【日記】彩りにオクラ
鶏胸のひき肉と卵で、
そぼろご飯弁当を作ってみた。
別に美味しい。
普通に美味しい。
しかし、率直に一言で美味しいと、
言わせてくれない何かがあった。
満足感に今ひとつ欠け、
頭は物足りない寂しさで埋まる。
どうすればいいか。
冷蔵庫のオクラと目が合った。
オクラは訴えてきた。
「僕がいるじゃん」
「でも、面倒臭いんだよ、お前使うの。茹でなきゃいけないし、切ったら粘つくし……」
「そのひと手間で弁当は見違えるんだよ」
「そんなに変わらないと思うが」
「騙されたと思って、入れてみてよ」
こうして、私は彼をお弁当に入れた。
茹でて、細かく切って、
そぼろの上に撒いた。
緑色の小さな星が、
お弁当へ無数に広がった。
殺風景が殺された。
ミネラル、ビタミンが、
新たに加わった。
「美味しい」
率直に一言で言えた。
「でしょ?」
オクラの声が聞こえた。