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量子力学を超えて:ハイゼンベルク『部分と全体』が照らす、科学と人間の深淵

こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

今日はハイゼンベルクの本を紹介!

科学に詳しかったり、物理に少しでも知識がある人は、誰でも知っている名前かと思います。

ブレイキング・バッド』のウォルターが、裏の社会で使った名前としても有名です。

量子力学の創始者の一人として、20世紀の科学史に燦然と輝くその名は、物理学の世界を超え、哲学、思想、そして社会にも大きな影響を与えました。

彼の著書『部分と全体』は、単なる科学書ではありません。

ハイゼンベルク自身の回顧録であり、量子力学の誕生秘話、同時代の天才たちとの知的交流、そしてナチス政権下における科学者の苦悩など、激動の時代を生きた彼の生涯と思索が凝縮された、重厚な一冊です。


不確定性原理の誕生:物理学の常識を覆した革命

ハイゼンベルクは、この本の中で量子力学の創成期における自身の経験を描き出しています。

彼がどのようにして不確定性原理にたどり着いたのか、その過程は、読者も知的興奮を共有できるほどスリリングです。

従来の物理学では、粒子の位置と運動量は同時に正確に測定できると考えられていました。

しかし、ハイゼンベルクは、原子レベルの世界ではこの常識が通用しないことを発見します。

粒子の位置を正確に測定しようとすると運動量の測定精度が落ち、逆に運動量を正確に測定しようとすると位置の測定精度が落ちる。

この不可思議な現象こそ、ハイゼンベルクが発見した「不確定性原理」です。

不確定性原理は、物理学の世界に革命をもたらしました。

それは、客観的な観測という概念を揺るがし、人間の認識の限界を突きつけるものでした。

ハイゼンベルクは、この原理を通して、自然を理解するとはどういうことなのか、そして人間の認識能力の限界はどこにあるのか、という根源的な問いを投げかけています。

天才たちの饗宴:20世紀科学史を彩る巨人たちとの交流

この本、魅力の一つは、ハイゼンベルクがアインシュタイン、ボーア、シュレーディンガーといった、20世紀を代表する科学者たちとの交流が書かれている点です。

アインシュタインとの鋭い議論、ボーアとの深い友情、パウリとの率直な意見交換…。

いまじゃ絶対書けない本と言われている理由はそこにあります。

特に、アインシュタインとの対話は、本書の中でも重要な位置を占めています。

アインシュタインは、量子力学の確率解釈に最後まで反対し、「神はサイコロを振らない」という有名な言葉を残しました。

ハイゼンベルクは、アインシュタインとの対話を、量子力学の哲学的な意味合い、そして科学における客観性と主観性の問題について深く考えるようになります。

科学と社会:原子爆弾開発とナチス政権下の苦悩

ハイゼンベルクは、量子力学の研究だけでなく、原子爆弾開発にも関わっています。

第二次世界大戦中、彼はドイツの原子力研究を主導しましたが、その真意は今もなお議論の的となっています。

ハイゼンベルクは、本当に原子爆弾を開発する意思があったのか、それとも意図的に開発を遅らせていたのか。

本書では、ハイゼンベルク自身の言葉を通して、当時の状況、彼の葛藤、そして科学者としての責任について赤裸々に語られています。

また、ハイゼンベルクは、ナチス政権下における科学者の苦悩についても触れています。

ユダヤ人科学者の追放、学問の自由の制限、そして戦争への協力…。ハイゼンベルク自身も、ナチス政権から厳しい監視を受け、身の危険を感じていました。

彼は、この困難な状況の中で、どのようにして科学者としての良心と尊厳を守り抜いたのか。その苦悩と葛藤は、読者に深い感銘を与えるとともに、現代社会における科学者の責任について改めて考えさせるものがあります。

『部分と全体』が示す未来への道標

『部分と全体』は、単なる科学史の記録ではありません。ハイゼンベルクが生涯をかけて探求した「部分と全体」の関係、そして科学と人間、社会との関わりを読み解くことで、現代社会における科学の役割、そして人間の存在意義について深く考えさせられる作品です。

科学技術が急速に進歩し、世界が複雑化する現代において、ハイゼンベルクの思想は、私たちに生きるヒントを与えてくれます。

科学は、人間にとってどのような存在であるべきなのか。科学者は、社会に対してどのような責任を負うべきなのか。そして、私たちは、科学技術とどのように向き合っていくべきなのか。

『部分と全体』は、これらの問いに答えるためのヒントを与えてくれる一冊だと思います!

ぜひ読んでみてください!


【編集後記】
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