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常昼の島の天使

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常昼の島の天使 [完]

お風呂の中で私は目を醒ました
不思議なことに生きている
チュン チュンと鳥のさえずり
もう朝みたい
うーんと伸びをする

あれは夢の世界というよりは
無意識の世界と言った方がいいのかもね
あの世界は私だけの世界
関係性の世界から閉じた私だけの世界

私はいい女だと思うわ
可愛いし 仕事もできたから
だけど 私を突き動かす発作的な衝動に
いつまでも耐えて生きることは無理だった

だから私は関係性の世

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常昼の島の天使 ⑩

私は絵筆を握っている
私は何をしたいのかしら

絵筆を握って考える
沢山の色を混ぜながら

考えて考えて 疲れてぼーっとしていたら
私がどうして漂流していたのかを思い出した

縛られたくない私
私とは他の誰かではないということ
他の誰かではないという区別によって
記号的に生じる私という現象

他の誰かの関係性に縛られることで
私という現象が立ち顕れる

それを理屈として理解しながら思うの
それでも

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常昼の島の天使 ⑨

私は絵筆を握っている
やまなしの前で魔法をかけてあげるために

絵筆を握って考える
いっそのこと島全体を海にしてしまおうか
ジャングルを跳ねるのは楽しかったけれど
固い大地を漂うことは出来ない
そうよ 私は森の女じゃないのよ

じゃぁ 私は海の女だったかしら
ぷかぷか海を漂ってきたけれど
私は海に沈もうとはしなかった
海にとって 私は異物で
ぷかぷかずっと浮いていた

自由でひとりで楽しくはあった

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常昼の島の天使 ⑧

私は絵筆を握っている
歌うことも好きだけれど
私の魔法といったらこれよね

私はただのプロの絵描き
でもプロの仕事は魔法のようなものだもの

絵筆を握りながら私は考える
問題の本質はどうやるかではない
何をしたいか

例えばこんなのはどうかな
やまなしに顔を描いてあげる
五感があればやまなしの世界は
もっと良くなるかもしれない

でも こんな話があったっけ
昔中国に七つの穴がない人が居た
目、耳、

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常昼の島の天使 ⑦

私はぷかぷか浮かばない
だって私の下にあるのは固い大地
今の私は森の女

でも 少しだけ
海でのことを思い返してみる

もしかしたら 私があの時やまなしを食べたから
やまなしの声が聴こえるようになったのかも
ただの幻聴という説が依然濃厚だけれども

やまなしが話しかけてきた

「もしかしてあなたは天使さまなんですか」

「そうよ、私は天使、海の天使、今は森の天使だけどね」

「やっぱり、そうなんで

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常昼の島の天使 ⑥

不思議なことにジャングルを分け入っても
足に痛みを感じなかった

ホントに私は森の女なのかも

ぴょんぴょん
ぴょんぴょん

スキップしてジャングルを跳ね回る私
童心に帰ったみたい

急にその場でへたり込む
そうよ私はお腹が空いていたのよ
ぐぅーっとお腹が叫び出す

当たりを見渡せば見覚えのある
赤い皮の果物があった
ぱーっと私は笑顔になって

ぴょんぴょん
ぴょんぴょん

小躍り小躍り 跳ね廻る

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常昼の島の天使 ⑤

いつまで経っても日が暮れないので
私は立ち上がることにした

海に背を向けて歩きはじめる
やがてジャングルが見えて来た

砂浜に別れを告げて植物の世界へ
濡れた私の足跡がジャングルに続く
海にいた私の痕跡は 沈まぬ太陽によって
そのうち消えてなくなるのだろう

今日から私は森の女になるのね
そもそも私は海の女でもなかったのよ

常昼の島の天使 ④

私はぷかぷか浮かんでいた
長い間海を漂流していると
川から迷い込んで来た漂流者に出会うことがある

ある時私はクラムボンという少年に出会った
ホントは少女かもしれなかったし
大人かもしれなかった
どうだってよかったのよ

クラムボンが私に話しかけてくる
私は黙ってぷかぷか浮かんでいた
クラムボンはかぷかぷ笑って
私のお腹に何かをのせた
クラムボンはかぷかぷ笑いながら
どこかへ消えた

お腹の上にの

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常昼の島の天使 ③

人のいないこの島には
名前はいらなかったかもしれないけれど
今は私がいるのだから 名前をつけてあげるべき
名前がないと とっても不便でしょ
なんて呼んでいいか さっぱり分からないものね

もし誰かにこの島について 
聞かれることがあったとして

「ここは名前のない島なんですけど、別に名前のない島という名前の島があるわけではなくて、誰にも名前をつけられたことがないという意味において、名前のない島と仮

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常昼の島の天使 ②

私は浮かんでいた
長い間海を漂流してきたの

こんなことがあった
小魚達が集まって大きな魚に擬態していたの
でも群れからはぐれてしまう魚もいて
何とか追いつこうと必死に泳いでいたら
それはそれは大きな魚がやってきて
擬態した魚の群れをひとのみしてしまった

はぐれた魚は途方にくれて
同じところをぐるぐる回っていたけれど
ついぞ食べられることはなかった

海の水が微かに濃くなったのを感じる

群れの

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常昼の島の天使 ①

私が地図を持っていたとして
それがなんだというのでしょう

そんなの役立ちはしないのだわ

ここがどこだか 誰も知らない
きっと地図には載ってない

ここは名無しの無人島