まいにち易経_1201【時を超えし神の武徳】神はもって来を知り、知はもって往を蔵む。それたれかよくこれに与らんや。古の聡明叡知、神武にして殺さざる者か。[繋辞上伝:第十一章]
是故蓍之德。圓而神。卦之德。方以知。六爻之義。易以貢。聖人以此洗心。退藏於密。吉凶與民同患。神以知來。知以藏往。其孰能與於此哉。古之聰明睿知。神武而不殺者乎。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
今日取り上げるのは、『神武(しんぶ)』についてです。「神武」とは、文字通り「神のごとき武勇」を意味します。しかし、この武勇という言葉、単に戦いの強さや腕力を指しているわけではありません。むしろ、私たちが本当に目指すべき「武勇」とは何かを深く考えさせてくれる言葉です。
過去・現在・未来を見通す叡知
『神武』は、「霊妙な徳をもって未来を知り、過ぎ去った過去を心に留め、現在を掌握する叡知」を持つことができると説いています。過去を振り返り、その経験から学び、現在を正しく理解しながら未来を見通す力。この三つをバランスよく持つことが、真のリーダーに求められる資質だということです。
例えば、歴史上の偉大なリーダーたちを思い出してみてください。彼らは過去の教訓をしっかりと学び、自分自身の経験も踏まえた上で、今、何が最も重要かを判断し、未来を見据えた決断を下してきました。簡単に言うと、過去にとらわれず、現在の状況を冷静に見極めつつ、未来に向かって確実に一歩を踏み出す。そのためには、深い洞察力と柔軟な思考が必要です。
人を威圧せず、心服させる力
『神武』はまた、刑罰や威嚇によらずに人を心から納得させ、従わせる力を持つことが重要だと述べています。これを「武徳」と言います。つまり、リーダーとしての力強さや決断力は、相手を威圧することで発揮されるものではなく、その徳の高さによって自然と人々がついてくるようになることが理想だということです。
現代のリーダーシップにおいても、この考え方は非常に重要です。リーダーが部下や仲間を力でねじ伏せようとすれば、短期的にはうまくいくかもしれませんが、長期的には信頼を失うことになります。本当に強いリーダーは、自分の考えをしっかりと持ちながらも、他者を尊重し、対話を重ね、共感を引き出す力を持っています。その結果、周りの人々が自主的にリーダーを支え、協力してくれるのです。
「神武天皇」のエピソードから学ぶ
『神武』という言葉は、日本最初の天皇である「神武天皇」にも由来しています。神武天皇は、古代日本の建国者であり、その名が示すように、神のごとき武勇を持った人物とされています。ですが、彼の真の強さは、武力だけではなく、その精神的な徳にありました。
あるエピソードがあります。神武天皇が戦を進める中で、敵に対して無駄な殺戮を避け、和を持って国を治めようと努めたという話です。彼は、戦いにおいても冷静な判断力を持ち、力で相手をねじ伏せるのではなく、説得と信頼をもって治めることを選びました。これが「神武」の本質であり、リーダーシップにおける理想像でもあります。
現代における「神武」の実践
皆さんがこれからリーダーとして成長していく中で、『神武』の教えは非常に役立つと思います。現代のビジネスや社会の中では、過去のデータや経験に基づいて未来を予測し、適切なタイミングで決断を下す能力が求められます。さらに、その決断が他者に納得され、支持されるためには、自分の意見を押し通すのではなく、共感を引き出し、協力を得ることが大切です。
例えば、皆さんが将来チームを率いることになったとき、メンバー一人ひとりの意見をしっかりと聞き、彼らの考えや感情を尊重することで、自然とチーム全体が一丸となって動き出す瞬間が訪れるでしょう。それが『神武』の「武徳」に通じる部分であり、現代においてもリーダーシップにおける重要なポイントです。
最後に、リーダーシップの本質とは、自分一人の力で全てを成し遂げることではありません。周りの人々と協力し、共に成長していくことで、より大きな成果を生み出すことができるのです。そのために、過去から学び、現在を正しく理解し、未来に向けて確実な一歩を踏み出す。このバランス感覚を忘れずに、日々の努力を積み重ねていってほしいと思います。
参考出典
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