[イベントレポ]伝統の新しい形 VOL.2 東京から生まれた和紙の新たな世界
シェア街のdentou庵主催のオンラインイベントで「東京和紙」の篠田さんをお招きして話を伺った。
イベントの流れは、まず篠田さんが和紙の作り方を写真を交えながら教えてくださり、それから和紙で作られている製品の紹介(折り紙や座布団も!)、そして質疑応答といった感じだった。また所々で篠田さんから、和紙にまつわる質問が投げかけられ、参加者がチャットで応えていくこともあった。
話した内容の詳細については、篠田さんがブログでまとめてくださっているのでここでは割愛。ここでは篠田さんの話をお聞きして感じたことをいくつかあげていく。
「ここ1年間で和紙に触れたことがありますか?」と聞かれて
私は思い当る節が無かったので“いいえ”と答えた。チャットの解答を見ると“はい”と“いいえ”がだいたい半分くらいだったと思う。それをうけて篠田さんは「みんなもっと触っているはず」と話す。何だろう?私の和紙のイメージは紙漉きのように手作りによるものだったのだが。
その後、和紙が使われている事例としてあげられたのがお札。日本のお札は偽造防止の観点から和紙でつくられているとのこと。なるほど、それならいつも触っている。気が付かないうちに和紙に触れているのか。
そもそも和紙は大量生産できるのかということを知らなかった。“はい”と答えた人は紙すき体験、懐紙、名刺、障子などをあげていた。
製造は全て手作業!
東京和紙では全ての工程を手作業で行っているそうで、特に繊維をほぐすために叩く工程は機械なら15分でできてしまうことを、2時間ほどかけて行っているという。さらに化学漂白はしていないため真っ白にはならず、和紙の原料である楮(こうぞ)本来の色が和紙にでているとのことだった。
野菜やおみくじを入れた和紙
東京和紙の製品のひとつとして紹介いただいたのが野菜入りの和紙。最近の飲食店などの休業などにより、廃棄になってしまった野菜を混ぜ込んで、独特の色合いが入ったものに仕上がっていた。
また、おみくじ入りの和紙ということで、近隣の寺社から役目の終えたおみくじを貰い受けて、それを混ぜて製品をつくっていた。紙のところどころにおみくじの文言が入っていておもしろいし、何だか持っていると運気がまわってきそうな気がした。
和紙製品のレパートリーの多さ
「和紙でどんな商品があって欲しいか」という篠田さんからの質問に対しては、参加者それぞれが色々な商品をあげた。水引や名刺やパスケースや鞄などは既に商品としてあるそうで、他社では洋服を和紙で作っていたり、家具の一部や食器として用いたりもするそう。
今のところサンプルで酒器を作っていたり、防水のエプロン、さらには和紙を食べるワークショップや、和紙の原料を再利用した楮茶をつくっているとのこと。和紙の用途の多様さに驚いた。
和紙が注目される地域、国は?
現在、和紙に注目しているのは海外、特に欧米の人が多くて注文も多いとのこと。篠田さんはこれまで、アメリカ・カナダ・スウェーデン・オーストラリア・イギリス・フランスなどでワークショップを行い、あっという間に予定人数が埋まった。そして1年くらい経ってから「あのとき作った和紙を今でも大切にしています」というメールを貰ったりもしたそう。
イベントを通して
様々な和紙で作られた製品があることを知った。イベントの後半で篠田さんは「様々な和紙の製品を用意していて、発信しているので、多くの人にもっとアンテナを張ってもらって、情報を受け取って欲しい」とおっしゃっていた。
和紙職人を取り巻く状況は厳しいようで、篠田さんの知り合いの日本酒のラベルを作る職人の方が、ここ1年くらいで仕事を失ってしまったということだった。そういえば私は、旅先で購入した日本酒のラベルを集めるのが好きだ。ラベルが全部和紙という訳ではないと思うが、それをふまえると私も和紙には、頻繁というほどではないものの、触れていたということに気が付いた。
良くいえば、意識しないくらい私達の暮らしのなかに和紙が根付いているとということとなる。けれど、やはり古くから受け継がれてきたものを絶やさないためには「今、手に持っているものがどのようなものなのだろう?」というような、疑問や興味を持つことが大切なのだと感じた。