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自責や不安の原因!? 「脳の自動操縦モード」(デフォルト・モード・ネットワーク DMN)に注意しようという話


今回は、最近注目を浴びている脳の機能 デフォルトモードネットワークについて書きました。
誰でも持っていて、さらに1日中のほとんど稼働している脳のこの機能。「脳の自動操縦モード」と呼ばれ、様々なメリットを持つ一方で私たちに様々な弊害をもたらします。
自責や脳疲労や不注意の原因であることがわかり、うつ病や発達障害の治療のヒントになるかもしれない、とも言われています。

こんな方に読んでほしい機能です
・「何もしていないのに疲れる」がよくある
・気が散りがちで物事に集中できない
・自責思考が強く自尊心が低い
・うつや発達障害で悩んでいる

十分に学び対策することで、うつや発達障害の改善に役立てていただければ幸いです。


1.「デフォルト・モード・ネットワーク」とは


脳には「自動操縦モード」があることが最近の研究で明らかになりました。
これは、無意識に何か考え事をしている状態、いわゆる「ぼんやり」した状態を作り出します。誰でも持っている脳の状態であり、1日の大半の時間をこの状態が占めているはずです。

わかりやすいように、例をあげてみましょう。
あなたが家を出てから駅まで歩いているとします。どの角をどちらに曲がるか等、道順を全く意識せずに、気づいたら駅まで着いているはずです。歩いている間は、今日何を食べようかな、上司に会うの嫌だな 等、駅までの道順とは全く別のことを考えています。
また、シャワーで髪を洗っている時を想像してください。次に頭のどの部分を洗おうか、どれくらいの力加減で洗おうか、お湯ではこれくらい流さないといけない 等、「洗い方」を全く意識せずに、気づいたら頭を洗い終わっているはずです。髪を洗っている間も、今日あったことを脳内で振り返ったり、と、全く別のことを考えているはずです。

これらの状況では、自分が今まさに行っている目の前の行動に集中せずに、脳内ではごちゃごちゃと全く別のことをと考えています。意識は全く関係ない方向に向いています。これが、脳の「自動操縦モード」が働いている状態です。授業や会議に集中できずに「ぼんやり」してしまうのも、この機能が原因です
自分の意思とは無関係に、脳が勝手に次々と思考を生み出すため、「自動操縦(=オートマチック)」と表現しました。そして、脳神経科学の分野では正式名称として「デフォルト・モード・ネットワーク(以下、DMN)」と呼ばれています
ここからは正式名称を使って解説していきます。

DMNは、「ぼんやりとした集中していない状態」の時に働いています。一方で、DMNが機能を停止しているのは、「何かに集中している最中」です。読書に集中している時や映画に集中している時、瞑想している時などは、意識は目の前のことに向いているはずです。「何か別のことをずっと考えていること」は起こらないはずです。

DMNとは何かをざっくり理解できたあとで、DMNがもたらすメリット・デメリットを見ていきましょう。さらに理解が深まるはずです。


2.DMNのメリット


DMNは、「脳内の情報整理」「危機への備え」「ひらめき・創造性」という役割を果たしています

僕たちはぼんやりと考え事をすることで無意識のうちに情報の整理をしています。
集めすぎた情報はそのままにしておくと脳がパンクするためDMNによって整理をしていきます。

また、DMNは危機へ備えるためアイドリング的な機能も果たしています。とっさの危機に反応するためには脳を完全に休止させるわけにはいきません。自動車のエンジンも一度切ってしまうと再起動に時間がかかりますがアイドリング状態に保つことですぐに走り出すことができます。脳はDMNによって自動車のエンジンと全く同じことが起こっているわけです。

さらに、DMNはひらめきや創造性とも関連があります。急に良いアイデアが浮かぶのはDMNが働いている時です。シャワー中は良いアイデアが浮かびやすい、と言われますがシャワー中はDMNがオンになっている時間が長いからです。思考があっちこっちに飛ぶなかで急に良いアイデアが浮かぶわけですね。

また、DMNのおかげで、作業を同時並行的に行う「ながら作業」も可能になります。例に出したように、道順を考える必要がなくても駅に到着できたり、皿洗いのことを考えなくてもテレビを見たり電話したりしながら皿洗いを完了できるのはDMNのおかげですね。


3.DMNのデメリット


DMNは長所ばかりではなく、様々な弊害を引き起こしています。

①脳疲労

脳は体重のおよそ2%しか占めていないと言われています。しかし、一方で1日のエネルギーの約20%を消費する大食漢です。また、そのうちの60~80%をDMNが消費していると言われています。つまり、DMNはかなりの脳のエネルギーを使用しています。
意外に感じるかもしれませんが、何かに集中している時より、ぼんやりと別のことに思考が向いている時の方がエネルギーを多く消費します
そのため、DMNが過剰に機能していると脳が疲れやすく脳疲労を引き起こしてしまいます。
「何もしないのに疲れた」と感じることがありますが、実はDMNによる脳疲労によるものです。

②自責・不安

DMNは自責と不安の原因とされています。
過去の失敗を思い出して自分を責めたり、未来に目を向けて不安になっていたりするのはDMNが働いている時です何かに集中しているわけではなく、心が「今ここ」にない状態です。考えてみれば、自分で意図して過去の嫌な記憶を思い出すことはなく、脳が「自動操縦モード」を使って勝手に意識を向けているはずです。
うつ病になりやすい人の特徴として触れられることの多い「反芻思考」はまさにDMNによって引き起こされています。反芻思考とは同じ思考を何度も繰り返すことを指します。草食動物が食べた草を消化のために口と消化器官を行ったり来たりさせる「反芻行為」が語源です。

逆に、何かに集中している時(=DMNが停止している状態)は、自分を責めたり将来を案じたりしていません。小説の世界に入り込みながら、「明日のプレゼンが不安だ」と心配することはないはずです。目の前のテニスボールに集中しながら「自分はなんてダメなやつなんだ」と自責をすることはないはずです。

DMNが停滞している時間が長い人、つまり何かに集中している時間が長い人は、幸福度が高いとよく言われます


③不注意

想像に難くないですがDMNが働いている時は注意散漫になりミスや失敗が多くなります。
上の空で別のことを考えていて目の前のことに集中できていません。
運転中は事故を起こす可能性が増え、仕事中はミスが多くなります。


4.発達障害やうつ病との関係性


現在研究が進められている領域ですが、発達障害を抱えている人はこのDMNが働いている時間が長いと言われます。
島皮質という部位にあるDMNのオンとオフを切り替えるスイッチが、うまく機能していないためです。
そのため何かに集中することが難しく注意散漫になりがちです。
発達障害の人の中には常に疲れている人も多いですが、DMNによる脳疲労が原因と考えています。
また、自責思考から抜け出すことが難しく、うつ病や適応障害などの二次障害に陥りやすいです。

うつ病の人もこのDMNが働いている時間が長いです。
脳への極度のストレス負荷の結果、DMNを抑えるスイッチに異常をきたし、正常に機能しません。
うつ病の原因は複雑かつ多様であるため、ピンポイントの治療法が見つかりづらいと言われています。
しかし、多くのうつ病患者の間でDMNの暴走が共通して見られることが研究によって明らかになっています。
そのためDMNはうつ病治療のヒントになると言われ注目されています。


5.おわりに


補足ですが、このDMNが働いている状態を「マインドワンダリング」や「モンキーマインド」と呼んだりします。
「ワンダリング」は「さまよう」を意味するWonderingで、心が「今ここ」から離れてさまよっている状態を指します。
「モンキーマインド」は、猿が木から木へ飛び移り移動する様を例えて、思考が連想ゲームのように次から次へと湧いて移っていく状態を表しています。

DMNによって脳内の情報が整理されひらめきが増えるなど良い点も多いですが、一方で私たちはこの機能によって苦しめられています。
DMNについて知り、正しく付き合っていくことで、脳を最大限に活用することができるはずです。
次回はDMNの働きを抑えて自分へのダメージを減らしていくための対策についてお話したいと思います。

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最後までお読みいただきありがとうございました。





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