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【読書ノート】『せとのママの誕生日』(『父と私の桜尾通り商店街』より)

『せとのママの誕生日』(『父と私の桜尾通り商店街』より)
今村夏子著


「せと」というスナックのママの誕生日を祝うため、三人の元従業員の女性たちが集まり、眠っているママをいじくりながら、スナック時代の思い出を語り合う、というお話。

今村夏子ワールド全開の訳のわからない物語なので、キーワードを挙げてみる。

①「せと」
1. 存在の本質:「せと」は、存在の本質や根源を指す。
2. 宇宙の統一性:「せと」は、宇宙の統一性やつながりを示す。この意味では、「せと」は宇宙の統一性やつながりを象徴する言葉として使われる。


②「誕生日」
1. 新たな始まり:誕生日は、個人の新たな始まりを象徴する。人間は時間の流れの中で生まれ、成長し、変化していく。誕生日は、個人の新たな年齢を迎えることによって、新たなチャプターや周期の始まりを意味する。

2. 経過の意識:時間の流れや有限性を意識し、自己の存在をより深く考察するきっかけとなるものとされる。

3. 自己の反省と再評価:誕生日は、自己の反省や再評価を促す。

③「冷蔵庫」
1. 豊かさと充足感:豊かさと充足感を象徴する。

2.消費社会と過剰消費の象徴:物質的な欲求や消費の文化を象徴する。

④「乳首」
1. 生命と生命の源:乳首は母乳を分泌するための器官であり、生命の源を象徴する。乳首は生命の力と生命のつながりを象徴する

2. 母性と愛情:愛と絆の象徴として、人間の関係や社会の基盤を示す。

⑤出臍(でべそ)
1. 個体の起源とつながり:出臍は、胎児が母体とのつながりを持つための経路であり、個体の起源を象徴する。

2. 生命のサイクルと変化:出臍は、個体の成長と変化の象徴でもある。生命のサイクルの一部としての変化と成長を示す。

3. 一体性と統一:分離や個別性の幻想に対する挑戦や、全体性や統一性の探求を象徴する。

キーワードから見えてくること。
スナックせとは、働いていた女性たちにとって、自分のアイデンティティを見出すベースであり、そのアイデンティティを喪失した場所でもあった。せとのママは、従業員の女性たちのアイデンティティを搾取して、捨ててきた。

元従業員の女性たちは、それぞれ、長い時間をかけて、自分のアイデンティティを探してきて、そして、アイデンティティだと思わされていたことは、フェイクであることに気づく。

物語の主題は何か?
自分のアイデンティティというのは、自分で見つけていくことなのだと理解した。

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