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歩くと骨盤周りの筋肉がだるいのは小殿筋が弱いのかも!?

今回は「股関節の安定性」に関わる小殿筋(しょうでんきん)のお話をしていきます。

股関節が安定しないと、歩くときにフラついたり、腰や膝に負担がかかって痛みが出ることもあります。特に女性は股関節が不安定になりやすいと言われていて、実際に「股関節がグラつく感じがする…」という方も多いんじゃないでしょうか?

そんな股関節の安定に欠かせないのが小殿筋。
実はこの筋肉、日常生活では意識しづらいけど、立っているときや歩いているときにしっかり働いてくれています。今回は、「小殿筋ってどんな働きをするの?」というところから、実際に不安定な場所に立ったときの筋活動の変化について解説していきます!


そもそも小殿筋ってどんな筋肉?


小殿筋は、お尻の奥の方にある筋肉で、中殿筋(ちゅうでんきん)という筋肉のさらに内側にあります。役割は股関節の安定。特に、片足で立ったときや歩くときに骨盤が傾かないように支えるのがポイントです。

青色が小臀筋



小殿筋がしっかり働かないとどうなる?


もし小殿筋の力が弱かったら、歩くときに骨盤がグラついてしまい、「トレンデレンブルグ歩行」といってフラフラと左右に揺れるような歩き方になってしまうことがあります。

また、股関節が不安定になると、
• 膝や腰に余計な負担がかかる(→痛みの原因に)
• 骨盤の位置が崩れる(→姿勢が悪くなる)
• 歩き方が不安定になり転倒リスクが上がる


…といった問題が出てきます。特に、変形性股関節症を持っている人や、股関節が浅い「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」の人は、小殿筋がしっかり働くことがとても大事になります!


研究でわかった!不安定な環境での小殿筋の働き


「じゃあ、小殿筋ってどんなときにしっかり働くの?」
それを調べた研究があります。

どんな研究?

対象になったのは、22歳前後の健康な男女13人(男性7人・女性6人)。この人たちに片足で立ってもらい、小殿筋と中殿筋の筋活動を測定しました。

しかも、片足立ちをする環境は3パターン。
1. 平らな床の上(安定した環境)
2. バランスパッド(AIREX®)の上(ちょっと不安定)
3. 半球型バランスボール(BOSE®)の上(かなり不安定!)


この3つの環境で小殿筋がどれだけ働くのかを調べました。


研究結果:小殿筋はどれくらい働いた?


結果をざっくりまとめると、

不安定な環境(BOSE®の上)ほど小殿筋が強く働いた!
特に女性のほうが小殿筋の活動量が高かった!

つまり、女性は男性よりも股関節が不安定になりやすいため、より小殿筋の力を使ってバランスを取っていたんですね。


なぜ女性の方が小殿筋の活動が高かったの?


実は、男性と女性では股関節のつくりが違います。

女性の股関節の特徴
1. 骨盤が広い → 股関節の角度が変わるため、安定性が低くなりやすい
2. 股関節の被覆(骨盤のくぼみに入る部分)が浅い → 骨がしっかりはまらず、グラつきやすい
3. 重心の位置が異なる → 片足立ちをしたときのバランスが変わる


つまり、女性はもともと股関節が不安定になりやすい構造をしているため、小殿筋の働きをより必要としているんです!


股関節を安定させるためのトレーニング3選!


では、股関節の安定性を高めるために、小殿筋を鍛えるトレーニングを紹介します!

① 片脚立ちトレーニング(30秒×3セット)

バランスを取るだけで小殿筋が働きます。できる人はクッションやバランスパッドの上でやるとより効果的!

② サイドレッグレイズ(10回×3セット)

横向きに寝て、上の脚をゆっくり上げ下げ。股関節の外側を意識!



③ バンドを使ったウォーク(20歩×3セット)

足首にゴムバンドを巻いて、横歩き。
→ 小殿筋をしっかり刺激できる!

これを週3回やるだけで、股関節の安定感が変わってきます!


まとめ


今回の研究では、不安定な環境ほど小殿筋が活発に働くことがわかりました。特に女性は股関節が不安定になりやすいため、小殿筋をより活用していることも判明!

小殿筋は股関節の安定に重要な筋肉!
女性は特に股関節が不安定になりやすいので、小殿筋を鍛えることが大切!
片脚立ちやサイドレッグレイズで小殿筋を鍛えよう!

股関節の安定性を高めることは、腰痛や膝痛の予防にもつながります。
「最近歩くとフラつく…」「股関節がグラグラする感じがある…」という人は、ぜひ小殿筋を意識したトレーニングを試してみてください!

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参考文献
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補足
本記事は「不安定面における小殿筋筋活動の分析」に関する研究(室伏祐介, 川上照彦, 伊藤創. 理学療法科学, 34(6): 731-734, 2019)を参考に執筆しました。研究の詳細については、元論文をご参照ください。

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