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葡萄の蔓、あるいは噂の話について
14歳のことを思い出した。
当時の私は、家にも学校にも、居場所がなく
ただ夜空を見上げて、タバコを吸っていた
明日がくるなんて悪夢だった。
***
「君が何かを想って痛むなら
いつになく優しく振る舞えそうです」
***
他人の手首の傷や、他人が飲みすぎた薬の話、他人が出会い系で出会った男と何をしたかとか
そんなことをただ受話器で聞いていた。
「そんなに死にたければ死ねばいいのに」なんて言えなくて
私はニコニコ笑って電話をとる
私だってまともに空気が吸えないのに、まだ死ぬのは早いなんて馬鹿げたことを思っているんだから。
そう、次のリリースは来週の水曜だ。
「それ」を聴くまでは、死ねない。
***
高校生になった。
次に辞めるのはお前だと思ってた、などと担任に言われるほど状況はヤバかったようだが、なんとか持ち堪えた。
思い出ができた。友達ができた。戦友ができた。
***
「あの頃、僕らは間違えてて
定まらない姿勢で 大いなる意識の上
水求めて」
***
夏の暑い日、借り物の自転車で立川を走った
文化祭の準備、その時私は笑っていた。
制服なんてなかったけど、淡い水色のシャツ、風に靡く濃紺のネクタイ。
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好きな人ができた。
先生だった。
飄々とした掴み所のない会話、それでいて的を得た知識。
ややこしいことを教えているのに、それを感じさせないような、語り口。
大学に合格したと報告したときの
「見間違えじゃないの?」は
残念ながら、今もチクチクと心臓のあたりに残っている。
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「今でも きみのことをうたうリフレインはずっと
溢れるけれど
熱はないんだ
汚れて冷え切ってるんだ」
***
卒業式
校則らしい校則のないこの学舎で
唯一口酸っぱく言われたこと
「体育館に上履きで上がるな」
風紀委員なんてやってた癖に、そのぐらいしか突っ込むところがない。
自由で、本当に、楽しい3年間だった。
この先なんてわからないけど、
あの時、学校に何も言わずにいてくれた人たち
辞めたいと言った時に、あれだけ世間体を気にしていたのに
お前が本当に苦しいなら、と言ってくれた教師の父
散々な家庭環境の中で、弱音もはかず
いつだってやりたいことのために頑張っていて
ずっと隣にいてくれた親友
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「いつか叶うようにと
どの面下げて言うんだろう
その大事な想いも
やがて忘れてしまうんだそうだ」
***
言葉や、音楽や、芸術が、時に人を生かすことがあるということ
突き放したような優しさでも、きっと誰かが救われていくこと
かつて10代だった私たちと、今を必死で生きる高校生たちと
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教科書掲載、おめでとうございます。
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GRAPEVINE
「想うということ」
「スイマー」
「棘に毒」
「Everyman,everywhere」