不調の「中身」を他人に委ねるな
外から見えないその理由について、自分以外の誰が分かると言うんだろう。
憤慨
漢方のカウンセリングに行った。
私の低血圧ぶりを心配した知人から、「漢方よかったよ。無料で話だけでも聞いてきたら?」と言われ、興味本位で漢方専門店に来てみたのだった。参考程度に言うと私の血圧は「最高血圧96・最低血圧60」がここ最近の平均値。29歳というこの年齢で上の数値が100を切ってしまうのは、やはり「低すぎる」らしい。
でもそのカウンセリングにて、私は自分の想像している以上に、「その状態」の人に対しての偏見を嫌うのだということに気付いてしまったのだった。
最初は良かった。そこにいた専門家の先生らしき方は、実にいろんな角度からヒアリングをしてくれた。
「風呂上がりにも立ちくらみ起きます?」
「起きます。湯船浸かり終わってすぐはしばらく動けないです」
「胃袋の中でポチャポチャ音がしたりすることありません?」
「あ!あります。めっちゃあります」
「水分の取り過ぎでダルさが起きることもあるんですよね」
「へえー!」
私は初めての「漢方」という領域に対してもそうだし、カウンセリングの聞き方、情報の整理の仕方がとても参考になるなあ、と思ってしばらく大人しく聞いていた。
雲行きが怪しくなったのは、こちらもまた興味本位で同行した母が「実は娘は半年前、うつ状態と診断されたこともあって」という話をし始めてからだ。
それを聞いた先生はこちらを一瞥して、それから少し気まずそうに
「まあ、お医者さんは何でもかんでも『うつ』って診断しますからね。」
と言ったのだった。
あらかじめ記載しておくと、私の中で「うつ」の症状と「低血圧」の症状については、しっかり線引きがある。
うつの原因は、ストレス対処のバリエーションや感じ方の差、つまり敏感か鈍感かといった点に目が向きがちだけど、その実、最も影響が大きいのが「疲労の度合い」だと言う。
もともと感じ方に差がある訳ではなく、疲労によって感じ方が2倍にも3倍にも増えてしまう。同じ事象のストレスを受けて「やってやる」と起爆剤になるのか、「自分にはできない、もうだめだ」となるのかは、その人の意思の問題ではなく、その時の疲労具合によって捉え方が変わってしまうことが考えられている。つまり、性格自体が変わってしまうらしいのだ。
(参考:下園壮太氏「職場のメンタルヘルスとリーダーシップ」より)
私の場合は、寝不足続きの大阪出張の3ヶ月間が影響した。その後気付けば、それまで1時間で終わっていた仕事に半日以上かけるようになって、最終的にはとうとう、言葉が出なくなった。
気持ちは元気なのに体が自分の言うことを聞かない。求められていることもやりたいことも明確な中でのその状態は、控えめに言って地獄だった。
だからその漢方の先生が、
「まあ、お医者さんは何でもかんでも『うつ』って診断しますからね。」
という言葉を発した時、私は自分でもびっくりするくらい過敏に、この上なく憤慨したのだ。頭に血がのぼるってこういうことを言うんだろうなと思うくらいに。
その症状、うつじゃないよ、気持ちの問題だよ。他に対処法あるんだよ。自分が「そう」思うからそうなるんだよ。
いや、ちげえよ。
「そう思うな」ってお前、風邪ひいた人に対して「咳も鼻水も出すな」とは言わねえだろーがよ。何でもかんでもうつって診断する?そもそもお前はそれを診断できる医者ではないし、気持ちやそれ以外の対処法でどうにかなるならとっくにやってんだよ。お前はあの辛さを知らねえのかよ。バカにしてんのか?バカにしてんのかよ!!!!
と、改めて文字にすると実に幼稚な言葉がそのとき一気に脳内を駆け巡った訳だけど、でも私、そろそろ三十路。冷静になれ、冷静になれ。ちゃんとオブラートに包むところ包んで、伝えるとこ伝えちゃうんだから。
私はそっと先生に言う。
「あの、私の中で、低血圧の症状とうつの症状はハッキリと違うと認識しています。ですから、今ここでうつ状態に対しての相談をするつもりはないんです。低血圧の原因と対処法だけ、教えていただけますか?」
そして先生の話が一通り終わった瞬間、私は被せ気味に
「またしばらく自分の症状を様子見してから、必要になったらまた相談させてもらいますね。(=今は漢方不要です)」
とだけ伝えて、その店をさっさと出てきた。
その先生が悪い訳では全くない。事実そう考える人もいることは分かっているし、もしかしたら私が思っているものとは違う意図で、その言葉を発したのかもしれない。
でもその時の私は、「この人はうつ状態の人に対して、ものすごく偏見があるんじゃなかろうか」と感じてしまったし、それを認識した瞬間に、そういう人に対しての思考も会話も全てをシャットダウンしてしまうらしかった。
あの時の先生、ごめんなさい。
だから、ちゃんと自分で認識して、ちゃんと自分で言葉にする。
私は低血圧で寝起きが悪い。しょっちゅう立ちくらみもする。
おまけに生理予定日の2週間前から終日眠くなる。どんなに沢山眠っても、寝起きの気だるさや頭がぼーっとする感じが1日中続いているイメージ。それに生理当日は、子泣き爺が腰に巻きついて動いてくれない感覚。痛い。重い。
こればっかりは女性同士でも全く違うから、いまいち理解してもらいにくいけど、昔から、1ヶ月のうちで「最高!元気!ハッピー!」なんて日は、ほんの1週間程度なもんである。
なんで体調をただ整えるだけの、いわばマイナスをゼロにする作業に、こんなにも負荷がかかるんだ。
しかも個人差がありすぎて、他の人の対処法を読んだところで参考になりゃしない。
結局自分の不調は自分でしか認知できないし、フィットする対処法も、自分で見つける他ないんだろうよなあ。
な、がんばれがんばれわたし。
がんばれがんばれ、皆。