便利グッズでクリボー打尽
いわゆる便利グッズというものを敬遠していた。
例えば、お米を研いで水を流すときに米粒が流れないようにするストッパー、味噌汁を作るときに味噌の量を測るマドラーなどだ。
限定的な場面でしか使わないものが多く、モノを増やしたくないため、買うまいと思っていた。”丁寧な暮らし”をする人の家にはなさそうだし。
ところが、酷暑でキッチンにいるだけで汗が止まらない。小型扇風機を最大風力にしても立っているだけでつらい。
少しでも調理時間を減らそうと久しぶりに千切りスライサーを使ったら、その便利さに驚いた。
5分くらいかかっていた人参の千切りがわずか1分足らずで終わってしまった。しりしりやラペにちょうどよい薄さとサイズ感、何よりこのスピード感は正義だった。
その後、わたしはあえて便利グッズを探した。
口コミを何十件も読んでから、冒頭の2点、米研ぎストッパーと味噌マドラーを購入した。
「主婦歴云十年ですが、もっと早く買えばよかったです」
まさに口コミの通りだった。
米研ぎ時に水を流すとき、わたしは米粒が数粒でも流れることをストレスに感じ、かなり恐る恐る水を切っていたことに初めて気付いた。
ストッパーのおかげで、なにも考えず釜を90度倒しても米粒が流れない。流れてしまう角度を知りたくて、あえて90度以上の「さすがにこれは無理でしょ?」という角度にしても流れない。
ちっちゃかったマリオがスターマリオになったときくらいの無敵感がある。
もうじりじりと向かってくるクリボー(米粒)に怯えながら進まなくていい。ストッパーをカチッ、水をザッと流して、米研ぎ終了!
味噌マドラーも「お玉と菜箸で十分。菜箸の方が味噌の量を調整しやすい」と思っていた。
違ったんですよ…味噌マドラーのすごいところは、味噌の溶かしやすさ!
これまで、なかなか溶けない味噌を菜箸の先でちょんちょんちょんちょん…と根気よく突き続けていたけれど、今は味噌マドラーを泡立て器のようにチャッチャと数回往復させるだけで溶け終わる。早い!
口コミを書いてくれた主婦歴云十年のかたに感謝したいし、わたしも実演して便利さを伝えたいくらいだ。
両方とも限定的な場面でしか使わないけれど、その場面は毎日必ず訪れる場面で、毎日食らい続けるストレスでもあった。
小さなストレスを侮ってはいけない。クリボーはもともといなければ、倒す必要すらないのだ。
モノは増えたけれど、今のわたしには少しでも調理時間を減らす方が重要だった。
パソコンやスマホのOSのようにアップデート通知は来ないけれど、わたしたちは日々進化・変化している。
何事も過去の考え方やイメージに固執して敬遠するのではなく、今の自分に合ったものを選び続けていきたい。むかし敬遠していたものが今ならスターになるかもしれない。
▼過去に執筆したリレーエッセイ(一部抜粋)
▼今回はこちらのエッセイを受けて執筆しました