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まいにち易経_1125【継続する力、大成への道:大業と盛徳】富有これを大業と謂い、日新これを盛徳と謂う。[繋辞上伝:第五章]

富有之謂大業。日新之謂盛德。

富有をこれ大業と謂う。日新をこれ盛徳と謂う。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

「大業」とは何か

まず、「大業」という言葉について考えてみましょう。『易経』では、「大業」は豊かに万物を有し、それを保つことだと言われています。これは、一見するととてもシンプルに聞こえるかもしれませんが、その背後には深い意味が隠されています。
皆さんがこれからリーダーとして歩んでいく道には、多くの責任が伴います。事業を立ち上げる、組織を率いる、コミュニティを育てる……これらはすべて「大業」と言えるでしょう。大業とは、ただ成功するだけではなく、その成功を維持し、さらに発展させていくことも含まれます。
古代中国には「かなえ」という器がありました。この鼎は、王が神に供え物をするための神聖な器であり、同時に王の権力の象徴でもありました。鼎を保ち続けることは、その国の繁栄を意味しました。同様に、皆さんがリーダーとして成し遂げる大業も、ただ一時的な成功に終わらせるのではなく、長期的に維持し、発展させることが求められるでしょう。

「盛徳」とは何か

『易経』では、「盛徳」とはその働きを日々新たにしていくことだと言われています。つまり、リーダーとしての徳、品格、知識を日々磨いていくことが盛徳だというわけです。皆さんも、きっと何かしらの目標を持って、日々努力を続けていることでしょう。しかし、ここで大切なのは、昨日と同じことを繰り返すのではなく、常に新しいことに挑戦し、自分を更新し続けることです。
例えば、スポーツ選手を思い浮かべてください。トップアスリートたちは、常に自分の限界を超えるためにトレーニングを重ねています。そして、彼らは過去の成功に安住することなく、新しい技術を学び、体力を鍛え、戦術を磨き続けます。リーダーとしての「盛徳」もこれに似ています。日々の学びと成長を怠らず、自分の知識と人間性を磨き続けることが、真のリーダーシップを育むのです。

大業と盛徳のバランス

ここで一つ、皆さんに考えてほしいことがあります。それは、「大業」と「盛徳」のバランスです。大業を追い求めるあまり、盛徳をおろそかにしてしまうと、どんなに成功しても、その成功は長続きしません。また、盛徳ばかりを重んじて大業をないがしろにしてしまうと、理想や夢を現実のものにすることは難しいでしょう。このバランスを上手に取ることが、リーダーとしての大きな挑戦の一つです。これはまるで、一本の針の上に立っているようなものです。片方に傾きすぎれば、すぐにバランスを崩してしまいます。しかし、そのバランスが取れたとき、皆さんのリーダーシップは強固なものとなり、多くの人々に影響を与えることができるでしょう。

孔子と「易経」

さて、ここで少し『易経』にまつわる豆知識を紹介しましょう。皆さん、孔子という名前を聞いたことがあるでしょう。孔子は中国の古代の哲学者であり、儒教の祖として知られています。実は、孔子もまた『易経』に深い関心を持っていました。
孔子は晩年、これまで積み上げてきたすべての知識と経験を振り返り、『易経』を深く研究しました。彼は「五十にして易を学べば、大過なし」という言葉を残しています。これは、50歳になって『易経』を学び始めれば、大きな過ちを犯すことはない、という意味です。この言葉からもわかるように、『易経』の教えは、人生のあらゆる局面で役立つものだということです。

今日お話しした「大業」と「盛徳」の概念は、これからリーダーとして歩んでいく皆さんにとって、大切な指針となることでしょう。大業を追い求めること、そして日々自分を磨き続けること、この二つの柱を持って、これからの人生を歩んでほしいと思います。


参考出典

大業と盛徳
豊かに万物を有し保つことを大業といい、その働きを日々新たにしていくことを盛徳という。
大業とは、事業を大きく発展させていくことにも喩えられる。また、盛徳とは、日々学問を積み重ねることによって世の中に通じていくことと考えてもいいだろう。

易経一日一言/竹村亞希子

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