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日曜作家を目指そう!

日曜作家という言葉があります。

平日は仕事して、土日などの休日を利用して小説を書く人たちです。兼業作家という表現もしますね。

作家ではないですが、画家のルソーはこのスタイルでした。市民がはじめて余暇に恵まれて、趣味で絵を描く人が増えた時代です。

作家志望者の方は、プロになって日曜作家を目指すのがおすすめです。

たまに、「会社員を辞めて、小説家一本だけでやっていきたいんです」とおっしゃられる作家志望者の方がいます。

僕も二十年前、十年前ならば、「ぜひ頑張ってください」と言っていたと思うんですが、今の文芸小説の状況だと、そう安易に励ませないです。

もちろん絶対不可能とは言わないです。できると思えばできます。ただおすすめはできないです。

1 小説の規模は10年前の4分の1になった!



というのも今の文芸小説の規模って、みなさんの想像以上に縮小しているんですよ。

こちらのグラフをご覧ください。

2010年を100とすると、文芸小説は46、4%となっています。つまり小説の規模は、この十年で半減したんです。

十年で市場が半分になるって、そんなの中々聞かないです。だって十年で人口が半分になったのと同じなんですよ。

しかも文芸小説って、この十年でウェブ初の書籍が半分を占めるようになったんです。なろうで人気を得た異世界転生ものとかが書籍化される流れですね。

つまりそれ以外の一般文芸は四分の一になっているわけです。

100万部売れた作家は25万部に、10万部売れた作家は2,5万部に、2万部売れた作家は5000部しか売れないんです。

2 なぜ小説は売れなくなったのか?


小説がここまで不人気になった要因はいくつもあります。

現代人が忙しくなりすぎた。文を読む人が減り、動画で見るようになった。本の要約動画とかその需要から作られたものです。

スマホやネット動画の普及で、小説以外の娯楽が爆発的に増えた。物語を楽しむという意味では、クオリティーの高い韓流ドラマを見ればいいんですから。

原作小説が映像化になれば、以前は小説も売れたんですが、今はそこまでの効果はないです。映像になったから小説を読もうという人が激減したんです。

今映像化になっているのってマンガが大半です(異世界転生ものを除いて)。小説原作ってここ十年でほんと少なくなりましたね。さっきのグラフを見れば、唯一上昇しているのがコミックですから。数字はわかりやすいです。

全体的に読者が減ったため、出版社が確実に客のいるニッチ向けのものばかり作るようになり、幅広い層が読めるものが消えていった。異世界転生やBL系がこれほど増えたのもそのためです。

この戦略だと確実性はありますが、広がりはないです。大衆小説という表現も死語になっています。だって大衆は小説は読まないですからね。

まあ要因は数え切れないほどありますが、とにかく市場が半減(一般文芸は四分の一)したんです。

ビジネスとして考えると、これはもうやばすぎです。

アメリカのビジネス書の作家は、作家自身が動画で語るようになっているそうです。作家もお喋りがうまくなければやっていけない時代の到来です。

ただ小説となると、それも厳しいものがあります。

3 現在の作家とそれ以前の作家との違い


もちろんプロになって専業作家というのは、十年以上前からも大変困難なことです。そう簡単になれるのならば誰も憧れないです。

でもその頃は、小説でヒットを出せば大儲けできる可能性もありました。ベストセラー作家が高額納税者に入っていましたから。難しさはありましたが、夢物語というほどでもなかった。

けれどこの十年で市場が四分の一、さらに今からだと八分の一、十分の一になる可能性もぜんぜんあります。

過去とは厳しさのレベルがまるで異なります。

だから二十年前、三十年前にデビューした作家と、僕のようにちょうど文芸小説が右肩下がりになっていく十年前にデビューした作家とでは、感覚がまるで違います。

小説が売れた時代というのは、作家は川の流れにのって加速できたんです。でも現在は逆流で、流れに逆らって泳がなければならない。

漫画『刃牙』のキャラクターの範馬勇次郎が、時速20キロの激流プールの流れに逆らってバタフライをしていましたが、これからの作家はそんな感じです。(刃牙知らない人すみません…)

表現が極端になりますが、この調子だと小説がビジネスとして成立する時代が終焉する可能性もあります。

俳句とか短歌とかそういう規模になってもおかしくないです。実際純文学の世界はそうなってきてますよね。

4 これからは作家にとって最高の時代


でもよくよく考えれば、小説は書きたいから書くものなんです。

自分の中で書きたいという衝動が抑えきれず、書くものなんです。周りから書くのを止めろと止められても、「いや俺は書くんだ」とキーボードを打つ。それが正しい姿なんです。

別に稼ぎたいから書くものではないんです。

ならば今後の作家の生きる道というのは、日曜作家(兼業作家)がスタンダードになります。

プロになってもきちんと仕事をしながら小説を書くスタイル。作家志望の方はこれを目指すべきなんですよね。

もちろんプロになって専業作家でガンガンやる道もあるんですが、やっぱり市場が縮小する中でもがくのって本当に大変です。特にこれからは。

たとえベストセラー作家になっても、十年後に同じ地位を保ってられないです。精神的なきつさが半端じゃない。

そのせいもあって、今の作家さんってプロデビューされてもちゃんと仕事を持ちながら執筆を続けられていますよね。

こうなると、小説をより楽しみながら書ける時代が来るのかもしれません。それは作家にとって最高の時代かもしれないです。

激流に逆らってもガンガンいける最高の感動作です。おすすめです。ぜひ読んでみてください。


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浜口倫太郎 作家
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