ひとりぼっちのもみの木|掌編小説🎄
ある雪山に、一本のもみの木がありました。
周りの木はみんな誰かのおうちに連れて帰ってもらえたのに、その木だけは誰にも見向きされません。
あっちの木より、背が小さかったから。
そっちの木より、葉っぱが少なかったから。
向こうの木より、幹が細いから。
他の皆は今頃、暖かな家の中で綺麗な飾りを付けてもらい、楽しく過ごしていることでしょう。
もみの木はポロリと涙をこぼしました。
「つめたっ」
足元で声がします。
そこにはいつのまにかリスの子供がいました。
「あっ、ごめんなさい。えっと、道に迷っちゃって…おうちに帰れないの。少し、ここにいさせてもらってもいいかなぁ?」
「うん、いいよ」
子リスは木の根元に腰を下ろします。
小さな手はかじかんで真っ赤です。
もみの木は自分の体を削り、小さな穴を作りました。
「リスさん、ここに入ってていいよ。僕の中はあったかいから」
「あ、ありがとう」
夜になりました。
道の向こうから、リスのお母さんが走ってくるのが見えます。
「あっ、おかあさーん!」
「ハル!もう、どこに行ってたの?こんな雪の中で風邪ひいちゃうじゃない」
「うん、あのね、もみの木さんが家を作ってくれたの。だからちっとも寒くなかったよ」
二人はもみの木にお礼をいうと、帰っていきました。
それから数日後、もみの木の家にハルたち一家が引っ越してきました。
背が小さくても、葉っぱが少なくても、幹が細くても、リスたちにとっては大事なお友達。あと何年かしたら立派なもみの木になるでしょう。ハルはもみの木に登るとクリスマスの飾り付けをしました。
「うん、もみの木さん、とっても綺麗よ。実はアドベントカレンダーの引き出しを開けたら、もみの木さんがぽつんと立ってるのが見えて、探してたの。私たちのお家になってくれて本当にありがとう」
その時空から星が舞い降りてきて、もみの木のてっぺんに腰を下ろしニヤリと笑いました。もみの木は照れくさそうに頬を赤らめました。
..なんかまた勝手に、アドベントカレンダー🐻❄️サイドストーリーを作ってしまいました(。-人-。)
残り8つ!どれにしようかなー(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク