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ころっぷ
2024年1月31日 20:27
1 ちびた鉛筆を最後まで使う為のキャップを、私はその時初めて見た。シルバーの金具に小指の先位になった鉛筆が差し込まれている。斜めに傾げたちゃぶ台の上、インスタントコーヒーの空き瓶の中にそれが無造作に3本突っ込まれていた。初めて寺岡泡人(ほうじん)のアパートに行った時、暖房器具の一切無い冷え切った部屋で私は、その寂しげに光るシルバーのキャップをずっと見詰めていた。
寝袋男
2024年1月31日 18:02
それは、中年の痩せた男が大木に背中を預け、立っている様な絵だった。何故"立っている"ではなく、立っている"様"なのかと言えば、その男が既に死んでいるからだ。題名は『遺体』。その男の胸にはナイフが深く突き刺さっており、そこから赤い筋が白いシャツの裾に向かって流れ、ズボンにまで伸びている。シャツの上に描かれた顔には絶望からの弛緩が見て取れた。静的だが、インパクトのある絵だ。嫌に生々しく、リアリティ