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【本の要約】『会社の老化は止められない』

ロッシーです。

『会社の老化は止められない』(著者:細谷功)という本を読みました。

いや~めちゃくちゃ面白かったです。


私は、この世の中の神羅万象は、すべて自然の法則に則っていると考えています。


それは、ありとあらゆる物事に共通であり、会社もその例外ではありません。

それを、分かりやすく言語化しているのがこの本です。

「あ~あるある、ウチの会社も同じだ!」と思う場面が多くて面白かったです。

きっちりとした要約ではありません。あくまでも備忘録的に、自分が重要だと思ったところをまとめたものです。

ぜひ、興味がある方は実際に本を読んでみてください。おすすめです。

①会社は老化する

会社は生まれた瞬間から老化が始まる。そして、その変化は一方通行で後戻りができない。

なぜか? それはエントロピー増大の法則により、「複雑化」「乱雑化」「平均化」という不可逆的なプロセスが起こるため。

「人間の心理」の不可逆性もそれに拍車をかける。それは、「変化に対する抵抗」「習慣への固執」「現状維持」「縄張り意識」などの性質をもつ。

「成長」と「老化」は同じ。老化プロセスは、成長プロセスからつながるプロセス。つまり、成長の延長線上に老化がある。

②老化した会社は思考停止現象が頻発する

思考停止とは、「上位概念で考えられなくなり、下位概念しか捉えられなくなること」を意味する。

上位概念とは、抽象、全体、目的、客観で、下位概念とは、具体、部分、手段、主観を意味する。

下位概念は、見えやすいために、頭を使って考える必要がない。考えなくてよいのは楽なので、自然に多くの人間が思考停止に陥る。

思考停止現象により、「手段の目的化」「ルーチンワークの増加」「非効率な定例会議の増加」などが起こる。これらも不可逆的なプロセスであり、この流れはさらに加速していく。

③老化は止められない

部門の細分化は止められない。例えば、管理部門は、当初はなんでもこなしていたのが「人事」「経理」「総務」へと分かれる。そして、人事は「採用」「研修」「給与」とさらに細分化が進む。ありとあらゆる部門が同様に細分化していく。

会議の肥大化は止められない。コミュニケーションコストの指数関数的な増加が起こり、それ自体では付加価値を生み出さない報告、連絡系の会議が増えていく。

階層の細分化は止められない。係長、課長、部長、本部長…という風に階層は増えていく。時に「フラット化」する動きがあっても、「のこぎり曲線」をたどり、やがてまた増え始め、結局は増加傾向となる。

「体脂肪」の増加は止められない。給与水準、〇〇手当、待遇、福利厚生、必要経費、オフィスの拡大、内容やオフィス什器、などはいったん上げた水準を下げることができない。人は、不必要なものであっても、既得権として一度手に入れたものをそう簡単には手放さない。

過剰品質化の流れは止められない。いったん高品質を達成すると、あえて技術レベルを落として手間を省くようなことはできなくなる。また、一度できたプロセスや品質のチェックリストは増える一方で減らない。これらは作業負荷を増やす方向へ向かうが、あるレベルを超えると、必ずしも時間とコストをかけても品質が向上するとは限らない。

性善説から性悪説の流れは止められない。会社規模の拡大により知らない人が増えるため、性悪説になっていく。トラブル対応などにより一度規則やルールができると廃止されることはなく、増加していく一方となる。また、性悪説化により加点主義から減点主義になり、「少数の優秀な尖った社員」から、「大多数の普通の社員と少数の優秀でない社員」という「標準的分布」へ近づいていく。

④心理面でも老化していく

ブランド力を高めると社員の依存心が増す。ブランドが確立した後に、その会社に集まってくるのは、「ブランドに惹かれた人材」であり、それは依存心の強い社員の増加につながる。

組織化すると付加価値が失われる。組織化されると、標準化や系統だった仕事のやり方が進む。誰がやっても大きな違いがなくなると、横並び意識が助長され、簡単に他者と比較ができることへ目が行くようになる。「予算の多寡」「部下の数」「机の並びや大きさ」「出張手当の多寡」などにより自分のアイデンティティを維持するようになる。

評価指標の多様化により人材が凡庸化する。多様な人材を活かすためには、評価指標も多様化させる必要がある。しかし、減点主義を前提とするため、多面的に無難な人が生き残ることになる。さらに悪いことに、「A級の人はA級の人と一緒に仕事をしたがる。B級の人はC級の人を採用しようとする。」ことから、人材の凡庸化は、劣化へと進んでいく。

外注化により空洞化する。会社の中の様々な業務は、次第に標準化されていき「付加価値の低い仕事」になる。そして、それらは関連会社やサプライヤーへの外注化が進み、「口は出すが手足は動かさない」ようになり空洞化がすすむ。これは、「人間の老化過程」と同じである。もちろん、外注化で浮いた時間を付加価値の高い仕事に振り分けられればよいが、実際は「外注管理」という単なる手配師になってしまう。実際には外注先のほうが何倍も仕事のことを知っているのにもかかわらず、外注先からは一応の敬意を払われるので、勘違い社員になってしまう危険性がある。

成熟すればみんな同じになる。川の石は、源流となる上流では尖っているが、下流に行くにしたがいどんどん丸くなっていく。丸い石が尖るようになることはない。人材についても同様であり、尖った人材や社風が、丸くなっていく。成熟した大企業では、どこも似たり寄ったりで特徴がなくなり、個性は消滅する。これは、意思決定についても同じで、尖ったアイデアや計画も、多数の人間による合議や承認により「骨抜き」にされ、最終的な意思決定では丸い(凡庸)なものになってしまう。

⑤M&Aは老化に拍車をかける

M&Aを成長戦略に用いる企業は多い。しかし、混ぜることで価値は下がる。「混ぜる」という行為は不可逆的なプロセスである。混ぜて一体化することで、エントロピーは増大し、全体としての「劣化」は進行する。

一杯500円のワインと一杯500円のビールを混ぜても、1000円以上の価値があるアルコール飲料にはならない。

M&Aにより2つの組織を混ぜることで、平均化され、個性が失われてその価値が二束三文になってしまう。老いた組織と若い組織を統合した場合、混ぜることによる劣化の度合いは、「若い組織」のほうが大きくなる。

⑥会社の老化はイノベーターを殺す

会社には、イノベーション型人材(イノベーター)とオペレーション型人材(アンチイノベーター)がいる。

イノベーターは、創造的かつ非定型的な仕事を得意とし、最大の興味は「いままで誰もやっていないこと」である。

アンチイノベーターは、「他人が決めた仕事を着実にこなす」タイプで、大部分の従業員はこれに該当する。

成長期を過ぎると、オペレーション型人材が増えすぎることが会社の老化につながる。こうした人材の価値観は、イノベーターの価値観と真っ向から対立するため、イノベーターは活躍の場がなくなり閉塞感を覚えるようになる。

イノベーターは、世の中の役に立つこと、自分の好きなこと、面白いことを「やりたい」という内発的なものだが、アンチイノベーターは、ノルマの達成、社内での評価(昇進)、金銭的報酬といった外発的なものなので、重要なのは「金と数字」になる。

「金と数字」を重視することは「社内政治家」を増殖させる。社内政治家は、理念がなく、政局(社内派閥や人事)に応じて態度を変える。したがって仕事の中身よりも政局に意識がいき、何をするかよりも「誰と組むか」を重要視する。

「創造する人は少ない。創造できない人は山ほどいる。それゆえ、後者が強いのである。」by ココ・シャネル

⑦会社は老化と世代交代を前提としていない

人間においては、死ぬことが前提だが、会社は基本的に死なない前提で考えられている。そして、いつまでたっても「成長する」ことが求められている。

「親会社と子会社の関係性」にそれは典型的に現れる。日本の大会社における子会社は、「いずれ一人で巣立っていくための過渡期」という人間の子供のような位置づけとは異なり、「永久に自分の支配下にあり、金を稼ぎ始めたら仕送りをさせる」という認識が圧倒的に強い。つまり、世代交代が前提とされてはいない。

会社の老化そのものが悪いわけではない。老化を前提としない営みを続けようとするから弊害をもたらす。それは、未来を開こうとする若い世代を自分達の価値観でしばり、いつまでも支配下に置こうとする老人と同じ。世界を変えるのは、「未熟」と「非常識」である。

常識という資産は負債化する。パラダイムシフトにより、ある局面ではプラスの意味をもっていたものが、別の局面にはいったとたんにマイナスの意味を持ち始める。

⑧世代交代は最高の強制リセット

単に経営者が若返ったとか、社員の平均年齢が下がったとか、それだけでは「会社の世代交代」にはならない。世代交代とは、老化をリセットし、基本的な価値観を変えることを意味する。

会社の老化という不可逆的プロセスは、「リセット」するしか解決策はない。人間は、新しい世代を生み出すことで「強制リセット」をかけてきた。会社もそれと同じことが必要。

子離れできない親会社、親離れできない子会社が多い中、「子供が親を超えていった」例はある。積水化学工業のハウス事業部からスタートし、完全に独立した積水ハウス。富士電機の電話部門から生まれた富士通や、富士通の子会社であるファナックなどは稀有な例である。

日本の会社が世代交代を実現するには、「子会社」に優秀なイノベーターを配置するべき。しかし、実際にはそうなっていない。子会社が親会社の余剰人員の受け皿であったり、単なるキャリアアップのための腰掛けの場所であったり、「子供は親の道具である」という扱いになってしまっている。

⑨無駄な抵抗はやめて運命を受け入れる

「会社の老化は止められない」という現実を肝に銘じること。アンチエイジングはできても根本から若返ることは不可能である。

長期的に若さを保つ唯一の方法は、新しい世代を生み出すことで世代交代をはかること。そのためのポイントは、人間と同じ。つまり、「肉体的には完全に別物になること」、「考え方(言語や「常識」)もリセットされること」、「DNAは受け継がれること」。会社の世代交代もこれらを満たすことが必要になる。子会社が親会社から巣立っていくというのは一つの選択肢となる。

思考停止に陥らず「考えること」で老化の速度を抑制することができる。自分を客観的に見て、手段ではなく目的を重視し、部分最適ではなく全体最適を考えることが必要。

方向性を統一させるメカニズムが存在する会社は、そうでない会社よりも老化の進行は遅くなる。そのためには、明確な戦略を持つこと、尖った個性的なカルチャーとそれに基づく行動指針をはっきりさせ、浸透させることが挙げられる。カリスマリーダーによってもその方向性は統一される。

老化が進んだ人間にも会社にもイノベーションは無理。新しいことは次世代に任せ、そのために必要なヒト・モノ・カネとノウハウを提供し、それによって育った次世代に親孝行してもらうことを期待するほうがよほど世のため人のためになる。

大人には大人にしかできないことがある。これまでの知識を活かせることに専念し、せめて「若者」の足を引っ張らないことが重要。

最後に

以上です。

いままで会社で「なんでこんなことをしているんだ!」と思っていたことも、老化という視点から見ると、なるほどと納得がいきました。

この本のおかげで、「それは老化という不可逆的なプロセスの一環なのだ」と思えるようになり、余計なストレスを抱えることも少なくなりそうです。

会社だけでなく、社会も同じです。

「エントロピー増大の法則により、平均化して尖った人は少なくなり、規制はどんどん複雑化していっている」と著者はあとがきで述べていますが、本当にそのとおりだと思います。

会社なら、子会社に世代交代をしていくことはできると思いますが、国の場合にはどうすればよいのでしょうか?

別の国をつくることもできませんし、今の時代では植民地を持つことも不可能でしょう。

老化していく日本において、老化していく会社において、そして老化していく自分自身はこれからどうしていくべきなのか、非常に考えさせられました。

Thank you for reading !

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