死者も生者も風の中に〜『岸辺の旅』
黒沢清の映画では、風が見えます。
カーテンがそよ風に優しく揺れていたり、白い布が強風で捲くれ上がるようだったり、人の前髪が不気味にそよいだり。風がいろいろな風情を醸しながら存在感を示す場面が必ずといっていいほど出てきます。私は、黒沢の風を見るたびごとに、何か映画的なことに触れたような気がして満足感を得てきました。そのような映画体験のあり方は奇妙に思われるかもしれないけれど、何かとセリフで重要なことを伝えようとする文学的な映画作品の多いことに、いつの頃からか食傷していたことも裏