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出会えてよかった本のこと


あまりに外が明るくて、暑いから
カーテンを閉めてひんやりうす暗い部屋で本を読んで過ごしている。
この暑さに身体だけでなく、心も疲れてしまっているようで、テレビや娘の好きなK-POPもうるさく感じる。
わたしのわがままで、部屋でずっと『ミッドナイト・スワン』のプレイリストを流している。
雨の日だけじゃなく、疲れた心にもピッタリだ。



斉藤 倫 『Poetry Dogs』がとにかくいい。
出会えてよかった。
何度も読み返している。



物語の中で「ぼく」は愛犬を失って、その三年前には友だちも亡くしていて、なんだか生きることに疲れてしまっているけれど、
不思議なバーでマスター(犬)から詩をつきだしとして出され、お酒とともに詩を味わっていくうちに、自分の中で「大切なものを失ってしまう」という感情と向き合って、最後には新しい人生を歩きはじめていく。


出てくる詩には、作られた時代も国も違うのに、
なぜか同じ空気が漂っていたりする。
詩は、目で追うだけではなかなか入ってこなくて、音読すると、頭に入ってきた。(英文もそう。口に出して読んだ方が頭に入る。わたしの場合は、だけど。だから2回目は声に出して詩を読んだ。)


この本を読むと、詩のあじわい方、
詩とは言葉だけじゃないこと、
詩は人だけのものでもないこと、
わたしたちの生きる世界そのものが、もはや詩であること、
詩を通してこの世に存在するとはどうゆうことなんだろうということまで、思いを馳せてしまう。
そして、「死」ということにも。


この本の世界に浸ってから、
「今、自分がいる場所」を改めて見てしまうと、不思議な気がした。
確かに足元がぐらぐらしてくる。
登場人物の「ぼく」のように。


詩だけじゃなくて、「ぼく」が感じていること、悟ったことが、なんかすごくいい。
世界って、存在することってこんなに素敵なことだっけ?
とても深い。
一つ紹介するけれど、本の至るところに散りばめられているから、本当は一冊丸ごと、紹介したいぐらいだ。


「最後なのに、なんだけど」
ぼくは、にがわらいした。「やっぱり、詩は、わからない」
だけど、胸は、なみうち、高鳴る。ある、と、ない、とが、けっしてべつのことではなく、こんなに、そばによりそっている。
ーなんてすてき

第十五夜 より



これからわたしはきっと出てきた詩の本をよむんだろうな。
斉藤倫さんの詩の本も。
出てきた魅力的な数々のお酒を飲んでみたいとも思っている。


わたしの中の新しい好奇心を呼び起こしてくれる本だった。


娘たちから、
「学校の勉強は大人になってから役に立つのか」と聞かれるけれど、
学校で学ぶいろいろな勉強は、
世界への入り口なんだと思う。
そこから自分のアンテナに引っかかるものを、どんどん深く追求していくと、
自分の血となり骨となっていくのさ(知識の)、と思う。
この本は、詩の世界の歩き方を教えてくれる。


わたしは、そうやって、死ぬまで生きたいな…
絵でも本でも人からでもいいけれど、
何かに出会って、心を魅かれたら、そのことをどんどん追求したりして、
自分の中身を豊かなものにしていきたい。
今は、まだ日常に追われて毎日が過ぎてゆくけれど…




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