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自由詩

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2020年1月の記事一覧

地図

針葉樹をかたどった
つめたい白亜の像が
いちれつに立ち並び
とおく
北の氷床へ向かってつづいている。
私を
目覚めてすぐの私を
混沌とした意識のまま
北へ北へと誘い出そうとする。

かつて
私は地図を描くしごとをしていた。
日にひとつ廃道が生まれる
それを私のまなざしのもとにかき加えるのだ
廃道をより合せるとき
地図にはじめて姿があたえられた。

きっと
この針葉樹の列も
いつかの廃道だろう
木々

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彼について

 彼は左手に黄色の花束を持っている。彼がそのことについて考えるとき、彼は彼でなくなる。しかし次の瞬間、彼であったものは過去、彼であったことを思い出し、そのひとときに限り、彼であったものは彼を取り戻すことができる。彼が彼を取り戻したとき、彼の感覚は即座に左手の感触へと注がれる。その先には黄色の花束がある。思考が明滅する。中断はありえない。
 彼がその思考を彼自身へ差し向けるまで、そう長くはかからない

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北の岬に浮かぶ八面体の中に
ゆうべの空が映し出されている。
夕焼けを行く八つの影が
鳥のかたちをして飛んでいる。

船着き場に係留されている
昨日まで見た夢の数々。
夜になると
ひとつ、またひとつとひとりでに
沖へ向かって漕ぎ出すだろう。

雲が地表に落とす影が
岬から見える
つむじ風の丘を越えてゆく。
ここでできるのは
何かを見送ることだけだ。

もうじき
冬の回廊をとおって
灰色霧がやってくる

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鉄塔

町を見下ろす二十三の鉄塔、を濡らす灰色の雨が四日つづいたさいごの晩、私たちはちらつく街灯の、橙色の光のなかで、なにとも分からない石塔の半分に祈りをささげていた。町中に散らばる枯れた道標を回収すること、そしてその苔生した文字を解読すること。それが私たちに与えられた唯一の仕事だった。その日の私たちも、カッパの中に紫色の疲れを隠しながら無心でそれらを回収しては、意味ありげに並べ替えたり不思議そうに眺めた

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