常昼の島の天使 ⑥
不思議なことにジャングルを分け入っても
足に痛みを感じなかった
ホントに私は森の女なのかも
ぴょんぴょん
ぴょんぴょん
スキップしてジャングルを跳ね回る私
童心に帰ったみたい
急にその場でへたり込む
そうよ私はお腹が空いていたのよ
ぐぅーっとお腹が叫び出す
当たりを見渡せば見覚えのある
赤い皮の果物があった
ぱーっと私は笑顔になって
ぴょんぴょん
ぴょんぴょん
小躍り小躍り 跳ね廻る
いっただーきまーす
やっと私はやまなしを掴んで
皮を剥こうとしたのだけれど
「やや、やめてください」
「わ、私を脱がしてどうするんですか」
なんか変な声がした
大変だわ ついに幻聴が
聴こえるようになっちゃったみたい
耳を塞いでみる
相変わらず声がする
耳を塞いでも聴こえるということは
やっぱり幻聴に違いないわね
「幻聴じゃありません、手を離してください」
無視してもよかった
でも 好奇心にあらがえなくて
私は声にこたえてみた
「あなたはやまなしなの」
「何を言ってるんですか?私はヒモサボテンです、俗に言うドラゴンフルーツです」
「私にとってはやまなしなのよ」
「変な方ですね」
「変なのはあなたの方だけれど、どうしてあなたは喋れるのかしら」
「そういうあなたはどうなんです」
「私には口があるもの」
「口ってなんです」
「やまなしにはないものね、お話したり、ご飯を食べたり、歌を歌ったり、そういうことをするのが口よ、あとは.........」
「一つも何言ってるか分からないけれど、あとは何です」
「口付けもできるわね」
そう言って私はやまなしに唇をあててみる
「な、なんかよく分からないけど柔らかい」
「どんなに着飾って格好つけても、あなたはやまなしのままなのね」
「言ってることが分かりません」
「分からなくてもいいわ、あなたのことは嫌いじゃない」
やまなしを食べるのは諦めよう
仰向けに寝転ぶと相変わらず空が眩しかった
常夏というか これじゃあ 常昼ね
眠気はやはり来ないまま
お腹だけがぐぅぐう鳴っている
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