触れ合うほどに好きになる。
映画のパンフレットには自分が一番グッときたあのシーンの写真がない。。。
そんな経験を何度かしたことがあります。
日常で感じる小さな違和感や気づき、それらは思っている以上に意図的に作られた現象であることに気づきました。
そんな身近な仕掛けからの発見や気づきを書いてみようと思います。
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立ち位置の違いと作り方の違い
「そして映画館はつづく」という本を読んでいたら、先ほどのパンフレット体験の1つの答えを見つけました。
本の中でインタビューを受けているグラフィックデザイナーの大島依提亜さん。
この方はパンフレットをデザインすることを仕事にしている方で、インタビューで言っていたのがこんなこと。
パンフレットは映画そのものではない。
パンフレットには映画のワンシーンの切り抜きは入れず、スチール写真を使う。
それは映画のあるシーンが美しいと感じても、動いている映像を静止したからといって美しい画面になるとは限らないから。
なるほど。
映像で感じる魅力と静止画の魅力は別。
映像の追体験ではなく、パンフレットにしか表現できない要素で構成されているのだと、初めて理解しました。
思い返してもパンフレットの立ち位置は絶妙で、宣伝的な役割でもなく、世界観の設定を詳細に記した解説書ともまた違う。
それは"パンフレットのみで映画を体験することは不可能"、
その思考を前提とし作り方で、あくまでも作品を思い起こさせる"要素"を詰め込んだ結晶がパンフレットというひとつの作品なのだと思いました。
映画監督や俳優さんへの作品のインタビューなら何度か目にしたことはあるものの、こうしたパンフレット作成の視点というのは非常に新鮮な視点でした。
その人に染み込んでいく映画体験
パンフレットは宣伝とも解説書とも違うなら、パンフレットはいつ読むものなのか。そんな問いにも本の中では答えてくれていました。
結論、
パンフレットは映画を観終わった後に読むもの。
映画館に人を呼ぶために作成され、人の注目を集めるチラシやポスターとはその立ち位置が違うもので、
映画という1つの作品で得た感動や余韻を映画館からも持ち帰ってもらう為のもの。
映画体験のステップは3つ。
人に情報を伝える(チラシ)
感動を届ける(映画)
その余韻を持って帰る(パンフレット)
今までは映画が好き、と一口に言っていたけれど、それにはこの3つのステップで複数回に渡って自分の中に浸透しているからなのだと気づきました。
僕は昔、時計屋で接客と修理のアルバイトをしていましたが、
その時も1stアプローチと2ndアプローチによる接客対応を仕込まれました。
初回からいきなり情報を与えすぎても近づきすぎてもお客様は引いてしまう。
だから回数を重ねてペースを合わせて、少しずつそのお客様に歩み寄っていく。
形は違えど映画も本編の上映だけでなく、同じよう複数のアプローチによって心を掴んでいるのではないかと思いました。
過去からの蓄積が”好き”を育む
僕たちは映画、音楽、本、動物、人間、あらゆるものに対して好き、という感情が芽生えます。
それも全て共通していて少しずつ自分の中に浸透してくる、何度も触れ合ううちに好きになれるのではないか、そう思います。
出会った瞬間的に好き、というものも確かにあるかもしれない。
けれどそれがこれまで生きてきた中で一番好きだ、となる可能性は少ないようにも思います。
好きという感情は全て蓄積から生まれる。
好きな映画というのも最初の1回目に衝撃を受けたからかもしれない、その衝撃が2回目の視聴の原動力に変わり、そのエネルギーが好きという感情に昇華されていく。
人間にしても一目惚れという感覚は少ないのではないか。
確かに一目見て好きになることはあるにしても、それはその人の容姿、振る舞い、言動や雰囲気にどこかで知っていた安らぎや感情が重なることで生まれる感情かもしれない。
人が何かを好きになるには、なんども何度も触れる中で、その何かと自分の距離を近づけていくことだと思います。
だからきっと好きになってもらうためにも、
自分が何かを好きになるにも、焦る必要はないのだと思います。
ゆっくり双方の歩幅で歩み寄ってその近づくいていく時間さえ愛おしく思いながら自分なりの”好き”を見つけられたらいい。
そんなことを思います。
ライ
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