泡沫蓮
透明な世界にひとり 僕は取り残されたらしい 何処までも澄ました空を見て 堪え切れずに大地が笑った 透明な世界で僕はひとり 膝を抱えて座り込む 百夜の星を掻い綰(わぐ)め 玉章(たまづさ)にして風にかけた 透明な世界の僕はひとり 答え合わせの旅に出る 潮(うしお)は万古の謎をうたい 深淵に投げ入れ蓋をした 透明な世界と僕はひとり 終焉の到来を希う それを横目に太陽は 四肢を撫でると消え去った 透明な世界を僕はひとり そっとこの手で抱きとめる 幾星霜の営みが巡り
世界の解は一つだけ 遡れないほど遙かから 定め置かれたこの公理 世界の解は一つだけ 僕らは随分早くから 悟り慄き焦りだす 世界の解は一つだけ 盾つき異を唱えることも はた反証する術すらない 世界の解は一つだけ 受け入れられない僕たちは やがて寓話を作り出す 世界の解は一つだけ 或いはどうにか変えようと 目に入る全てに手を伸ばす 世界の解は一つだけ 僕らの思考を嘲笑い 試行の全ては無へと帰す 世界の解は一つだけ 数多そびえる楼閣は なべて砂の上に立つ 世界の解は一
世の中に 惜まるる時 散りてこそ 花も花なれ 色も色なれ
夢とこそ いふべかりけれ 世の中に うつつあるものと 思ひけるかな
寝ても見ゆ 寝でも見えけり おほかたは うつせみの世ぞ 夢にはありける
何事も 夢まぼろしと 思い知る 身には憂いも 喜びもなし
この世をば どりゃお暇に 線香の 煙とともに 灰左様なら
いつ果てぬ 事も知り得ぬ この身こそ 浮世に遊び 夢を見果てむ 泡沫連 自作句
夏。キミの視線は熱を帯びる。飽きることなく顔を手足を日がな一日見つめている。私は真っ赤になり、生を感じる。
世の中は 夢かうつつか うつつとも 夢とも知らず ありてなければ
いくら鎖をかけたって 君の想いはとめどなく 溢れ流れていたらしい 思いの丈をそのままに そんな国から来た君は 猜疑心で満たされた 僕らの街で立ち尽くす 眉間に深いしわを寄せ 爪を腕に食い込ませ 必死に堪えていた君は 今どこにいるのだろう 紡いだ言葉で縄を綯い 首に巻いては飛び降りる 何度だって繰り返す 君が帰るその日まで
露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことも 夢のまた夢
夢よ夢 夢てふ夢は 夢の夢 浮世は夢の 夢ならぬ夢
君が為め 尽くす心は 水の泡 消えにし後は 澄みわたる空
結べども 又結べども 黒髪の 乱れそめにし 世をいかにせん 長州藩志士 吉田稔麿(1841-1864) 天保12年閏1月24日(1841年3月16日)長州藩生まれ。父は最下級士であった。安政3(1856)年、吉田松陰の松下村塾で学び、高杉晋作、久坂玄瑞とともに松下三秀といわれた(入江九一を加えて松門四天王と称されることもある)。師・松陰の刑死後、万延元(1860)年脱藩し江戸、京都にて活動。文久3(1863)年、奇兵隊に入隊。同年7月には藩から士籍を与えられ、屠勇隊を組織
未来行きの急行は いつの間にやら普通に変わっていた お尻が痛くなったから 途中下車して歩いてみることにした 思いのままに、そのままに 目的地なんてもうとっくの昔に忘れてしまった