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毎月短歌 外村ぽこ選

皆さま、外村ぽこです!今回、光栄なことに毎月短歌の人間選者に選んでいただきましたので精一杯務めさせていただきました!

早速、賞の発表に参ります!各部門から三首ずつ選んでおります!例に漏れず作者は見ずに選ばせていただきました!どれも素敵な歌たちです!!


テーマ詠「夢」部門

グッドぽこ賞(三席)

夢だから大目に見てと手をつなぐ目覚めたあとも手のひらを見る/虚見津山都(そらみつやまと)

トップバッターに選ばせていただいたのはこの歌です。上の句で主体は眠っているのでしょうが、これは夢だと気付いているんですよね。そのうえで、『大目に見てと手をつなぐ』という、夢ならもっと欲張ってもいいのにそれをしない主体の控え目な性格が可愛らしいです。
と、上の句を読んだ段階ではこのような感想を抱いたのですが下の句で雰囲気が変わる感じがしますね。夢での感覚が目覚めた後も残っている気がするのは自分も経験がありますが、この歌では主体は昔に失われた感覚を思い起こしているのかもなと思いました。
手をつなぐ人はもう二度と会えない人で、夢で会えたから手をつなぐ。現実ではどんなに希っても叶わない願い、主体にとってはこれ以上ないぐらい贅沢な望みなのかもしれません。
シンプルな恋の歌には収まらない広がりがある気がしました。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

仰ぎ見る空にきらめく星たちのどれかが私の夢の亡骸/佐竹紫円

二席に選ばせていただいたのはこの歌です。まず一読して、救われるなあと思ったのが率直な感想です。上の句からは坂本九さんの『上を向いて歩こう』を連想しますね。恐らく主体は夢破れて、ありふれた平凡な日々を過ごしているのでしょう。もちろん夢を追うことは苦しいことの連続で、夢を諦めるのも勇気が要るし、自分を救う選択の一つだと思います。
それでもふと、あの選択は正しかったのかなと喪失感に襲われるのが人間でしょう。そんな時、上を向くと綺麗な星空がある。その中のどれかが私の夢の亡骸である。つまり、星空とは叶わなかった夢の集まりである。
とても素敵な考え方ですし、こんな綺麗な星空の一部になれたのなら夢を追いかけたあの日々も無駄ではなかったと思えそうです。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

「ねえ、君と厚切り牛タン炙ってた」寝起きに微睡みながら笑って/さとうきいろ

テーマ詠「夢」部門、一席はこちらの歌です。お題の「夢」を様々な角度から捉えた歌がたくさんありましたが「夢」というお題でこうゆう歌を詠むのかと感嘆しました。
鍵括弧の中は相手の台詞だと思うのですが、『君と厚切り牛タン炙ってた』ってなんて凄い台詞だろうと思いました。相手の夢の話ってつまらないとよく言いますが、何て言うんでしょうね。こんな幸せな気持ちになる台詞があるのかなと、すいません、語彙が消滅しております。
好きな相手と同じベッドで眠り、相手の他愛無い夢の話を聞き、夢にも自分が出てきてくれている嬉しさ、それをにへらと笑って話してくれる愛おしさ、相手にとって主体と厚切り牛タンを炙るだけで幸せなのだろうと思えるこの平凡さ。まさに幸せをこれでもかと表現されている歌だと感じました。
正直に申してしまえばダントツの一席でした。好きです。

以上でテーマ詠「夢」部門の発表は終わりです!続いて自由詠部門の発表に参ります!レッツゴー!

自由詠部門

グッドぽこ賞(三席)

誰ひとり喋らぬ通勤電車から見えるきれいな世界の終わり/緒方幸穂

自由詠部門、三席はこちらの歌です。この歌は一読したときはぶっちゃけよく分からなかったんですよね。『世界の終わり』ってなんだ?って思って、自分の中では比喩表現で一日の終わり=落日のことを言っているのかなと最初思いました。でも『通勤電車』なんですよね。そうなると時系列が合わない。
そう思ったときにこの世界の終わりは比喩ではなくて、本当に地球滅亡が迫っているのではないかと思いました。仮に世界が終わるとなった時、残された日々を私たちはどう過ごすのか?明日滅ぶとなったらみんな愛する人と過ごしたりするでしょう。でも、もし1年後、5年後、10年後滅ぶと言われたら?もしかしたらこの歌のように、仕事に向かうのかも…そんなSF感が魅力の歌だと思いました。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

でもねって諭す口調のやわらかき君がさくりと霜柱ふむ/高田 圭

二席に選ばせていただいたのはこちらのお歌です。あまり男性、女性という枠で括るのは良くないと思っているのですが、女性が愚痴を言うときはただひたすらに共感を求めている時だと思っています。主体も恐らく『君』に愚痴を言ったのに『でもね』と優しく諭されている。
『君』は良かれと思って「もしかしたら○○さんにも事情があったのかもしれないよ」みたいな聖人君子みたいなことを言うのでしょう。もちろん愚痴なんて言わない方が良いに決まっているし、『君』の言っていることの方が正論かもしれない。でもそんなことは望んでいないんだよ!正論がいつも正しいと思うなよ!という怒りや失望に似た感情が下の句の『霜柱ふむ』という暴力性と響き合うようです。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

コンティニュー許してくれる怪獣は本当は寂しいだけだと思う/猫背の犬

自由詠部門の一席はこちらの歌です。RPGなどのゲームをやる人だったら誰もが分かる感覚だと思いますが、ボスに負けたら「コンティニューしますか?」と聞かれる。あるいは、前回セーブしたところに戻って再挑戦できる。勝つまで戦える。ゲームがゲームである為に必要なシステムです。
そんなゲーム性にマジレスをするような上の句が魅力的ですね。怪獣は決してとどめを刺さない。そしていずれ倒される。怪獣は復活しない。
この歌を読んだ後だと怪獣がとてつもない孤独を抱えた存在に思えます。怪獣は強い、その強さゆえに孤独であり、主人公と闘っている間だけは他者と繋がれている気がして満たされているのかもしれない、たとえそれが敵意でも。そして、満たされながら倒されていく、、、切ないですね。
ゲームの敵に注目する着眼点も素敵ですが、寂しいんじゃないかと思える感受性も素敵です。好きです。

これにて自由詠部門の発表は終わりです!最後は10月の自選短歌部門です!それではどうぞ~

10月の自選短歌部門

グッドぽこ賞(三席)

路地裏にみつけたカフェがやさしくて奥行きの増すきみの住む街/みくに

自選短歌部門の三席はこちらの歌です。とっても可愛らしい歌だな~とほんわかしました。主体は『きみ』と最近付き合い始めたのかなと読みました。きみの住む街で待ち合わせをしていて早く着き過ぎたのか、もしかしたら会う約束なんてしてないけどきみの住む街に来てしまったのかもしれない。
そんな時にぶらーっと歩いていてたまたま見つけたカフェがとても居心地が良かったのでしょう。まっすぐきみに会いに行っていたら見つけることができなかったカフェ、そもそもきみがいなければ来ることもなかった街。
きみを起点にまさに『奥行きの増す』ように主体の生活が彩られていくようで、改めて恋って素敵だなと思いました。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

あけびつて食べものなのと云ふひとに外皮をそつと剥がしてあげる/高田月光

二席はこちらのお歌です。皆さんはあけびを食べたことありますか?自分は(自分で自覚している中では)ありません。画像で見ましたけど、あけびって紫でグロテスクで知らなければ食べようとしないかも、、、そんなひとに食べ方を教えてあげるのではなく『外皮をそつと剝がしてあげる』というのが不思議と官能的でありますね。
無知な相手に教えてあげること、相手の初めてが自分になること、自分が良いと思うことを相手にも強要すること。詠み手は決してそんなつもりではないのかもしれませんが、自分は決して下品ではない艶やかさがある歌だと感じていて、文語がそれを助長していているとも思います。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

君の手がぶつかる夜に事故ですか?事件ですか?と求愛したい/猫背の犬

一席はこちらの歌です。(まさかの猫背の犬さん二連覇!)
一読してめちゃくちゃ可愛い~って思いましたね。自分は付き合う前の二人がベンチに座っていて、手がうっかり当たってしまった景で読みました。付き合う前だとうっかり手が触れるだけで心拍数爆上がりしますよね、分かります。
それを主体は『事故ですか?事件ですか?』とまるで110番案件に例えているわけですね、可愛い。しかもそれを求愛行動としている。事故だったら本当にうっかり当たってしまっただけであり他意はないのですが、事件だったらそれは意図的な触れ合いだったわけです。そんなのもう両想い確定ではありませんか。『君』は小悪魔系ですね、間違いありません。
ただ主体はあくまで『求愛したい』と願望を述べているのであって本当に君に聞くことはできないのでしょう。今の関係が壊れることに臆病になる恋愛のもどかしさも含めてキュンキュンします。好きです。

終わりに

以上で毎月短歌の受賞作への評は終わりとなります!X(旧Twitter)でスペースでも評をつらつらと話しているので良ければ聴いてください!スペース限定で惜しくも受賞を逃したネクストぽこ賞(佳作)も紹介しております!

それではこれにて本当に終わりです!とっても楽しかったのでまた評を書きたいなと思いますね…それではまたどこかでお会いしましょう~🐢

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ぽこまる(外村ぽこ)
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