冬のブルーを乗り切る方法:ブライトライトセラピー(光療法)で季節性うつ病を防ぐ
日本各地でも秋の気配が深まってきた頃だと思うが、日が短くなるにつれて、気持ちが沈むことはないだろうか?
去年の秋、カナダに越したばかりの知り合いがやる気が出ないと話してくれた。すぐに季節性うつ病の始まりの可能性を考えた。ちなみに季節性うつ病(SAD)とは、秋の終わりから冬になって日照時間が短くなることで発症しやすい気分障害である。
季節性うつ病の可能性に気づいたのは、心理学の専門家としてというよりも実は自身の経験があったからだ。私は大昔、大学の交換留学プログラムでドイツに滞在したことがある。そこで冬に季節性うつ病になった。
ドイツの冬は日が短い上に天気が悪い。目覚めても外はまだ暗く、布団から出るのが一苦労だった。甘いものに手が伸び、気づけば体重が増えている。やる気が出ないので宿題もギリギリでこなす。そんな自分がさらに嫌になり、自己嫌悪の毎日だった。
あとで心理学を学ぶようになって上記は全て季節性うつ病の症状であることを知った。当時、それを知って必要な援助を受けていたら留学中の数ヶ月、もっと楽しく過ごせたのにと思う。だから他の人に同じ思いをしてもらいたくなく、季節性うつ病の兆しには敏感なのだ。
ちなみに主な症状は下記の通りだ。
ちなみに太ったことで起こった悲喜劇については下記の記事に書いた。
季節性うつ病の治療、および予防方法
今回この記事を書こうと思ったのは、去年私が教えた簡単な方法がとても役立ったと、知り合いがどこかに書いてくれていたのを見かけたからだ。心理の専門家として当然だと思っていたことが、実は多くの人に役立つことを改めて思い出した。
10月に入り日本でも秋らしくなってきただろうし、緯度の高いところに住む方々はかなり日照時間が少なくなってくる頃だろう。手軽にトライできるので、冬に気分が沈みがちな方は是非試していただきたい。
それはブライトライトセラピー(Bright Light Therapy, 以下BLT)と呼ばれるものだ。日本語では光療法とも呼ばれる。これは明るい光を用いた治療法で、主に季節性うつ病や睡眠障害や不眠症、また非季節性のうつ病の治療にも使われる。さらには時差ぼけからの回復にも効果がある。
ちなみに最近のメタ分析を使った研究(たくさんの研究結果を分析した結果)でもBLTの効果が認められている。
BLTのやり方
さてBLTのやり方である。
開始の時期:一般には10月の終わりから春くらいまでが推奨されているが、緯度や天気によって日照時間も違うし個人差もあるので、少し気持ちが晴れない、やる気が出ない、睡眠のリズムが狂ってきたなどのサインが出てきたらそれより早く始めても良い。
BLT用のライトを用意する:10,000ルクスの明るさが理想的である。今、日本のアマゾンを見てきたが下記のようなものである。
BLTに効果的な時間と方法:ライトが用意できたら朝の早い時間に光を20分から30分ほど浴びる。ただ目を痛める可能性があるから光を見つめないほうが良い。
私はアメリカ本土の北部に住んでいたときは、朝起きると斜め30センチから50センチ離したところにライトを置いてコーヒーを飲んだり、コンピューターで作業したりしていた。当時、うつはなかったが冬は睡眠のリズムが狂うのでそれを整えるためにやっていた。20分くらいすると頭がスッキリしてくるのが分かった。
副作用と注意事項
BLTの良いところは副作用がほとんどないことだ。一部に頭痛や目の疲れが報告されるくらいである。ただし双極性障害のある方の中にはBLTで躁状態が引き起こされる可能性があるそうだ。精神科で治療している人は始める前に主治医と相談することをお勧めする。
またBLTは万能薬ではない。これに加えて適度な運動や規則正しい生活をするよう心がけてほしい。またうつや睡眠のリズムの改善が見られないときや、調子がさらに悪化した場合は専門医にかかって欲しい。
まとめ
ブライトライトセラピーは、副作用が少ないが季節性うつ病の治療や睡眠リズムの改善に効果的な方法だ。日照時間が短くなる秋から冬にかけて、気分が沈みがちな方や、時差ボケが長引く方はぜひBLTを試してみて欲しい。手軽に始められる方法で暗い冬でも調子良く過ごし、時差ボケからも早く回復できるかもしれない。