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カレーが僕の生活を豊かにしてくれる
スパイスカレーブームが始まって久しいが、ご多分に漏れず私もそのブームに乗っかったひとりである。
大学生の頃に「市販のカレールーを使わないでスパイスから作ってみたい」という願望はあったものの、当時は情報も少ないしスパイスをどこで買ってよいのやらで、挑戦しないままでいた。
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そこへスパイスカレーブームがやってきたのである。ブームは既存のスタイルを破壊する側面もあるが、玉石混交の情報が溢れるくらいに出てくるので右も左も分からない私にとって良いものであった。
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写真データを振り返ると私は2019年にはスパイスカレーの食べ歩きを初めていたようで、どのお店が美味しいかといった情報を入手しては京都の色々なお店を食べ歩くことを楽しんだ。
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何といっても自分の知らない、味わったことも無いような料理がそこにはあって元々カレー好きだった私にとってはとても魅力的な世界であった。
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パクチーやカスリメティの香りも、何だかよくわからないスパイスの風味も新鮮で一口味わう毎に未知の世界が切り開かれるようであった。
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それと同時に多くのカレー店が開店し、当時は間借り営業だったようなカレー店も現在では独立しているところが多い。
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食べ歩きを初めて1年くらい経った頃だろうか、書店で1冊のレシピ本と出会うこととなる。稲田俊輔『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』(秋田書店2020)である。この本によってカレーを市販のルーを使わずにスパイスから作る世界へと飛び込むこととなった。
「ニンニク、ショウガもチューブでオッケー。みじんぎりも何となくでオッケー。トマトも缶詰使おうよ。でも計量だけは守ってね。」というなんとも取っ付きにくそうなカレーのイメージ(?)を一新させることが出来る本である。カレーは玉ねぎを飴色になるまで1時間くらい炒め続けなければいけないとか、◯◯時間煮込みました、とか色々手間暇かけないと美味しいものが作れないと思っていた私からしたらまさに目からウロコ。この本を1冊買って好きな順番に片っ端から作ってみるだけで大枠が掴める。
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特に好きなのはチェティナード風塩チキンカレーとチキンラッサムの組み合わせ。付け合せもカチュンバルや大根ウールガイが好み。バスマティライスの香りも最初は違和感があったが、今では美味しい香りとなった。
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また、稲田氏をレシピ本で知り、カレーを自作するうちに私は氏のファンとなり、いつの間にか大阪に出店していたエリックサウスを訪れてみて、プロの味を確かめてみたり
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セブンイレブンとコラボレーション商品が発売されたら購入してみたりと、ミーハーな楽しみ方も心得ている。
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エリックサウスのテーブルにある大根のウールガイが美味しかったので自作するなどの収穫もある。
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最後に、私の好きなものを紹介しよう。ヨーグルトに塩+クミンパウダー+チリペッパーパウダーを入れたものをライスにかけて食べるというものである。はっきり言ってカレーを自作するようになる前の自分であれば「気持ち悪い」と思う組み合わせなのだが、案外イケるのである。
このように自分の凝り固まった観念をブチ破ってくれるカレーは僕の生活を豊かにしたのである。食✕知的好奇心。