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人材採用が進まず、危機感ばかりが募ります~既存社員へのインタビューから始めましょう

今回の相談は「人材採用で悩んでいます。社員の高齢化により技術の承継は急務ですし、そもそも人手不足で、思ったような人材が採用できてきませんでした。危機感ばかりが募りますが、取っかかりをつかめないでいます。どこから手を付けるのがいいでしょうか」。東京都八王子市で製造業を営む40代社長さんからの相談です。

人材採用がままならなければ、企業の存続自体が危うくなります。ファミリービジネス事業承継研究所代表で、日本ファミリービジネスアドバイザー協会フェローの大山美和さんがお答えします。

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#社員インタビュー
#業務フロー改善
#「深化」と「新化」

に課題を感じている方々にお薦めです。

人手不足なときこそ、対話をしよう

人手不足で忙しくて、てんてこ舞い。早く人を雇わなければと、焦りばかりが募っているご様子です。

ここは、人手が足りないからといって、人材採用を慌ててはいけません。成功する人材採用には、まずしっかりした準備が不可欠です。

まずは、忙しい時ほど、社員さんたちとじっくり対話をしてみてください。社員それぞれがどのような悩みを抱え、会社に対し、どんな希望を持っているかを知る。そこにヒントがあります。

社員さんたちの心のつかえを取り除くことで、会社への貢献意欲や仕事の効率がアップするものです。

役割やフローを可視化してみよう

現場からは人手が足りない、売り上げを上げたいけれども、技術者も職人も足りない、営業も足りない、とぼやきが聞こえてくると思います。

社内で何が起こっているのか。まずは、社員それぞれが具体的にどのような役割と工程を担っているのかを聞き取り、会社全体の工程フローと各人の役割を可視化してみましょう。

各部署・各社員が、どのような業務や作業を、どのような役割で、どのような工程や期日でおこなっているのか、個々人にインタビューしながら具体的に把握していきます。

製造業ですと、仕入れ、加工・製造、品質管理、梱包(こんぽう)・運送、営業・販売、管理(総務・人事・経理など)の役割がありますね。それぞれの部署で、社員それぞれが具体的に、いつ、どのような業務や作業が発生し、対応しているのかをつぶさに把握して、一連の業務の流れを図やチャート化してみましょう。

可視化から改善ポイント発見!

可視化された業務のフローや各人の役割を見ると、各部署で同じような作業や情報把握を別々にしていることもよくあります。

他にも、フローを可視化すると、製品完成までの工程に、無駄な人や物の動き、非効率な動線や工程が見えてきます。省略可能な動きや工程は見直しましょう。

重複があるようでしたら、共有するなどしてその重複を取り払い、会社全体として効率の良い仕事のフロー、情報伝達のフローを作っていくことができます。

「宝もの」を社員インタビューから深堀りしよう

社員さんたちにそれぞれの仕事のお話を聞く時のポイントがあります。
私どもが心掛けていることとして、

  • その社員さんが、現在の会社で、どんな役割の仕事をしているのか

  • 前職を含め、過去にどのような経験や実績があるのか

  • その中から、具体的に現在の会社でどんなことができそうなのか

を聞き取っていきます。

時には、学生時代に学んできたことやプライベートな活動についても聞きます。こうした中に、これからの経営に役立つ「思わぬ宝」が眠っていることがあるからです。

社員さんたちの業務の棚卸しをし、それぞれの強み、潜在的な強みを含めて、その「宝もの」を引き出し、整理をしていきましょう。

企業が永続するための二つの「進化」と人材

日本は世界一の老舗企業数を誇ります。老舗企業の長寿の秘訣(ひけつ)として、実は常に経営改善やイノベーションを起こしているということがあります。

本業をさらに磨き改善していく進化(深堀りする深化)と、後継者などが新たな事業を起こす進化(新化)を行っているのです。
永続する企業になるために、

  • 会社としてどう本業の深掘りをしていくのか

  • さらに、新たな事業を起こすとしたらどんな戦略を立てていくのか

この二つの軸について、これからの会社の方向性、羅針盤となる方針を決めましょう。

その方針を支えて実現していくのは、言うまでもありませんが、人材です。将来の会社の発展に欠かせない「既存の本業をどんどん改善していける人材」と、「新しい分野でイノベーションを起こす人材」の両方を発掘していきましょう。

未来の事業のために社員の「役割」を引き出そう

先ほどの業務フローの効率化を実現すると、社員さんたちは時間がもっと有効に使えるようになり、新たなことにチャレンジしたり、何らかの新しい役割を生み出したりすることに、多くの時間を割けることになります。

その社員さんたちの専門分野に、前職の経験やプライベートの活動なども掛け合わせることで、専門職としてだけではなく、社内の連携を促すなど「広範なプロデュース」を新たな役割とする社員さんも出てきます。

社員さん個々人の資質については、普段の仕事ぶりだけでは把握しきれない面も多いものです。

社内でそれぞれの力を見極めることに加え、外部人材の力も借りてインタビューや診断ツールなどを活用しながら、社員さんたちの能力や新たな役割を引き出していくことも、考えていただきたいポイントです。

「チャンスの採用」を始めよう

ここまでをまとめると、この会社の人材採用を成功させるためには、

  • まず会社の中の業務フローや各人の役割を可視化する

  • 社員さん個々人の能力や経験、リソースなどのポテンシャル(潜在力)を整理する

  • その上で、会社の戦略に照らして、社員さんたちがどんな役割を果たしていくといいのかを見極める

ことが大切になります。

会社の戦略は、会社の業務フローを整える中で、本業を深堀りして、さらに効率化する方向(深化)と全く新しい分野の事業を立ち上げる(新化)があります。

深化と新化のそれぞれに対して、社内から適切な人材を見いだし、その社員さんたちにチャンスのバトンを渡してください。

もしも今、社内に適切な人材が見当たらないのであれば、外部からの採用を検討することになりますが、まずは自社の深化と新化を図っていく上で、「自社に足りない」「これから必要になる」と思われる人材像を明確にすることが必要です。

経営者さん自身が、どんな人材を採用したいのかしっかり検討してから取り組むことで、適切な人材の獲得に注力できると思います。

強化していきたい事業・部署に人材を手厚く

新しい事業分野に注力するということでしたら、その分野の業務経験や人材コネクションを持つ人に入っていただくことが大切です。

ご相談のように、社員が高齢化して技術の承継ができない、あるいは人材採用に悩むときには、むしろ経営戦略そのものの見直しが必要になっていると考えられます。少なくとも、そうした状況に差し掛かっているということを理解していただきたいと思います。

そうした中で、私どものような経営戦略コンサルタントとともに未来に向かって経営方針を見直し、それを起点として人材採用を進めてはいかがでしょうか。ご質問者の会社の未来が発展していくように応援しております。

回答者・大山美和さん

ネクストステージ・コンサルティング 代表
ファミリービジネス事業承継研究所 代表
日本ファミリービジネスアドバイザー協会 フェロー

企業の生死を懸けた事業再生から、日本企業が世界にチャンスを築く海外進出支援まで、企業の復活から成長育成支援に従事。企業の経営戦略と財務支援に関わるなかで、ファミリービジネス(FB)の社長や後継者の壮絶な試練や、V字回復するFBの底力を目の当たりにする。「日本の経済復活は地域創生にあり、その原動力は地域をけん引するFBの持続発展である」をモットーに、FBコンサルティング支援に多く関わり、企業の事業再構築や第二創業等の価値向上と永続のための包括的なFB事業承継、経営革新ナビゲートに力を注いでいる。
共著に「MBAエッセンシャル講座 経営戦略」他。雑誌連載多数。明治大学専門職大学院等で教壇に立つほか、セミナー・講演実績多数。

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