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詩作集

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#ポエム

世界の解は一つだけ
遡れないほど遙かから
定め置かれたこの公理

世界の解は一つだけ
僕らは随分早くから
悟り慄き焦りだす

世界の解は一つだけ
盾つき異を唱えることも
はた反証する術すらない

世界の解は一つだけ
受け入れられない僕たちは
やがて寓話を作り出す

世界の解は一つだけ
或いはどうにか変えようと
目に入る全てに手を伸ばす

世界の解は一つだけ
僕らの思考を嘲笑い
試行の全ては無へと帰

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君=

君さえ存在しなければ
生まれなかった争いが
嘆きが恨みが哀しみが
どれほどあったというのだろう

君さえ存在しなければ
世界はもっと穏やかに
やおら移ろい流れゆき
手を取り合ったことだろう

君が発する信号に
一縷の疑問も挟まずに
過去も現在(いま)も未来(これから)も
従い続けてゆくのだろう

怨嗟の狼煙は四方に上がり
やがて業火と成り果てる

焼き尽くされるその前に
気づくのだろうか僕たちは

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ひとり

透明な世界にひとり
僕は取り残されたらしい

何処までも澄ました空を見て
堪え切れずに大地が笑った

透明な世界で僕はひとり
膝を抱えて座り込む

百夜の星を掻い綰(わぐ)め
玉章(たまづさ)にして風にかけた

透明な世界の僕はひとり
答え合わせの旅に出る

潮(うしお)は万古の謎をうたい
深淵に投げ入れ蓋をした

透明な世界と僕はひとり
終焉の到来を希う

それを横目に太陽は
四肢を撫でると消え

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君は僕を詠う

君は僕の手を取って
奈落の底へ突き落した

僕は君を見上げ
勝ち誇ったように両手を挙げる

君は僕から目を反らし
ぎゅっと拳を握りしめた

僕は君との思い出に
サヨナラと呟き蓋をする

君は僕への報復か
身魂尽くまで叫び続けた

僕は君に押し当てる
落伍者という烙印を

君は僕を離さない
全てを糺し終えるまで

―――

目まぐるしく移り変わる空が運ぶ
突き刺すような陽の光も
不躾に染み込む雨も

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