【本の要約】『いま、すぐはじめる地頭力』
ロッシーです。
『いま、すぐはじめる地頭力』(著者:細谷功)を読みました。
「あの人は地頭がいい」「地頭が良い学生を採用したい」という言説はよく耳にしますね。でも、「地頭力」って一体何なのでしょうか?
この本では、このように言っています。
地頭力についてよくわからない人も、この本を読むことで理解が深まる良書だと思います。
2008年に出版された本ですが、その内容は今の時代に通用するどころか、むしろこれからの時代で個人がサバイバルする際、絶対に必要な考え方だと思いました。
それでは、以下ざっくりと要約していきます。
1.物知りは役に立たない時代
「頭の良さ」は3つに分けられる。
・物知り ⇒ 知識が豊富(例:クイズ王)
・機転が利く ⇒ 対人感性が高い(例:コメディアン、司会者)
・地頭がいい ⇒ 思考能力が高い(例:数学者、プロ棋士)
インターネットやグーグルなどの検索エンジンの発達・普及により、情報・知識そのものをたくさん持っているかどうかは差別化のポイントではなくなった。
「簡単に入手できる情報・知識に、自分の頭を使っていかに付加価値をつけられるか」が重要になっている。
2.知識力と地頭力は車の両輪
知識力と地頭力は車の両輪。例えるなら、料理における食材(知識・情報)と料理の腕(地頭力)という関係。
知識をインプットして地頭力で付加価値をつけて、新しい知識を生み出していくことが知的活動。だから、知識を持っているだけでは意味がない。
自らの存在価値を出そうと思ったら、自分の頭を使って考えて「自分なりの」ユニークな視点を提供していかなければ、「インターネットの受け売り」しかできなくなってしまう。
インターネットが普及し始めたとき、「デジタルデバイド」が起こるといわれた。PCが使える人、あるいは買える人だけがデジタル時代に生き残れるということだったが、実際にはそのようなことは起こらなかった。インターネットの普及後に最も必要になったのは、「情報量」ではなかったから。
3.地頭力の構成要素
地頭力の構成要素は、3層構造である。(下から上に向かって第1層⇒第2層⇒第3層)
・第1層:「知的好奇心」(何気ない物事にも「ひっかかり」を持ち、何事に対しても一度は疑ってみること。それにより思考が起動する(考えはじめる)。
・第2層:「論理思考力」と「直観力」(筋道を立てて考える力と、「ひらめき」などの力)
・第3層:「仮説思考力」「フレームワーク思考力」「抽象化思考力」(それぞれ、「結論から」考える思考、「全体から」考える思考、「単純に」考える思考のこと)
第1層と第2層は地頭力のベースとなるもので、PCでいうとOSにあたる。第3層の3つの思考力は、アプリケーションにあたる。
※論理思考、いわゆるロジカルシンキングというのは、「物事を誰にでも通じるようなルールで一貫して筋道を立てて考える」ことである。つまり「当たり前のことを愚直に当たり前に表現し、伝達する」ことであり、ここから新しい発想や独自の視点が生まれてくるわけではない。
4.仮説思考力
仮説思考力は、「結論から考える」こと。
すなわち、自分のいる位置からではなく、「自分から離れた向こう側から」考えること。それによって、効率的に目標地点にたどり着くことを目指す。
現在からではなく将来から考えること、自分からではなく相手の視点から考えること、できることからではなくやるべきことから考えること、手段からではなく目的から考えること。
仮説思考力を妨げるもの ⇒ 「完璧主義」「高い精度・正確性へのこだわり」「できない理由を考える」「正解依存症」
5.フレームワーク思考力
フレームワーク思考力とは、「全体から考える」こと。
すなわち、自分のいる位置からではなく、「上空に」離れて考えること。それによって、思考のクセを取り払う。
全体から考えるプロセス ⇒ ①対象物の全体を俯瞰して「外枠を押さえる」。そのあとに、②全体の枠をさらにある特性にしたがって「分類・分解する」。
「外枠を押さえる」ことが非常に重要。外枠を押さえずに考えたり話し合ったりしていると、対象の範囲が人により異なるため、「虫食い」が発生し、モレやダブりが生じる。モレがあると、「想定外」が発生するし、ダブりがあると効率が悪くなる。
フレームワークのテンプレートとして、汎用性が高く有名なものとしては、以下のものがある。
・5W2H(why, what, when, where, who, how, how much)
・経営戦略の3C(company, competitor, customer)
・マーケティングの4P(product, price, place, promotion)
・製造業のQCD(quality, cost, delivery)
・ヒト、モノ、カネ
既存のテンプレートの中に合うものがない場合には、「モレなく、ダブりない」分類を利用する。「モレなく、ダブりなく」は、ロジカルシンキングの世界では、MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustiveの略)と呼ばれる必須概念である。
フレームワーク思考を妨げるもの ⇒ 「自己中心主義」「視野狭窄」「先入観」「虫食い型の発想」
6.抽象化思考力
抽象化思考力とは、「単純に考える」こと。
すなわち、自分のいる位置からではなく、「対象物から」離れて考えること。それによって、枝葉ではなく本質を見分ける。
抽象化思考の目的は、「1を聞いて10を知る」こと。一つの分野の知見を共通の特徴を持つ他分野にも適用して応用範囲を広げることができる。
人類は、自分が直接経験したものを、誰もが使えるような形に一般化(抽象化)することで進歩してきた。
対象物を「離れて」見ることで、抽象化することができる。言い換えれば、対象物に近づきすぎていると、「類似している共通点」が見つからない。例えば、近くで見れば3歳の女の子と80歳のおじいさんは一見すると異なっている。しかし、遠くに離れて見れば、頭と胴体があって四肢があり、直立歩行をしているという「共通点」があり同じ「人間」である。
抽象化思考を妨げるもの ⇒ 「経験至上主義」「具体性依存」「重箱の隅をつつく」「短絡的発想」
7.地頭力が不要な場面
地頭力というのは「限られた時間で最大のアウトプットを出すための能力」である。つまり、ビジネスやプロフェッショナルと呼ばれる人たちには間違いなく必須の能力である。
半面、次のような場合には適さない。①時間的なプレッシャーに追われていない。②目的が「最大のアウトプット」ではない。
特に「仮説思考」は、限られた時間の中で最適の方法で目的ににたどりつくためのもので、カーナビのようなものである。カーナビは途中の寄り道を許さない。結果ではなくプロセスを楽しむのであれば、このような考え方は適さない。
「地頭力」を使わないほうがいい場面として、プライベートでの1対1のコミュニケーション(例:友人、恋人、夫婦間)など「感情を優先させるべき場面」がある。「そのコミュニケーションの目的が何かのアウトプット(結果)である」という明確な意識がない場合、一番言ってはいけない言葉が、「要するに結論は何なの?」である。
「地頭力」という「刀」を手にすると振り回したくなるかもしれないが、日常生活においては、「刀を抜かずに勝負をつける」に越したことはない。
リラックスしたいときも地頭力は不要。リラックスしたいときは、「思考停止」してしまったほうが楽。人生には思考停止したほうが良い場面もある。
最後に
要約は以上です。
本書には、地頭力の診断チェックがありますが、どうやら私はそれほど地頭力がないようです(残念)。
この本を読めば「地頭力がさぁ~」と言っている人に、「地頭力というものは3層から構成されていてですね~」とマウンティングできることうけあいです(笑)。
個人的には、「7.地頭力が不要な場面」で書いたように、あくまでも地頭力といってもそれで何もかもが解決できる伝家の宝刀ではないこと、使うべきではない場合もあるのだということを書いてある点に、著者の誠意を感じました。もしかすると、著者は地頭力を発揮した結果、「痛い」経験をしたのかもしれませんね(笑)。
地頭力がある人もない人も、本書を読んで、地頭力というものについてまず理解を深めること、つまり「外枠を押さえること」をしてみてはいかがでしょうか。
著者は、地頭力でいちばん重要なのは、自分の頭を使って考えることであり、地頭力は、「自頭力」とも言うことができるといっています。
「自分の頭で考える」
これって言うのは簡単ですが、実行するのは本当に難しいことだと思います。私も少しでも自分の頭を使って考えるようにしたいと思います。
他頭力ばかり身につけないように。
Thank you for reading !