映画と音楽への愛を歌う〜『ラ・ラ・ランド』
『ラ・ラ・ランド』、アカデミー賞では6部門で受賞した話題作ながら内容に関しては何の予備知識もなく観たのですが、本当によく出来たミュージカル映画だと思います。
物語としては、挫折続きのミア(エマ・ストーン)と自分のやりたいことと実際に売れるものとのギャップに苦しむセブ(ライアン・ゴズリング)とのカップリングで、それじたいはありふれたテーマといえます。むしろそうしたシンプルな仕立てだからこそ多くの人にアピールしたといえるかもしれません。
この種のミュージカル作品では、歌い踊ることの快楽を爽快に見せてくれることがいちばん。その意味では本作で人々が歌い踊るシーンは理屈抜きに楽しい。とりわけ冒頭、高速道路の渋滞から群舞が始まるシーンには驚かされました。
主人公の二人が出会う場面は後半に形をかえて反復され、映画ならではの編集の妙が光ります。本作はオリジナルの脚本ですが、『カサブランカ』や『理由なき反抗』が劇中で言及され、デイミアン・チャゼル監督の映画愛が画面から充分に伝わってきました。またカラフルな衣装も見どころのひとつといえるでしょうか。
ちなみにライアン・ゴズリングがピアノを弾く重要なシーン、カットを割らずに撮っているので本人が弾いているのかと思って鑑賞後に調べてみたら、実際、本人が特訓の成果を披露したとあります。役者魂といってしまえば陳腐だけれど、これも見どころ聴きどころの一つといっておきましょう。