君に贈る火星の【ショートショート】
「黒い歯は黒人さんからもらったの。3本線が縦に流れていて魔除け、ってことだと思う。土俗的な信仰なのかな。一生懸命何か話してたけど、音声が無くて、あ、私に感知出来なかったってこと。」
「白昼にはポーランド。今ショパンコンクール中でしょ。私の魂はすっかりそちらに向いてるからだと思うんだけど、神父さんが会いに来たの。ご挨拶がね‥、ねえ、聞いてる?」
彼の息づかいが不規則になっていくのを感じた。
髪を撫でた。
「火星の土はね、赤。シャルル・ドゥトワ指揮の火星は聴いてるよね。あのオケを超えられるの、何かある? スターウォーズ楽曲、火星のアレンジがあったよね。」
彼の腕に頬を寄せた。
数筋の香が立ち、波になって弧を描く。
「後世まで私達の名が語り継がれて、未来永劫遺るのよ。魂も保存するわ。魔導書、楽しみね。」
「君に贈る火星の土は、血色のルビーを含んだ鉱石群!あとの素材は秘密よ。君の復活祭、私うまくやってみせるわ。」
(410字)
書き終える頃に脳内で鳴り響いた楽曲を最愛のベルリンフィルの演奏で🎶 聴覚、五感、体全域に作用する楽器の音、フレーズ、掛け合い、聴き惚れてしまう一体感が言葉にならないので、ぜひ鑑賞を😌
さて、こちらは初めて書いたショートショートです。3年前の今時期に募集していた企画がありました。複数のテーマが並ぶ中「君に贈る火星の」に着目、着手。前半くらいまではすぐに書けたものの、仕上がらずにそっとそのまま放っておいたものに今回手を入れました。「まとまっているか、伝わるか、自分にしかわからないかも‥。」の緊張感を胸に、魔女とハロウィンの季節を私が楽しんだからOK、と出そうと決意🎃🍂当時の規定で字数は410字までとなっていました。ぴたり賞。