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高尾歳時記 2025年2月8日

 先日2月3日は、二十四節気の立春。暦の上では、春を迎えました。

 子供のころ、年賀状に「迎春」や「新春」とあったり、梅の花のイラストがあったりすることに、違和感を感じていました。クリスマスから一週間ほどなので、梅も春も見たり感じたりすることはなかったからです。

 ちなみに、ここ4年間の、旧暦のお正月がグレゴリオ暦(太陽暦)ではいつだったかというと:


2025年   1月29日
2024年   2月10日
2023年   1月22日
2022年   2月1日

と、かなりばらつきがあります。太陽のめぐりを一日いちにち、月の満ち缺けを一月ひとつきと数える太陰太陽暦は12ヶ月がだいたい354日しかないので、地球が太陽を公転する周期である365日と6時間弱からはどんどんずれてしまいます。なので、だいたい2年から3年にいちど閏月をもうけて、1年が13ヶ月ある年を作ることで調整しますが、それでも上記のとおり旧暦の正月はかなりばらつきがあります。

 このように旧暦のお正月は太陽暦では一定しませんが、概ね1月末前後になり、だいたい梅の開花の時期と一致するので、年賀状には梅が描かれているのですね。また、旧正月、いわゆる春節を祝う中国はこの太陰太陽暦に従うので、これに合わせた大型連休で大移動が報じられるのも、この時期の風物詩です。

 「旧暦のほうが日本人の季節感に合っている」というような言説をたまに耳にしますが、勘違いです。月と太陽の動きをもとにする旧暦は上述のとおり季節感がずれることがけっこうあります。旧暦を使用していた我々の祖先も当然それはわかっていて、太陽の動きに基づく二十四節気を使って四季の移り変わりをとらえていました。

 暦では春ですといわれても、実感がわかないかもしれません。ですが立春の頃から、里は徐々に、そして確かに、春めいてきます。ところが先週、東京地方は降雪が予報され、高尾では積雪し一面の銀世界となりました。関東地方は立春を過ぎたあたりから晴れ雨のサイクルが徐々に戻ってくるのですが、その関係で実は、東京で雪が降るのは立春を過ぎたあたりからが多いのです。

 忠臣蔵で描かれた赤穂浪士の討ち入りは、雪積もる吉良邸のイメージがありますよね(のちに歌舞伎として演舞された際の演出と聞いたことがありますが)。その決行は元禄15年12月14日とされています。これは旧暦です。もちろん東京で12月に雪が降ることもありますが、極めて稀です。ましてや、積もるほどの降雪になることはそうないでしょう。季節感を理解するためには、太陽暦を調べないといけません。太陽暦にもとづく赤穂浪士の討ち入りの日は、1703年1月30日。立春のころです。

 今日は先週とうってかわり、日本列島は西高東低の強い冬型の気圧配置となりました。天気は晴れ。夜間は冷え込んで、早朝出発時点の高尾山口駅前の気温は零下3℃。また、今日は等圧線の幅が比較的狭く、風が強まることが予報されたので、しっかりと防寒対策をしました。実際、山行中ときおり強い風が吹くことがありましたが、幸いずっと吹き荒れるようなことはありませんでした。ですが、富士山頂上では強風にあおられた雪が煙のように舞い上がる「雪煙せつえん」と呼ばれる現象が観察できました。今日の富士山山頂は気温氷点下20℃で、風速25m/sを超える暴風が観測されたとのことです。

強風で雪が煙のように舞い上げられる「雪煙」。頂上付近や山肌でも観察できました。今日の富士山山頂は気温氷点下20℃。さらに風速25m/sの暴風が観測されており、一般的に風速1m/sごとに体感気温は1℃下がるといわれてますから、優美な姿とはうらはらに、その苛酷さは推して知るべしでしょう。

 朝は極寒だったのですが、その後気温はあがり、心地よい登山日和となりました。

早朝の高尾山口駅前を出発。気温は氷点下3℃。ものすごく寒いですが、準備はバッチリしてきたので大丈夫です。
梅のつぼみが膨らんできています。
もう開花している個体もあります。
こちらでは白い梅も開花していますね。
サンシュユの花のつぼみもふくらんできています。
ご来光!
今朝も冷え込みました。地面には霜がおりています。
ロウバイの花はほぼ満開でした。
周辺では甘くかぐわしい香りがただよっています。
高尾の春の花の季節はまぢかです。楽しみです。
先週着雪していたミズナラの木。雪はすっかりとけてなくなっています。
(2025年2月2日撮影)
こんな感じでした。
(丹沢)大山おおやま。端正な二等辺三角形の姿は関東平野のあちこちから見つけることができます。先週の雪がちょっと残っているようです。
杉の幼木。高尾の植林は杉と檜が大半を占めますが、違いがわからないかたが意外とおおいようです。杉の葉は、このようにトゲトゲしています。
こちらは檜の葉。杉の葉は不用意にさわると手に刺さるぐらい鋭利ですが、檜の葉は柔らかく、鱗状の組織がうちわみたいに広がった形をしています。
今日は空のかすみが少なく、遠景は良好。朝日に輝いているのは東京湾です。
(小仏)城山に到着。富士山の頂上付近に雪煙が舞っているのが見えます。
同じく城山山頂から、都心方面。遠景は良好。とおく房総半島まで見渡せました。
日影乗鞍の稜線の向こうにうっすらとみえる双耳峰そうじほうは筑波山。
一丁平の展望台から富士山。眺望は良好。
富士山をアップ。富士山の左、三角に尖ったいただきを持つのが西丹沢の大室山おおむろやま。そのすぐ右のなだらかな山頂の山が同じく西丹沢の加入道山かにゅうどうやま。そして、富士山の正面から左に伸びる山脈は道志山塊です。
先週降った雪が残っていますね。

 今朝はかなり冷えこんだのと、先週降った雪により地面に水分が供給されたため、今日はシモバシラの氷華が大豊作でした。きれいにカールしたものや美しくリボンが伸びた立派な個体もあり、それぞれの個性が本当にすばらしい。

高尾山山頂に到着。雪煙舞っています。
同じく高尾山山頂から、丹沢主脈方面。先週降った雪がのこっていますね。
コウヤボウキの綿毛。花の季節がまちどおしい。

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