サーモンの刺身ディル添え チリ産ロゼ・スパークリングワインとサーモンピンクカラーの調和
これまで刺身のサーモンやスモークサーモンにはいろいろとワインを合わせてきた。サーモンは一年を通してスーパーに並び、子供も喜んで食べるので登場頻度が高い。特にワインとの相性の良さで印象に残っているのは、香草がほんのり効いた肉厚のスモークサーモンに合わせたチリ産ソーヴィニョン・ブラン。五つ星。このほか、相性で四つ星以上のものをピックアップするとこちら。
香草ほんのり肉厚サーモン 機上でチリ産ソーヴィニョン・ブラン
タラパカ グラン・レゼルヴァ ソーヴィニョン・ブラン レイダ・ヴァレー
相性: ★★★★★
サーモンの刺身ディル添え 樽発酵の甲州ブドウの滋味
相性: シャトー・ルミエール, 光, 甲州 山梨, 2020, 3,658円
相性: ★★★★☆
サーモンのディルマヨネーズ添え エトナ火山のミネラル豊かな白ワイン
クズマーノ, アルタモーラ, エトナ ビアンコ, カリカンテ イタリア, 2020, 2,464円
相性: ★★★★☆
サーモンの刺身にディル入りマスタードマヨネーズ 正統派ヴーヴレ・スパークリング
ドメーヌ・デュ・プティ・コトー, ヴーヴレ・メトッド・トラディショナル, 2,970円
相性: ★★★★☆
オリーブオイルとハーブほんのりサーモン 春めくペリエ・ジュエ ロゼ
相性: ★★★★☆
機上でスモークサーモン まだまだ果実味パワフル16年熟成ロゼシャンパン
ジョセフ・ペリエ ロゼ, 2006
相性: ★★★★☆
今回はサーモンの刺身にディルを添え、オリーブオイルをたっぷりかける。
合わせたのはチリのロゼ・スパークリングワイン(ピノ・ノワール品種)に加えてイタリアの白ワイン3種。シチリア島のグリッロ品種、サルディーニャ島の希少トルバート品種、リグーリア州のヴェルメンティーノ品種に。特に、サーモンピンクのロゼ・スパークリングワインが見た目にも美しく調和。そして黒ブドウのフレーバーはサーモンの脂をしっかり捕まえて離さない。
ちなみにスパークリングワインといえば、先日のWBC優勝の際のシャンパンファイト。シャンパンファイトとはいえ、使用されたのはシャンパンではなくアメリカ産のスパークリングワイン。1882年創業のコーベル社製のもの。フランスのシャンパン地方で造られ、瓶内二次発酵製法などの規定を満たさなければシャンパンとは呼称できないが、アメリカで同じ製法で造られたもので、オバマ大統領の就任昼食会でも提供された。シャンパンはたいてい一本5,000円を超えるが(ドンペリはスタンダードのもので小売価格で2万円前後、長期熟成されたものは10万円超)、こちらは一本2,200円前後。100本が用意されたとので22万円。大谷選手の2023年の年棒が3000万ドル(約40億円)とあって、ささやかに感じるが、ほとんど飲まれずにものの10分ほどで全てスプラッシュするお祭り用なので、高級シャンパンではもったいない。それでも日本式にビールかけとはいかないのがアメリカ流。ちなみにF1のシャンパン・セレブレーションはイタリア トレンティーノ・アルト・アディジェ州フェラーリ社がスポンサー(2021年から3年契約)。フェラーリのスパークリングワインは3,000円台で買えちゃう(車のフェラーリとは経営などに直接的な関係はないが、オシャレなエチケットと質の高い味わいに気分はなんとなくフェラーリ!)。
さて、サーモンの刺身ディル添えと、それぞれのワインの相性について。
コノ・スル, スパークリング・ワイン, ロゼ, チリ, ビオ・ビオ・ヴァレー, 825円(スーパーで特価で購入)
Cono Sur, Sparkling Wine, Rose, Bio-Bio Valley, Chile
Cono Sur とは「南向きの円錐」という意味。その地理的な場所を表すとともに、世界最南端の地で表現豊かで革新的なワインを造るという気概の表れ。1993年設立。
オレンジが強く入ったサーモンピンク。持続的な泡立ち。
香りには快活なチェリー香。ビスケットや食パンの香ばしさやイースト香はどこか上級のロゼ・シャンパンを思わせる。が、余韻の奥に少々甲高い植物的なニュアンスあり。
味わいは瑞々しく伸びやか、快活でチャーミングな果実味。的確にワインを引き締める酸味。余韻にはビターネスとこうばしさが続き充実のフィニッシュ。若干抽出が多い印象だが素晴らしいコスパ。
サーモンの刺身ディル添えにワインを合わせる。口当たりは淡白ながら、ジンワリと広がる脂は立派なサーモン。ロゼの黒ブドウのフレーバーが、サーモンのどこか樹木を思わせるような風味を寄り添い、そして魅力的に際立たせる。厚みのある脂には黒ブドウのキュッとしたタンニンの渋みが当たり中和されて昇華。フルーティな香りのオリーブオイルとの繋がりも良し。相性: ★★★★☆
ドンナフガータ, スルスール, グリッロ, イタリア, シチリア
Donnafugata, SurSur, Sicilia, DOC, Grillo, 2021, 13%, 約3,000円
ドンナフガータ社のオーナーは何世代にも渡って酒精強化ワイン、マルサラワインの生産に携わってきた由緒ある家系。
「ドンナフガータ( 逃げた女 )」という名は、19世紀初頭にブルボン朝の王の妃が、ナポリで起きた革命を逃れて、現在のドンナフガータ社のある土地へ逃げてきたという歴史にちなんだもの。
香りにはグレープフルーツ、レモン、ライムの爽快な柑橘香。柑橘果皮のビターなニュアンス。典型的な南の緩いワインとは一線を画すフォーカス。海岸の潮風、レモングラスも。
味わいには瑞々しい果実味。冷えた状態では酸味が締まり的確なフォーカス(温度が上がり緩くなるのもまた魅力)、キュッと効いた塩味、余韻にはグリップのあるほろ苦さ。
サーモンの刺身ディル添えに。脂はしっかりとしているが、軽い風味のサーモンに、ワインの潮の香りは持てあまされてしまう。このワインは魚の磯の香りや個性を魅力的に引き出してくれるので、それが発揮されずもったいない。相性: ★★★☆☆
ルナエ, エチケッタ ネーラ, コッリ・ディ・ルーニ, ヴェルメンティーノ, イタリア, 3,729円
LVNAE, Etichetta Nera, Colli di Luni
Vermentinoトスカーナ州とリグーリア州の境にワイナリーと畑をもつ。コッリ・ディ・ルーニは両州にまたがる産地の呼称。ワイナリー名のルナエの由来はラテン語の「Lunae(月)」。古代ローマ時代、ワイナリーの土地の近くに「Luna(イタリア語で月)」という名の町があり、高品質なワインを造っていたことにあやかった。
ブドウは9月半ばに手摘みで収穫。24-36時間コールドマセラシオンした後にプレス。
ステンレスタンクで定温下(15-17℃)で発酵。
香りにはフレッシュなグレープフルーツ、レモン、ライムの活力のある柑橘香が溢れる。軽快で繊細にハーブと潮の香りが絡みワインをエレガントの極みに。
味わいには瑞々しくのびやかな果実味。シャープでメリハリの効いた酸味、余韻にはグリップ感のあるほろ苦さが残り様々な表情がエレガントに。
サーモンの刺身ディル添えに。一つ前に合わせたイタリア シチリア島のグリッロ品種よりは軽めの仕上がりで、ボリューム的にはサーモンの軽快な風味に寄り添う。が、それでもやはり魚の風味の押し込みがないと、シーフードによく合うヴェルメンティーノ品種の魅力を持て余す。相性: ★★★☆☆
セッラ&モスカ, テッレ・ビアンケ, トルバート アルゲーロ, サルディーニャ, イタリア, 2020, 1,638円
Sella & Mosca, Terre Bianche, Alghero Torbato, Sicilia, Italy, 2020, 12.5%
“テッレ・ビアンケ”は「白い大地」という意味。石灰質の多い白い畑に由来。
色調は鮮烈なゴールド。
香りにはグレープフルーツ、ライム、グレープフルーツの果皮。微かにハーブやほしわらの植物的なニュアンス。ポジティブに酸化的ニュアンスも。グラスを回すとマルメロ、黄色い花も豊かに、潮の香りがふわりと。
風味には果実味はやや控えめでほろ苦さ、塩味やミネラルのニュアンス。突出した個性はないがバランスに優れ、磯の香りに穏やかに包まれるようなワイン。開栓から1ヶ月が経過したが、風味の崩れが限定的。程よい酸化で異なる表情を見せてくれる。
サーモンの刺身ディル添えに。ワインの中庸、穏やかな果実味がふわっとサーモンを受け止める。安定感あるが期待以上のシナジーや印象に残る魅力はない。相性: ★★★☆☆