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ともきんぐ
2022年11月3日 14:48
ひよりちゃんへの想いは、ひと夏の熱に浮かされただけだ。そう思うようにしたが、空を見上げ太陽や月を見るだけで、彼女はどうしているんだろうか。島で笑えているんだろうか。そんな事を考えては、胸が締め付けられる毎日だった。なんであそこでしっかり思いを告げなかったのか。後悔もするだけして、冬の訪れを感じるようになったある日、俺は待ち合わせ場所でソワソワしていた。波照間の友人から連絡が来て、ひより
2022年11月3日 12:45
美しい花、美しい海、美しい空。俺は最初この島に来た時、その美しさに全く気付く事ができなかった。押し寄せる仕事、それをただこなす毎日が当たり前になり、俺はその流れを止める事さえできなくなっていた。だからこの島の風景は、ただの流れる風景になっていた。きっと、ひよりちゃんもそうなのだろう。幼い頃から、この島は彼女を『見捨てられた』事を突きつけてしまう島。でも、鎖のように、この島から逃れられ
2022年11月2日 12:41
帰り道、ずぶ濡れになった俺たちはぐっちゃぐっちゃと身体中から音を鳴らしながら歩いていた。なんだかふたりで音楽を奏でているようで、そのうちに楽しくなって、わざわざジャンプしたり、スキップしたりして音に変化をつけた。「こんなの子供の頃以来だ。濡れた長靴の中でグチョグチョ音がするんだよね。それが楽しくてわざわざやってたな」「そんな子供時代もあったんだ。八代さんなんだか可愛い」「ひよりちゃん
2022年10月31日 18:27
「え?島そば食べてないの?」絶句するような顔で、彼女、ひよりちゃんは俺の顔を見た。年は俺よりだいぶ下そうなのに、昨日の一件からもう敬語ではなくなり、近所のだらしない親戚の兄を揶揄うように俺に接してきた。その距離感が俺は心地よく、安心してだらしない親戚の兄として振る舞えた。島そばを食べさせてくれるお店で三線を弾きながら歌を歌ってくれたおばあさんがいた。心地よいメロディで、俺は聞き惚れ
2022年10月22日 13:56
花火を楽しんでいるうちに、服も乾き、自分の服に着替えたが、着替えたら着替えたで、本当の服が今度は面白くなってしまっていた。何をしても楽しかった。今だったら箸が転がっても笑うかもしれない。そんな冗談が冗談じゃないくらい、ただ、ただ、楽しかった。公民館に帰ってきて、2人で別々の部屋に布団を敷いて「おやすみなさい」と別れた。途端に1人になってしまった事に、戸惑いと寂しさを覚えたが、それ
2022年10月21日 22:36
いつも時間に追われるように仕事をし、時間通りに物事を進めているはずなのに、今日に限っては、時間の感覚がなくなってしまい、俺は宿無しになってしまった。俺だけではない。隣のさっき会ったばかりの楓さんも同様だった。「今日は数少ない宿はいっぱいでさあ。だけど、おじいを助けてくれたあんちゃんたちを野宿させるわけにはいかんさあ、どうだい?公民館なら一晩貸すことができるよ。こんな外じゃ、虫に刺されまく