まいにち易経_0108【一陰一陽】これを道と謂う。[繋辞上伝:第五章]
一陰一陽之謂道。繼之者善也、成之者性也。
朱子の『本義』や宋の張載の『易説』で述べられている陰陽や気についての思想は、中国の哲学史において非常に重要な概念。ここでは、その思想をわかりやすく説明する。
まず、朱子が言っている「陰陽かたみに運るは気なり。其の理はいわゆる道なり」というのは、陰と陽という二つのエネルギー(気)が交互に動くことで、世界が成り立っているという考え方を示している。そして、その背後にある法則が「道」と呼ばれるものだと説明している。
一方で、宋の張載は「一陰一陽これ道なり」と述べている。これは、陰と陽が交互に現れることこそが「道」であると簡潔に示している。この言葉は、陰と陽が互いに補い合い、交互に現れることで、世界の秩序が保たれているという考え方を強調している。
朱子と張載の考え方の違いは、哲学史上で重要な分岐点となる。
張載は「気」という一つのエネルギーが陰陽という二つの側面を持っていると考える「気一元論」を主張した。
一方、朱子は「理」と「気」という二つの異なる原理が世界を成り立たせているとする「理気説」を展開した。
次に、「一陰一陽」という言葉の意味を説明する。
陰が存在すれば必ずそれに対応する陽があり、陽があれば必ず陰がある。このように、陰と陽は互いに補完し合い、一方が存在することで他方も存在するという関係にある。そして、陰と陽は交互に現れ、循環している。例えば、夜(陰)が終われば昼(陽)が始まり、昼が終わればまた夜が来るというように、陰陽のサイクルが続く。
清の時代の王夫之によると、この陰陽の交替こそが天の「道」であり、さらにそれが『易経』の基本的な考え方でもある。そして、この「道」を受け継ぐものこそが「善」であるという。ここで言う「継ぐ」という言葉には、父から子へと体や志を受け継ぐような深い意味が込められている。天の道をそのまま受け継いだものが、人間の「善」であり、それが人間の本質である「性」によって具体化される。
この性とは、人が天から生まれつき持っているものであり、これによって人間の本性は絶対的に「善」であるとされる。
儒教の教えは、孟子を中心に「性善説」を唱えており、これは人間の本性が善であるという考え方だ。繋辞におけるこの考え方は、孟子の性善説よりもさらに深い形而上学的な性善の主張であるといえる。
ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る
易経では、陰陽の相互作用を「道」と呼びます。道とは、単に道筋を指すだけでなく、宇宙や人生の根本原理、つまりすべてのものが生まれ、成長し、変化していく源を指します。考えてみてください。四季が移り変わることで自然界にはどれだけ多くの変化が生じるでしょうか。春が来れば花が咲き、夏には果実が実り、秋には収穫があり、冬には休息の時が訪れます。この一連のサイクルは、私たち人間の生活や仕事にも当てはまるのです。
さて、皆さんが今、人生の中でどのようなフェーズにいるか考えてみてください。学生時代は「陰」の時期だったかもしれません。多くのことを学び、吸収し、未来への準備を整える時期です。そして、今、社会に出て自分の力を試す時期、これは「陽」にあたります。皆さんは、これまでに培った知識や経験を活かして、社会に貢献し、新しい価値を生み出していく役割を担っています。
しかし、ここで覚えておいてほしいのは、陰と陽は対立するだけではないということです。夜が来るからこそ、朝の光が一層輝くように、陰の時期があってこそ、陽の時期の成功がより意味を持ちます。失敗も同じです。失敗があるからこそ、成功の喜びが大きくなるのです。私も経営者として、数えきれないほどの困難や失敗を経験してきました。しかし、それがあったからこそ、成功の時期にはその喜びをより深く味わうことができたのです。
また、陰と陽のバランスを保つことが、リーダーとして非常に重要です。リーダーシップには、時に強い決断力が求められますが、それだけではなく、休息や内省の時間も同じくらい大切です。ずっと前進し続けることはできません。時には立ち止まり、自分を見つめ直すことが、次の大きな一歩につながるのです。
例えば、夜の間に休息を取ることを考えてみましょう。これも「陰」の一例です。休むことによって、心身のバランスが整い、翌朝には新たな力が湧いてくるでしょう。これが「陽」の一部です。このようにして、陰と陽が互いに補完し合い、人生を豊かにしてくれるのです。
また、易経が教えてくれるのは、変化の中にこそ成長の機会があるということです。季節が変わるように、私たちの人生やキャリアも常に変化しています。その変化を恐れず、受け入れることが重要です。リーダーとして、変化を予測し、適応する力を持つことは、非常に大切なスキルです。変化の波に乗ることで、新たなチャンスが見えてくるでしょう。
ここで、私が経営者時代に経験したエピソードをお話ししましょう。ある時、私の会社は重大な経営危機に直面しました。その時、全てが崩壊してしまうのではないかと恐れましたが、ふと「易経」の教えを思い出しました。陰が極まれば、必ず陽が訪れるということです。その教えを信じて、冷静に対処し、困難を乗り越えるための新たな戦略を立てました。結果的に、その危機が会社を再び成長させるためのきっかけとなり、以前よりも強い企業として生まれ変わることができたのです。
皆さんも、これからのリーダーとして多くの挑戦に直面するでしょう。その時に大切なのは、目の前の困難に焦らず、陰陽のバランスを保ちながら、冷静に状況を見極めることです。そして、変化を受け入れ、成長のチャンスとして捉えることが、成功への鍵となるでしょう。
最後に、易経の言葉を皆さんに贈りたいと思います。「一陰一陽これを道と謂う」。陰と陽が交わり、変化し続けることこそが、私たちの進むべき道です。その道を恐れず、しっかりと歩んでいってほしいと願っています。今日の話が、皆さんのこれからの人生に少しでも役立つことを願っております。
参考出典
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