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怒号と銃弾と男たちの哀しみ〜『アウトレイジ 最終章』

シリーズとしては3作目にあたりますが、タイトルにもあるとおり、これが最終作。裏社会に生きる無法者たちの抗争を描いた本シリーズは、PTA的な良識に照らせば若年層の鑑賞には留意が必要な作品であることは確かでしょう。北野武監督自身が言っているように、今の御時世にはこの種のバイオレンス映画は撮ることも見せることも難しくなってきたのかもしれません。

というわけで、本シリーズではとかく暴力シーンと粗暴なセリフが話題になりがちですが、ここでは裏切りや駆け引きなど、あらゆる人間関係で観察される醜悪さや滑稽さ、哀しみがストレートに描出されています。よく引き合いに出される『仁義なき戦い』シリーズが、単に裏社会の抗争劇を描いたにとどまらず、人間社会のいわば縮図を剔出したとして高い評価を受け続けているのと同じことが本作・本シリーズにも言えるように思います。

そして北野監督の絵作りはやはり一級品だということは強調して強調しすぎることはありません。あえて言及しておきたいのはクルマの登場シーン。官能的とさえいいたくなるような存在感とでもいえばいいでしょうか。本作でも開巻早々にクルマが出てきますが、その表現はすぐれて映画的です。

また、警察が必ずしも「正義」を体現しているわけではない点もおもしろいところです。松重豊扮する刑事が上層部の方針に逆らって気骨のあるところを見せたりしますが、テレビドラマのような勧善懲悪に則った単純素朴な図式は基本的に斥けられています。

ビートたけし自身をはじめ、西田敏行、塩見三省、大杉漣、金田時男、白竜、大森南朋など芸達者な役者たちの極道ぶりももちろん見ものです。
3作で終わるのは少し残念な気がするけれど、「アウトレイジ」的な世界は今や他の領域でも一般化してきたようですから、別の形でまた引き継がれていくのかもしれません。
暴力に限っていっても、現実にそれがそこここに存在する以上、それをないもののように扱うことは端的に欺瞞というべきでしょう。

北野武監督作品では、私は時間の流れを緩やかに描いた『HANA-BI』が最も好きです。が、『アウトレイジ 最終章』も万人に薦めたくなる作品ではないにせよ、映画作家・北野武の非凡な才気が画面に漲っている作品であるといっておきましょう。

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