#51 やさしい世界になりますように
小川糸さんの作品は何作か読んでいる。
『ツバキ文具店』シリーズはもちろん、『ライオンのおやつ』『食堂かたつむり』『つるかめ助産院』などなど。
優しい雰囲気で包まれている作品が多いのだが、時に現実の厳しさや生きることの尊さというのを強く感じられる。
今回読んだ『にじいろガーデン』はまさにそんな作品だった。
出てくる登場人物は優しいけれど、残酷な現実を描いている作品である。
『にじいろガーデン』はこんな話
夫と離婚間近だった高橋泉は、ある日、駅のホームで線路に面と向かっている女子校生千代子を見つけ、とっさに声をかけた。
自分の命を絶とうとしているように見えたからだ。
その夜を境に、泉と千代子の落ちかけていた人生が前に進み始める。
泉の息子・草介と3人での駆け落ち——
新しい家族の誕生——
全ての人を受け入れることを目指して始めたゲストハウス――
ゆったりとした時間の中で、人生の多様性を描いていく作品。
嘘をついて生きたくない
この作品のテーマの一つは「マイノリティ」だと思う。
千代子はレズビアンで、泉も彼女と出会ったことによって自分がレズビアンであることを自覚していく。
泉と千代子の愛情が燃え上がり、草介と共に元いた街を離れて、冬の寒い村である通称・マチュピチュ村に行き着く。
その村で借りたオンボロの家に、千代子はあるものを掲げたのだ。
レインボーフラッグである。
LGBTQを象徴する旗とされている。
千代子は自身がレズビアンであることを両親に公言して、とても卑劣な言葉を浴びせられたのだ。
だから、この村でなら、レズビアンである自分は堂々と生きていける。
そんな思いで掲げたのである。
しかし、その旗が裏目に出て、「お鍋」を庭に投げ捨てられるという悪戯が繰り返される。レズビアンであることを馬鹿にした悪戯だ。
その事態に、泉は千代子に言う。
その言葉を皮切りに大喧嘩になる。
マイノリティであることを隠したい泉。それに対して千代子は言い返す。
そして、掴みかかる勢いで放った言葉。
シンプルだが、生きづらさを象徴するセリフだと僕は思った。
マイノリティにかかわらず、生きづらいときというのは何かしら嘘をついているときなのだと思う。
嘘をつかなければ、周りから奇異な目で見られるから。
だから本当の自分を隠して生きていかなくてはならない。
それって、本当に生きているって言えるのだろうか。
たった一度きりの人生なのに、本当の自分を出せないなんて。
それなら死んでいるのと変わらないのではないか。
嘘をつかなきゃ生きられない世界なのであれば、僕だって生きたくない。
だけど、生きている以上、そんな価値観を変える努力はしたい。
全ての人の考え方を、生き方を理解できる人間になりたい。
そう強く感じさせられた作品だった。
世界がやさしくなってほしい
まだまだ性的マイノリティをはじめ、少数派の生きづらさへの理解というのは浅い段階ではあると思う。
マイノリティでいえばHSPもその部類だろう。5人に1人と言われているのだから、十分少数派である。
HSPの人と話すと大概、自分のことを理解されないとか「そんなの皆同じだよ」と言われたことで複雑な気持ちになったという経験をしている。
種類は違えど、辛いのは皆同じ、かもしれない。
けれど、その種類の違いが問題なのだと僕は思う。
どんな種類の辛さを抱えている人でも、嘘をつく必要のないやさしい世界になっていってほしいと強く願う。
もし僕がこうして文章を書くことによって、ほんのちょっとでもそんな世界に近づかせることができるのであれば、全力で文章を書いていく。
そのためには、たくさん本を読み、たくさん行動をしていこう。
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こんにちは、立竹落花です。
今回、初めて小説の感想記事を書いてみました。
過去の記事にも書きましたが、僕は小説が大好きです。
が、感想を述べるということに苦手意識を持っていました。
それを変えるべく始めたのがX(Twitter)でした。
読書好きな方々の読了ポスト……とにかく興味をそそられます!
僕もそんな偉大な先輩の方々を真似して書いて、早1年以上。
少しずつ苦手意識も薄れてきて、この度感想記事にチャレンジしてみました。
書いてみましたが、まだまだ拙い……精進します。
これからも定期的に感想記事を書いていきたいと思います。
それが素敵な小説との出会いになったら……最高に嬉しいです!
ここまで読んで下さってありがとうございました!
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