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金沢・新潟ひとり旅
5月末に、3泊4日で金沢・新潟にひとり旅に行ってきた。
んまーーー、これが素晴らしくってね。
まだまだこの後味をひとりじめしておきたいくらい、宝物のような時間をすごした。
ひとまず、現段階で書けることをつらつらと記しておきたい。
自分のことを思い出す
自分のことを長らく忘れてた、ということに気づいた。
金沢と新潟のまちを歩いたり、地元の人たちとお話したりしながら、いろんな自分のことを思い出した。
「あー、こういう空気好きだっけな」
「あー、こういう時間ひさしぶりだな」
「あー、これこれ、これが好きなんだよな」
「あー、やっぱりこういう瞬間に胸おどるんだよな」
「あー、そういえばいつだってこういう人たちのおかげで生きてこれたんだよな」
「あー、ずっと忘れてたな、この感覚」
その連続。
たぶん山形にUターンする少し前、東京生活の終盤あたりから、自分のことをずっと見失ってた(る)気がする。
地元に帰ってから折に触れてちょっとずつその片鱗を取り戻すこともあったけれど、この金沢・新潟旅行はちょっと言葉にできないくらい圧倒的だった。
具体的なところの言語化が追いついていなくて、いったん今はこれくらいしかまだ書けないのがもどかしい。
ひとまず旅行から山形に帰ってきてからも、ちょっとずつ湧き出るように自分の心の声がにじみ出てくるというようなことが続いている。
まだ渦中にいる。
地元の人たちと交わる
我ながらナイスな嗅覚をもっているというか、運がよすぎるというか、ご縁に恵まれているというか。
とにかくこの旅行で出会った金沢の人たちの顔が今でも胸に残っている。
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たまたま入った喫茶店のご主人とは、店内にふたりきりなのをいいことに、2時間あれやこれやとたくさんおしゃべりをした。
おしゃべりというか、ほぼわたしがご主人のお話を聴かせてもらってただけなのだけど、そのたのしいことといったら。
ほんと映画みたいなエピソードで、素敵なお話だった。
それから、あとから入店してきた外国人のお客さんとも少しだけお話をしたのだけど、久しぶりに英語を話すのが楽しかった。
語学って不思議なもんで、話す言語によって少し人格が変わる感覚があるのよね。
英語を話すときのわたしは少し陽気というか、日本語の時よりもちょっと明るい人間になる。
英語を話す機会がしばらくなかったので、そういうちょっと明るめの自分に会ったのはとても久しぶりだった。
それはそうと、この喫茶店のご主人が、おいしいコーヒーの入れ方をこと細かく教えてくれた。
道具の選び方や、豆の選び方や扱い方、コーヒーをおいしく淹れるコツから、「おいしい」とはどういうことなのかということまで。
「次に金沢に来た時は、俺はいないかもしれないからな(笑)」
とか言って。
「やってみて分からないことがあったら、またいつでも来なさい」
とも言ってくれた。
なるべく早く道具を揃えて、彼の背中を追いかけてみようと思う。
それからなるべく早く、また会いに行こう。
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この旅行では、お酒を飲もうと決めていた。
山形では運転や、仕事のパフォーマンス維持のために飲酒は皆無になっていたので、今回は久々にお酒をたしのむぞー!と意気込んでいた。
それで、ネットであれこれとお店を見る中で「あ、たぶんここ好きだな」という勘からうかがった裏路地のバーがある。
そこでも、最高の出会いがあった。
バーのマスターと、富山から遊びにいらしていた常連さんと、おいしいお酒を飲みながらお話した2日目の夜。
3日目の予定は何も立てていなかったというか、
「どこ行っても、もしくは何もしなくても、いるだけでたのしいから朝の気分で決めよう〜」
くらいに思っていたのだけど、このお2人におすすめされたのが白山比咩神社だ。
それで3日目は金沢市内から電車に乗って少し離れてこの白山比咩神社に行くことにしたのだけれど、これが、んまーーー素晴らしくってね。
あのお2人に教えていただかなければ、白山比咩神社の存在すら知らずにいるところだった。
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小雨の中で歩く表参道も、厳かな白山比咩神社も、その帰りに寄った獅子吼高原のゴンドラや、その近所の八幡神社や、金剱宮や、地元の和菓子屋さんやパン屋さんや……そのどれもがほんとうにすばらしかった。
あのお2人に感謝するばかりだ。
地元の方言の行き交う中で飲むお酒、なんか2割増しでおいしかったなあ。
あ、そうそう、店主の方におすすめされたバックギャモン、ちょうどパンサーの向井さんもラジオで熱弁してて気になってたところだったから、わたしもやってみようと思う。
またあのバーで飲みたいなあ。
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3日目の晩ごはんにうかがったお寿司屋さんの大将は、能登のことをたくさん教えてくれた。
お寿司屋も一品料理もおいしすぎて、わたしが耐えきれず日本酒を頼んだあたりで「お酒、飲みたくなったか(笑)」って話しかけてくれて。
そのあたりでちょうど店内にわたしだけになり、そこからあれやこれやとお話を聞かせてくれた(運がいい)。
能登は今でも大変な状況だそう。
年始の大地震で、大将のご友人も3日間生き埋めから自力で脱出するも今でも避難所生活を余儀なくされているとのことだった。
それに金沢の飲食店としても、能登のお酒や、魚介・野菜や果物、塩にいたるまで、やはりその影響は少なくないのだそうで。
で、旅行から帰ってきたら、また能登で大きな地震のニュース。
大将がいろいろ教えてくれたから、そのニュースに対してのわたしの感じ方も以前とは全く違うものになった。
こういう経験をしないと身近に感じられない未熟さはお恥ずかしい限りなのだけれど。
あれから、能登のことがまったく他人事じゃないし、できることを探してやってみようと思う。
にしても能登の魚介はさることながら、「ながらも」っていう海藻の酢のもの、おいしかったなあ。
能登のサーモンも、もう一回食べたいなあ。
『光の跡』をたどる
金沢に行ったきっかけには細々といろいろあるのだけれど、そのひとつに源さんのオールナイトニッポンでの金沢旅行のお話がある。
昨年末にリリースされた『光の跡』は、源さんの金沢旅行が作詞に大きく関わっている。
その金沢旅行のエピソードが大好きなのだけれど、今回実際に金沢に行くにあたって、その放送をくり返し聞くなどしていた。
だからだろうか、この旅行ではいくつもの「光」を見た。
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日本海に沈む夕陽だとか、
水面に広がる波紋のきらめきだとか、
アジサイの花びらを濡らす雨粒だとか、
やさしくゆれる木漏れ日だとか、
ベッドから眺める朝日だとか。
それにこの金沢・新潟旅行は、どこかに源さんの気配を感じていた。
そして例にもれず今回も音楽とともに街なかを歩くなかで、源さんだけじゃなくて、サカナクションとか藤井風とかセカオワとか、そういうわたしのすきな音楽の気配もともにあった。
それもわたしにとっては足元を照らす「光」だった。
それから、不思議な感覚なんだけど、「これから出会う誰か」の予感もあった。
そういう、得体の知れない感覚的な「光の跡」や、かの名曲『光の跡』をたどって歩きつづけた4日間だった。
歩いて、歩いて、歩きつづける
「歩きつづけた」と書いたところで思い出した。
この旅行、すこぶる歩いたのだった。
歩いて、歩いて、歩きつづけたのだった。
4日間で、76,000歩超え。
いーや歩きすぎだろ。
でも歩きつづけるのが全く苦ではなかったのは、どの街も人も風景も素敵だったからだ。
自転車やバスや電車での移動ではきっと気づきもしなかったであろう、小さな感動がたくさんあった。
山形で車を運転するようになって、わたしは今でも自分の車の中が大好きではあるけれど、歩くことでしか出会えないこと・場所・ご縁はたしかにあるなあと実感した。
「自分の足で歩く」
いろんな意味もふくめて、自分の足で歩きつづけるって、ものすごく大事だと思い知った。
「今のうちに旅をしよう僕らは」
源さんの『光の跡』の歌詞にこうある。
今のうちに
旅をしよう 僕らは
悲しみにひらひらと手を振る
窓を開けて 風に笑み
意味なく生きては
陽射しを浴びている
年始の記事にはじまり、他の記事でもちょくちょく書いてきたのだけれど、今年は「旅」がわたしのキーワードな気がしている。
それから、「整理」とか「片付け」とか「手放す」とか「調整」とか。
今回の金沢・新潟旅行は、その年始の予感がまさにつながった時間となった。
次なる予感
バーでお会いしたお2人に、山形県出身の写真家のことを教えてもらった。
次はこの写真家を知る、山形県内の小旅行に出かけてみようと思う。
それから、帰ってきてから映画『青春18×2』(とっても良かった……!)を見たのだけれど、「旅」と新潟や東北の描写があってものすごく胸にくるものがあって。
それで、最近よく目に入るのが「台湾」なのね。
だから、台湾への旅行も少し先に考えている。
そして、今ある暮らしのことも軌道修正が必要だと確信した。
正直、今はこれが一番手前にある。
うん、まあ一気に大きくは変われなくても、ちょっとずつ小さく変えていこうと思う。
金沢や新潟の街を歩いて、現地の人たちと話して、この目で見て、この足で踏みしめて感じたことを、もう少し見つめてみます。
ひとまず、今のところはこんな感じ。
実に充実した時間でした。