建設的なフィードバックをサポート
上記はいずれもChat GPTでも実施可能です。会社データをインプットする場合は、必ず会社が提供しているセキュアなGPTを活用してくださいね。
また、エンゲージメントサーベイ結果をAIが分析してくれるツールも各社リリースされていたりします。
2.仮想メンターとしての生成AI
生成AIを使った「仮想メンター」や「相談役」は、特に部下が上司に直接相談しにくい場合のサポート役として有効です。
具体例:
生成AIを活用した24時間対応の「キャリア相談窓口」
社員が抱えるストレスや悩みをAIに相談し、適切なリソースを案内
バーチャルメンター、仮想コーチのようなツールも続々とリリースされています。なお、筆者はGPTの会話機能を使って「こういうフィードバックしようと思うけど、批判的に見てどう思う?」とか聞いて気づきを得ています。
3.エンゲージメント低下者の特定
TeamsやSlackの会話ログ内容を分析し、「社内のモチベーションを可視化」や、「ポジティブな影響を与えている人物の特定」、 「発言から個性抽出」を行う事もできます。
会話ログを引っこ抜いてChatGPTに食わせることもできなくはないですが、データ量的にはかなり難しいので、専用ツールを使うのがよいかと思います。
4.1on1ミーティング・評価面談のロールプレイ
リーダー育成・マネジャー育成の一環で、AIと1on1のロールプレイ、およびその内容の評価やフィードバックをもらうという使い方も有用です。
これはChatGPTでも可能で、「Advanced Voice Mode」を使えば本物の人間と話しているかのように会話可能です。
ChatGPTに「これから部下との1on1のロールプレイをしたい」「あなたはこういう人物を演じてほしい」「こういう場面を想定している」「最後に、私のコーチングについてスコアリングとフィードバックを欲しい」といえば、その通り実施してくれます。
生成AIの限界を知る
生成AIは多くの可能性を秘めていますが、課題も存在します。
セキュアな環境の生成AIを使いましょう
プライベートに登録しているChatGPTに社内情報を入力すると、外に出て行ってしまいます。必ず会社指定のものを使いましょう。AIの感情理解の限界
AIは文脈や感情の機微を完全には理解できません。AIは会話内容から次に発言・出力すべき言語を確率的にはじき出しているだけです。ゆえに前提や背景のインプットが重要です。AI依存のリスク?
AIに頼りすぎて人間関係構築がおろそかになる可能性があるかも、しれない(けど不可逆的かもしれませんね)
色々なところでいわれていますが、やはりAIを「サポートツール」として活用し、人間の役割を補完する位置づけである、という認識が重要ですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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