記事一覧
凍星の約束|ショートショート
※このお話は『みんはいアドベントカレンダー』に寄せられた作品の中からいくつか選び、繋いでひとつのストーリーにしたものです。
「そっか、今日はクリスマスイヴだったっけね」
僕が慌てて買いに出たらもうどこも売り切れで、ようやく見つけたそれはコンビニの半額ケーキだった。
彼女はそのシールを何かの儀式のように、丁寧に剥がしていく。その度に透明なフィルムが蛍光灯の光を捻じ曲げ反射する。まるでこの世に闇
赤いてぶくろ|みんはいアドベントカレンダー🎄
自分ハ自分ガ好キデ好キデタマラナイ..
私は、私が大嫌いだ。
この場所にいたくなんかない。
私なんてこの世界にはきっといらない。
友達はきっと私じゃなくたっていいし、
彼女はきっと私じゃなくてもよかった。
今日は12月3日。
もうこの部屋に来ることのない彼氏と買ったアドベントカレンダーは、まだ玄関に置きっぱなしだった。どうせお菓子でも入っているのだろう。開けてみると、見覚えのある赤い手
松ぼっくりのお布団|掌編小説
「お母さん、どうしてうちには、サンタさんこないの?」
「サンタなんているわけないじゃない。あんなのただの作り話よ」
「でも、でも、お友達のハルのうちには、去年来たって..」
「夢みたいなこと言ってないで、早くお手伝いしてちょうだい」
ヨルは、しょんぼりとして森に出かけていきました。
ヨルは、松ぼっくりの子。
ヨルの家には、お父さんはいません。ヨルがお母さんを手伝って、なんとか2人で暮ら
ボンゾーの秘密|掌編小説
僕の名前は、凡造。
ボンゾー、って読む。
めずらしい名前でしょ?
実は僕は忍者の末裔で、
本当の苗字は服部っていうんだ。
今の時代、忍者は存在しないことになってる。
本当の名前は、服部半蔵の名を受け継いで「半蔵」っていうんだけど、普段は「凡造」を名乗るようにしている。これは、幼馴染みの沙綾も知らないことだ。
沙綾の家は、昔でいえば華族のお姫様。
今はそんな身分もうないってことになってるけど、
風を治すクスリ|毎週ショートショートnote
🍄今週のえのき占い🍄
ん?当たると評判のえのき占い、今週は不吉なことが書いてある。クリスマスケーキか…でも、まだクリスマスには遠いんだけどな。
今日は12月4日、アドベントカレンダーにはクリスマスケーキ型のクッキーが入っていた。ふむ、お薬ってこれのことかしら?
バイト先にいくと、ひとつ年下の悠真が「イブの日にケーキ売らなきゃいけないなんてひどいっすよ、オレ付き合いたての彼女いるんすよ」と
ひとりぼっちのもみの木|掌編小説🎄
ある雪山に、一本のもみの木がありました。
周りの木はみんな誰かのおうちに連れて帰ってもらえたのに、その木だけは誰にも見向きされません。
あっちの木より、背が小さかったから。
そっちの木より、葉っぱが少なかったから。
向こうの木より、幹が細いから。
他の皆は今頃、暖かな家の中で綺麗な飾りを付けてもらい、楽しく過ごしていることでしょう。
もみの木はポロリと涙をこぼしました。
「つめたっ」
無人島生活福袋【毎週ショートショートnote】
クリスマスなんて、嫌いだ。
サンタなんて、大っ嫌い。
僕の家にはお父さんがいない。
だから、サンタはこない。
友達が「サンタなんていないに決まってんじゃん。父ちゃんがこっそり置いてくの見ちゃってさ」
ウザそうに笑うその顔を見て、
僕は椅子をガタッと蹴った。
奴らはピタリと黙り込む。
僕は足早に教室を後にした。
家に帰ると、玄関にアドベントカレンダーが飾ってある。仕事で忙しい母が、僕が寂し
それでも地球は曲がってる。
吾輩の名前は、リュウキュウジュウサンホシチビオオキノコムシという。
日本で一番長い虫の名前らしいが、案外気に入っている。ちょっと長いからリュウとでも呼んでくれ。
我々の生態はあまり知られていない。
我々は木を好んで食べているが、時折赤い実を食べると別の生き物の体内に転移するのだ。
吾輩は意識を保ったままその体を操ることができる。持ち主の意識は深く眠ったままに。
とある夜、吾輩は全く動けない
モンブラン失言【毎週ショートショート】
『師匠!待ってください..
僕はもう足が、足が..!』
師匠は振り向きもしない。
『限界を越えたその先に、進むべき道があるのじゃ。儂が最後に教えられるのは..モンブラン失言に気をつけるんじゃぞ』
師匠が命と引き換えに教えてくれるもの。僕はそんなのいらないって突っぱねた。モンブラン失言?そんなものより、僕はずっと師匠の側にいたかった。
ぬかるみに足を取られても、ひたすら前へ進んでいく。どれ