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詩とも言えない即興詩

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練習用なので悪しからず。創作メモとしてネタを詩の形式で積むこともあるかもしれない
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金木犀の香り

金木犀の香り

 彼岸が過ぎて、めっきり冷え込むようになった今日この頃。異常気象で暑さに参ってしまうような日が続いていたのに、彼岸を過ぎればやっぱり寒くはなるらしい。自然はすごいと言うべきか、こんな気候はおかしいと言うべきか。

 いつもの路地を辿っていると、ふと甘い匂いが鼻腔をくすぐった。砂糖の甘さとも、果実の甘さとも違う、どこか不思議な甘さ。
 確かこの辺に、あれがあったはず……。

 やっぱり。
 金木犀の

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重い頬

頬が重たいことに気がついた

鏡を見れば、唇を巻き込んで、へたりと頬が落ちている

身の回りに不幸を振りまいていそうな、縁起の悪い顔

それで物事が上手く回らなかったのか

そういえば最近は、舌も上手く回らなかった

頬に手を当て、ぐにりと持ち上げる

持ち上げたまま口をもぞもぞ

手を離して、思いっきり、ニーーーッ

鏡の中の顔は笑顔

心はフラット

これでいい

これで「楽しい」も歩み寄って

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燃え尽きる灯火

その男はひたすらに書いていた

書いて

描いて

欠いて

ヒトを考えて

意識を考えて

愛を考えて

炭の欠片で、文字を残していく

とうとうそのまま逝ってしまった

なんと幸せな人生だろうか!

幸、不幸

 不幸になる人間は勝手に不幸になる

 何もない日常にささくれを見つけ出し

 心が折れそうな苦境で自ら道を閉ざす

 そうしていつの間にか、なにも見えなくなっている

 幸せになる人は勝手に幸せになる

 何でもない日常から幸せを見つけ出し

 心が折れそうな苦境から活路を見出す

 そうしていつの間にか、望むほとんどを手に入れている

 幸せな人が不幸せになるのは人が原因である

 不幸せな人

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空気の匂い

久しぶりに外を歩く。

冷めかけた鉄のような、青とも赤とも、紫ともつかない不思議な色の空

肺いっぱいに、空気を吸い込む

濡れた空気の匂い

誰も居ない山が恋しくなった

久しぶりに外を歩いている

頭の上から落ちてくる、クリーム色の街灯の光

肺いっぱいに空気を吸い込む

近所の家から漂う、醤油の焦げる匂い

なんとなく、おばあちゃんに会いたくなった

久しぶりに外を歩いていた

部屋の中を照

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感情の迷子

オレ自身の言葉が見付からないのである

もやもやとした何かが、心の奥で膨らんでいく

それをただ眺めている

名前を付ければふさわしい名前があるだろうに

それに触れることができないのである

それを確かめることができないのである

おのれの心を見ることができないのである

心がなにも反応しないように思えてしまう

視界に収めれば

手を触れれば

形を取らない言葉があるはずなのに

感じたことを

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己の美学と隣の美学

大抵の人間には、意識しなくても美学がある

美しいと思うモノがある

素晴らしいと思うモノがある

己の中で輝く美を、この世界に落とし込もうと思うのである

己の理想を目の前に作り出して、この目で見てみたく思うのである

隣にいるあの人にも、美学がある

美しいと思うモノがある

素晴らしいと思うモノがある

あの人から見ると、このおれの中の美は、河原のクズ石となり果てる

人とはわかり合えないも

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