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体温より

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松下洸平さんのシングル、体温からインスパイアされたお話です。
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夏の残り香〜体温より〜

夏の残り香〜体温より〜

仮面舞踏会で俺は踊った。

都会で皆と同じような服を着て、同じような行動をし、オフィス街に馴染んで動く。

そんな俺が、あの南の島で過ごした数日は、物語の主役となり、踊り、物語を進めた。

きっとそれはあの人も同じだったろう。

お互い、島に訪れた日が同じだっただけの共通項で、惹かれ合い、屈託のない笑顔をむけ合い、そして当然のように体を重ねた。

なのに、あの人の吐息、声、肌、それらに触れたはずな

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夏の魔法5〜写真集「体温」より〜

夏の魔法5〜写真集「体温」より〜

ひよりちゃんへの想いは、ひと夏の熱に浮かされただけだ。そう思うようにしたが、空を見上げ太陽や月を見るだけで、彼女はどうしているんだろうか。島で笑えているんだろうか。そんな事を考えては、胸が締め付けられる毎日だった。

なんであそこでしっかり思いを告げなかったのか。

後悔もするだけして、冬の訪れを感じるようになったある日、俺は待ち合わせ場所でソワソワしていた。

波照間の友人から連絡が来て、ひより

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夏の魔法4〜写真集「体温」より〜

夏の魔法4〜写真集「体温」より〜

美しい花、美しい海、美しい空。
俺は最初この島に来た時、その美しさに全く気付く事ができなかった。
押し寄せる仕事、それをただこなす毎日が当たり前になり、俺はその流れを止める事さえできなくなっていた。
だからこの島の風景は、ただの流れる風景になっていた。

きっと、ひよりちゃんもそうなのだろう。
幼い頃から、この島は彼女を『見捨てられた』事を突きつけてしまう島。
でも、鎖のように、この島から逃れられ

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夏の魔法3〜写真集「体温」より〜

夏の魔法3〜写真集「体温」より〜

帰り道、ずぶ濡れになった俺たちはぐっちゃぐっちゃと身体中から音を鳴らしながら歩いていた。
なんだかふたりで音楽を奏でているようで、そのうちに楽しくなって、わざわざジャンプしたり、スキップしたりして音に変化をつけた。

「こんなの子供の頃以来だ。濡れた長靴の中でグチョグチョ音がするんだよね。それが楽しくてわざわざやってたな」

「そんな子供時代もあったんだ。八代さんなんだか可愛い」

「ひよりちゃん

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夏の魔法2〜写真集「体温」より〜

夏の魔法2〜写真集「体温」より〜

「え?島そば食べてないの?」

絶句するような顔で、彼女、ひよりちゃんは俺の顔を見た。
年は俺よりだいぶ下そうなのに、昨日の一件からもう敬語ではなくなり、近所のだらしない親戚の兄を揶揄うように俺に接してきた。

その距離感が俺は心地よく、安心してだらしない親戚の兄として振る舞えた。

島そばを食べさせてくれるお店で三線を弾きながら歌を歌ってくれたおばあさんがいた。
心地よいメロディで、俺は聞き惚れ

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夏の魔法〜写真集「体温」より〜

今は冬なのか、春なのか、夏なのか、秋なのか。
そんな事にも興味を持てないくらい、俺の日々は目まぐるしく、次々とタスクが現れてそれを追う日々。

そんな時、一通の招待状が届いた。

大学の友人が地元の波照間島に帰り、今は民宿を営んでいて、そこで友人たちを招いて結婚式をするのだと。
忙しさのあまり返事をすることも忘れていたが、強制的に有休を取る必要があった俺は流れで波照間島行きを決めた。

島に着くと

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触れる温度、触れない体温3〜配信シングル体温より〜

花火を楽しんでいるうちに、服も乾き、自分の服に着替えたが、着替えたら着替えたで、本当の服が今度は面白くなってしまっていた。

何をしても楽しかった。

今だったら箸が転がっても笑うかもしれない。
そんな冗談が冗談じゃないくらい、ただ、ただ、楽しかった。

公民館に帰ってきて、2人で別々の部屋に布団を敷いて「おやすみなさい」と別れた。

途端に1人になってしまった事に、戸惑いと寂しさを覚えたが、それ

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触れる温度、触れない体温2〜配信シングル体温より〜

触れる温度、触れない体温2〜配信シングル体温より〜

いつも時間に追われるように仕事をし、時間通りに物事を進めているはずなのに、今日に限っては、時間の感覚がなくなってしまい、俺は宿無しになってしまった。

俺だけではない。
隣のさっき会ったばかりの楓さんも同様だった。

「今日は数少ない宿はいっぱいでさあ。だけど、おじいを助けてくれたあんちゃんたちを野宿させるわけにはいかんさあ、どうだい?公民館なら一晩貸すことができるよ。こんな外じゃ、虫に刺されまく

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触れる温度、触れない体温1〜配信シングル「体温」より〜

触れる温度、触れない体温1〜配信シングル「体温」より〜

洗濯したデニムを干そうとしたら、手に白い砂が付いてきた。
まるで『忘れないで』そう言われているように、唐突に俺の前に現れた。

「夢じゃなかったんだな」

あの日の出来事があまりにも今の現実と離れすぎていて、夢だったんじゃないだろうか、そう思う時もあった。

手に付いた白い砂が、容易にあの広い空、広い青の世界、波の音を連れてきて、思い出すのは景色だけではなく、景色に溶けてしまいそうなあの人の笑顔。

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