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ひとりぼっちのもみの木|掌編小説🎄
ある雪山に、一本のもみの木がありました。
周りの木はみんな誰かのおうちに連れて帰ってもらえたのに、その木だけは誰にも見向きされません。
あっちの木より、背が小さかったから。
そっちの木より、葉っぱが少なかったから。
向こうの木より、幹が細いから。
他の皆は今頃、暖かな家の中で綺麗な飾りを付けてもらい、楽しく過ごしていることでしょう。
もみの木はポロリと涙をこぼしました。
「つめたっ」
無人島生活福袋【毎週ショートショートnote】
クリスマスなんて、嫌いだ。
サンタなんて、大っ嫌い。
僕の家にはお父さんがいない。
だから、サンタはこない。
友達が「サンタなんていないに決まってんじゃん。父ちゃんがこっそり置いてくの見ちゃってさ」
ウザそうに笑うその顔を見て、
僕は椅子をガタッと蹴った。
奴らはピタリと黙り込む。
僕は足早に教室を後にした。
家に帰ると、玄関にアドベントカレンダーが飾ってある。仕事で忙しい母が、僕が寂し
それでも地球は曲がってる。
吾輩の名前は、リュウキュウジュウサンホシチビオオキノコムシという。
日本で一番長い虫の名前らしいが、案外気に入っている。ちょっと長いからリュウとでも呼んでくれ。
我々の生態はあまり知られていない。
我々は木を好んで食べているが、時折赤い実を食べると別の生き物の体内に転移するのだ。
吾輩は意識を保ったままその体を操ることができる。持ち主の意識は深く眠ったままに。
とある夜、吾輩は全く動けない
モンブラン失言【毎週ショートショート】
『師匠!待ってください..
僕はもう足が、足が..!』
師匠は振り向きもしない。
『限界を越えたその先に、進むべき道があるのじゃ。儂が最後に教えられるのは..モンブラン失言に気をつけるんじゃぞ』
師匠が命と引き換えに教えてくれるもの。僕はそんなのいらないって突っぱねた。モンブラン失言?そんなものより、僕はずっと師匠の側にいたかった。
ぬかるみに足を取られても、ひたすら前へ進んでいく。どれ
リリの小さな冒険🐿️|ふぉれすとどわあふ
このお話は、リレー小説「ふぉれすとどわあふ」への参加です。
↓昨日までのリレー状況はこちら
①リリの憂鬱
↓
②リリの憂鬱2
↓
この続きを「②どわあふの森の木の実って」をテーマに繋げます。
リリ🐿️「ルーちゃん、おはよー☺️」
ルー🦜「リリ、おはよ。いや僕はルードリッヒっていうちゃんとした名前が..」
リリ🐿️「いいじゃない、ルーちゃんのほうが可愛いし✨」
リリは名前を
贄の巫女【ショートショート】
「畏み畏み白す。
掛けまくも畏き高天原に坐す天照大神よ。
光よりいでて、かの地の穢れを祓い潔めたまえ」
霧に包まれた林の中。
頭の上で朧げながらそう唱える声が聞こえた。
凛とした声に空気が瞬時に澄んでいき、とたんに体が軽くなる。なんとか顔を上げてその相手を見ようとしたが、まだ思うように目がよく開かない。
「動かなくて良い」
涼やかな声とは裏腹にグッと力強く持ち上げられる。
まだ体中痺れて思
手紙には。【シロクマ文芸部✖️毎週ショートショートnote】
手紙には、こう書かれていた。
↓
地球にたった一人取り残された彼女の姿を探して、
僕はあらゆる場所を駆け回った。
AIとか、人間だとか。
その愛は、
プログラミングされたもの?
地球を去る時に廃棄されたすべてのAIたち。
その中に、彼女はいなかった。
人間との違いに『寂しさ』を口にする君は、
そこに確かに在る、たったひとつの存在。
紛れもなく君だけが持つその『思考』に、『感情』と名
てるてる坊主のラブレター。
「ねぇ、その窓にぶら下がってるのって何?」
誰にでもなくそう問うと、『彼女』は振り向いて虹色の瞳をまっすぐ僕に向けた。
「それは、今から528万年前まで存在した”てるてる坊主”です。長雨の解消、翌日の晴天を願うためのおまじないのようなものです」
そんな昔のことをよく知ってるね、と言おうとして僕は口を噤んだ。彼女はスーパーAIなのだ。きっと地球の歴史のすべてがその中に組み込まれているのだろう。
祈願上手【毎週ショートショートnote✖️タカバタケ】
「ねぇ、もし地球が滅亡するとしたら、最後の日に何をする?」
「うーん、そうだなぁ..」
何気ない日常の、何気ない会話。
そのくりっとした愛らしい瞳を見ながら、こうして君と他愛ない話をしている時が1番幸せなのだと、ありきたりな返事を呑みこんだ。
「最後の日くらい楽しくいたいな。例えば、最近君が覚えたダンスを一緒に踊るとか」
「ワルツのこと?」
「そう、それ。何百年も前に流行ったワルツを完璧