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【書評】遠藤周作『沈黙』を読む。沈黙するからこそ神

ロッシーです。

遠藤周作の『沈黙』読んだことありますか?

なんとなく「タイトルは知っているけれど読んだことない本ランキング」に入りそうな気がします。

小さい頃、「新潮文庫の100冊」という小冊子をパラパラ眺めるのが好きでしたが、そこにはいつも『沈黙』が載っていた記憶があります。

あれから数十年・・・とうとう私も『沈黙』からの

「おい、そろそろ読まんのか?」

というプレッシャーに負け、読むことにしました。

正直いって、キリスト教徒ではない自分が読んだところでなぁ・・・と思っていたのですが、内容自体も非常に面白かったですし、色々と神や信仰について考えさせられました。

※以下、ネタバレがあるのでご注意ください。


沈黙の意味

物語の舞台は17世紀、日本のキリシタン弾圧の時代。主人公の宣教師ロドリゴは、師であるフェレイラの消息を確かめるため、命がけで日本に渡ります。しかし、彼を待ち受けていたのは、信者たちの過酷な弾圧と、自身の信仰を揺るがす出来事の数々でした。

ロドリゴは捕らえられ、踏み絵により信仰を捨てるよう迫られます。その極限の中で、彼が聞いた「踏むがよい。私はそれを許すためにいるのだ」というキリストの声。そして、ついにロドリゴは踏むことになります。

これが、おおまかなあらすじです。

ロドリゴは、日本人の貧しい農民たちが迫害され苦しんでいるのに、神が沈黙したままでいることに葛藤をします。

「おい神よ、いつまで黙秘しとるんじゃ、Why?」

でも、神はノーアンサー。

それが、本書のタイトルでもある「沈黙」なわけです。

沈黙するから神

ロドリゴが、

「おお神よ、どうしてあなたは黙っているのですか?」

と思う気持ちも分かります。

しかし、神ってそもそも人間の都合に合わせて答えるような存在ではないと私は思うのです。

むしろ、「沈黙するからこそ神」なのではないでしょうか。もし神が何かに答えてくれるなら、それは人間の範疇に収まる存在でしかありません。神が超越的な存在であるなら、その沈黙もまた神の一部だと考えるべきなのかもしれないと私は思います。

苦しんでいる人が「もうダメだ!」となったときに神に祈ったら、何らかの奇跡が起こったとしましょう。そうすれば

「ああ、神様はいるんだ!」

と信じるのは非常に簡単ですよね。私だってそういう現象を見れば、信者になるかもしれません。

でも、そういう風に「何かをしてくれたから神を信じる」「何か超自然的現象が起きたから神を信じる」というのでは、本物の信仰とはいえないのではないでしょうか。

神が本当にいるのかどうかも分からない。神の沈黙の中で、それでも信じるという態度。こういう姿勢がまさに信仰心というものであり、神の存在証明を求めたり、神からの応答を求めたら、それは信仰心ではなく、ある種の取引になってしまうと思うのです。


とはいうものの人間というものは弱いものです。存在するのかどうかもわからず、しかも何も反応してくれないものを、心の底から信じることができる強い人はそうそういないと思います。

だからこそ、「神は死んだ」と言われたのでしょう。

カミュの思想と信じること

このテーマに関連して、カミュの「不条理」の哲学を思い出しました。カミュの思想は「神のような超越的存在」を認めません。つまり、神はいないという前提に立ちます。しかし、その「いない」と断定する姿勢もまた、一種の信仰だと思います。神の存在を証明することも否定することも、結局どちらもできない状況で、それを信じるわけですから。

そう考えると、「神はいる」と信じる人も、「神はいない」と考える人も、証明ができない状況で、人間はどこまで信じるという行為を貫けるのか?という意味で、人間の限界と向き合っているのかもしれませんね。


本書は、読者に深い問いを投げかけてきます。神とは何か、信仰とは何か、人間の限界とは何か。たまにはそういう深いテーマについて考えるのもいいですね。

神には御礼を言うだけ

話は変わりますが、もう年末年始が近づいてきましたね。

神社にお参りに行く人も多いと思います。私は、神社に行っても願い事はしないようにしています。

神様が本当にいたらと想像してみてください。年に1回大勢がやってきて、色々なことをお願いしてくるわけです。私が神様だったら嫌になります(笑)。

私はただ感謝をするだけです。

「いつもありがとうございます」

そう言っても、神様は沈黙したままでしょう。

でもそれでいいのです。神様からの応答がなくても、きっとその気持ちはどこかに届いていると思いますから。


最後までお読みいただきありがとうございます。

Thank you for reading!


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