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哲学書評

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#入不二基義

入不二基義『現実性の問題』「現に」という現実性の、記述可能性、認識可能性、存在可能性

入不二基義『現実性の問題』「現に」という現実性の、記述可能性、認識可能性、存在可能性

はじめに以前所感を書き、別noteで円環モデルを紹介し、さらに別noteで「現に」という現実性を解説した、入不二基義『現実性の問題』を読み解いていく。

「現に」という現実性を解説した際にも登場したが、「現に」という現実性は、記述された内容や輪郭とは独立のものである。だが、そのようなものが存在していると、どのようにして言えるだろうか。本noteでは、私から三つの疑問を提示し、それに対応する入不二の

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入不二基義『現実性の問題』「現に」という現実性

入不二基義『現実性の問題』「現に」という現実性

はじめに以前所感を書き、別noteで円環モデルを紹介した、入不二基義『現実性の問題』を読み解いていく。

本noteでは本丸である「現実性」について考察していく。とりわけ、「可能性」との連関に限定した「現実性」にフォーカスする。前回のnoteで提示した超簡易版の円環モデルのうち、以下図のとおり赤点線の箇所が射程範囲である。
※なお、次のnoteでは図中左下の「潜在性」との連関における「現実性」を取

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入不二基義『現実性の問題』第一章の円環モデル

入不二基義『現実性の問題』第一章の円環モデル

はじめに以前所感を書いた、入不二基義『現実性の問題』を読み解いていく。

本書は「現実と可能」についての考察であるが、基本的に形而上学的(存在論)な哲学書である。心の哲学や時間論がキーワード的に登場するとはいえ、あくまで、入不二の形而上学だと思って読む方が、内容に裏切られないと思う。

まず、第一章に絞り、そこで登場する「円環モデル」を本noteで紹介する。このモデルは本書全体を裏で支える通奏低音

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入不二基義「非時間的な時間 第三の〈今〉」を読む

入不二基義「非時間的な時間 第三の〈今〉」を読む

1.はじめに「非時間的な時間 第三の〈今〉」は入不二基義『時間と絶対と相対と 運命論から何を読み取るべきか』の第一章である。

さて、哲学における時間論では、大別して「A系列」と「B系列」という立場が存在する。「A系列」は時間を独特の「変化」として動的に捉え、「B系列」は時間を順序関係として静的に捉える。この分類はマクタガートという1900年頃に活躍した哲学者によるものだ。

それをふまえたうえで

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入不二基義「懐疑論・検証主義・独我論から独現論へ」を読む

入不二基義「懐疑論・検証主義・独我論から独現論へ」を読む

はじめに入不二基義「懐疑論・検証主義・独我論から独現論へ」は大森荘蔵生誕100年の特集号である『現代思想 一二月号(2021)』に収められたテキストである。

大森荘蔵は戦後日本を代表する哲学者であり、西洋哲学の受容のみならず、自らの頭で考え抜く姿勢が後世に多くの影響を与えた人物だ。この雑誌の中でも現代の日本を代表する学者によって、数々のエピソードが紹介されている。

ただ、入不二の本テキストは通

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