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INTJが夏目漱石『彼岸過迄』を読んで思ったこと

ロッシーです。

夏目漱石の『彼岸過迄』を読みました。

夏目漱石の『彼岸過迄』は、6つの短編をあわせた長編という構成になっています。

※以下、『彼岸過迄』の内容を知っていること前提として書いていますのでご了承ください。

その中で一番印象に残った短編は「須永の話」でした。自意識の強い男である須永と、その従妹である千代子との会話を描いた内容です。須永と千代子のやりとりは心を揺さぶられるものがありますね。

特に、千代子が須永に「あなたは卑怯だ」って言い放つ場面。いやもう、この一言がグサッと刺さる刺さる!

そして須永が「・・・なぜ?」と、やっとのことで聞き返したあとの、千代子からの

「それが解らなければ貴方馬鹿よ」

のバッサリ感。

このやりとりには完全にやられましたね。心が痛い・・・。

私自身、過去にこういう経験をしたわけではないのですが、読んでる私自身、須永と同じ心境になっていました。なぜ、実際に経験もしていないのに、ここまで言葉が刺さってくるんでしょうね。漱石の筆力の凄さを改めて感じました。

実は、夏目漱石は、性格診断で有名なMBTIで「INTJ」タイプに該当するらしいです。

この前、私もMBTIをやってみたところ、なんと同じINTJでした(悲報)。どうりで生きづらいわけですね(笑)。

まあ、夏目漱石の時代にMBTIなんてありませんから、この話も眉唾ものではあります。でも、漱石の作品を読むたびに「この感じ、分かるなあ」と思うことが多いです。同じINTJだから共感しやすいのかもしれません。

本書でもそれは同じで、須永の内向的で優柔不断な性格や、彼の自己肯定感の低さとか、千代子に対する感情の揺れ動きとか、それを分析している様子などがすごくリアルで、まるで自分の内面を覗かれているような気持ちになりました。

須永は、千代子のことを好きじゃないって自分に言い聞かせながらも、彼女が高木と仲良くしてるのを見て嫉妬するんですよね。須永の独占欲とか、他人をコントロールしたい欲望も透けて見えるわけです。

一方で、千代子のキャラクターもすごく魅力的ですね。須永に対して冷たいというか、容赦ないところがあって、「あなたは卑怯だ」とか「それが解らなければ貴方馬鹿よ」とか、ズバッと言い切る強さがあります。

とはいいながらも、その強さの裏には、千代子の須永に対する想いも見え隠れしています。千代子は、須永の弱さを彼に突きつけることで、彼を変えようとしてるんじゃないかという気がします。そうやって強く言葉をぶつけることで、ただの批判じゃなくて、須永に千代子自身へと向き合うためのきっかけを与えようとしているのかもしれません。

そして、そういう千代子の意図も、おそらく須永は分かっているのでしょう。しかし、須永にとっては千代子は「まぶしすぎる」存在です。須永は、千代子という太陽を直視できないのです。でも、その太陽が他の男(高木)を照らすのは嫌という・・・いや~なかなか拗らせていますね(笑)。

本書は、そういった登場人物の内面、心理を味わうことができる面白さがあります。決して派手な物語ではありませんが、登場人物たちの心理描写を味わうことができました。

漱石自身も、きっと自分の中にある矛盾や弱さと向き合いながらこの物語を書いたんじゃないかな、と勝手に想像しています。

特に須永と千代子の関係には、漱石が人間の弱さや矛盾を見つめて描こうとしたものが詰まってる気がします。INTJの私としては、漱石の冷静で鋭い観察眼に共感しつつ、彼の文章に引き込まれる感覚を存分に味わうことができました。

本作を読んで、作品それ自身よりも、漱石自身への共感が強まったように思います。

『こころ』や『坊ちゃん』は読んだことがあるけれど、『彼岸過迄』は読んだことがない人は多いのではないでしょうか。ぜひ、興味があれば一読をおすすめいたします。私は、次は『行人』を読んでみようと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございます。

Thank you for reading!


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