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候補者体験について考えてみたお話
こんにちは。採用市場研究所でコンサルタントをしている木下です。
直近2つのnoteで、採用資料の種類や、それぞれの目的と利用シーンについて整理しました。そのなかであらためて「候補者体験の重要性」を認識しました。
候補者体験といえば、Gaudiyさんのファンベース採用も、候補者体験を従来のカタチからアップデートした例として話題になっていますよね。
そこで今回は、候補者体験についてざっくりと整理してみたいと思います。
今回は、こんな方に向けて書いています。
・自社の採用プロセスが候補者にとって良い体験なのか、悪い体験なのかを知りたい方
・候補者体験についてこれから考えたいなという方
候補者体験(Candidate Experience)とは?
一般的に、候補者体験とは、候補者が企業やポジションのことを認知してから選考を終え、入社するまでの一連の体験のことを指します。
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「企業やポジション」としているのは、企業のことは知っていても、その企業で募集されているポジションのことやそのポジションが所属するチームのことは知らないことがあるためです。
例えば、コカ・コーラ社のことは知っているけれど、コカ・コーラ社で募集されているデータサイエンティストやデータサイエンティストの所属するチームの特徴については認知していない、こんなことはあるあるではないでしょうか。
採用活動のとらえかたも日々アップデートされている
冒頭のGaudiyさんのファンベース採用では、採用活動を上記のような「線」ではなく「円」で表現されています。
個人的な考えでは、理想的な採用プロセスは「線」ではなく「円」です。辞退者や見送り者も含めてファンにすることが、採用活動をフローで終わらせず、ストック(資産)に転換することにつながると考えています。
この場合は、候補者体験の終点がないため、選考を終えるまでを候補者体験とする定義自体が変わってきます。
私自身も、候補者体験の終点を選考を終えるところで閉じてしまったらもったいない、採用は一期一会のものではないと思っている派なので、このあたりのトピックについては、あらためてどこかで深堀りをしたいなと思っています。
今回の「候補者体験とは」という主題に戻ると、線と円の違いがあっても、候補者体験の「成功」は、必ずしも「入社」ではないということです。
「その企業を受けてよかった」と思ってもらうこと、「企業のファン」になってもらうことが、体験に価値がある状態です。
当てはまっていたら要注意?悪い候補者体験の例
一般的に「悪い」とされる候補者体験の例について整理しました。
1.雑なファーストコンタクト
・ばら撒き型だったり、ミスの多いスカウトメール
・どうみても自分にマッチしていると思えない求人
・エージェントから十分な情報がないまま紹介される
ちなみにこちらは私が実際に受け取ったスカウトです。
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冒頭の名前と、本文内で呼びかけている名前が違っています。他の方に送った文章をコピペして、直し忘れてしまったんだろうなぁということがわかるミスです。
私自身もスカウトメールを送るので、これを受け取ったときに「(あってはいけないけれど、一番ありがちなミスだよねわかるわかるよぉ、ひぃぃぃ)」というなんとも言えない気持ちになりました。
2.候補者の「知りたい情報」が「伝わる形」で公開されていない
・候補者の知りたい情報が外部に公開されていない
・コンテンツはあるが、多すぎてどれをみたら良いかわかりづらい
・コンテンツはあるが、散らばっていてどこにあるかがわかりづらい
ある意味、ぜいたくな悩みともいえるコンテンツが多すぎる問題は、大きな企業ほど起こりがちです。
発信に力を入れる体力があり、歴史もあるためコンテンツは溢れているけれど、運用する側が把握しきれずに、候補者へ適切なコンテンツの案内ができないという状態が生まれます。
3.候補者の状態を無視した進行をする
・今すぐの転職意思はないと伝えたうえで参加したカジュアル面談で志望動機を聞かれる
・カジュアル面談の内容が、「面接」になっている
4.連絡が遅い
・次のステップについての連絡が遅い
・面接後、候補者から問い合わせするまでアクションがない
5.選考に対するフィードバックがない、もしくは定型
・面接の結果について具体的なフィードバックがない
・お見送り理由が、「ご期待に沿えなかったため」という一言だけで不採用通知が来る
現場からお見送りの理由が回収できず、やむを得ず「ご期待に・・・」と送るケースが発生するのも、あるあるです。
6.日程調整が永遠に終わらない
・候補日をだしても決まらない、待たされる
・日程調整ラリーがだらだらと続く
7.面接官の態度が悪い
・面接官が無愛想、失礼
・明らかに興味のない対応をされる
8.面接官によって言っていることがバラバラ
・人事と現場の言っていることが違う
・現場と役員面接で聞く内容に乖離がある
人事には働きやすい環境推しされたけれど、現場に聞いたら「うちの部署はワークライフバランスとかないから」とあしらわれた例もあります。
9.面接を通じて企業やポジションの魅力が感じられない
・候補者側が一方的な見極めをされている気持ちになる
・魅力がわからず志望度があがらない
10.入社前と入社後のGAPが大きい
・入社前に聞いていた内容と悪い意味でGAPがある
入社前は期待値があがりがちな状態です。そこからの急転直下は、その後の従業員体験の悪影響につながります。
良い候補者体験の例
次に、良い候補者体験の例について紹介します。シンプルに言えば、悪い例の裏返しです。
1.丁寧なファーストコンタクト
・興味を惹くスカウトメール
・自分がマッチしていると思える求人紹介
・エージェントから十分な情報がと一緒に紹介される
自分の想定範囲内にはなかった職種でも、自身の経験のどこを評価し、何を期待されているのかが伝わってくると、興味をもつきっかけになったりもします。
私自身、前職まではWebディレクションや、システムの企画等々をしていたのですが、企画経験と開発プロセスの知見はエンジニア採用に活かせるよと言われ、そんな道もあるのかと興味を持ったのが現職へのきっかけでした。
2.候補者の「知りたい情報」が「伝わる形」で公開されている
・候補者の「知りたい情報」が外部に公開されており、アクセスできる
・多くのコンテンツから、候補者が見るべき情報への動線が整備されている
・必要なコンテンツが一箇所にまとまっている
3.候補者の状態に配慮した進行をする
・カジュアル面談と選考を明確にわけている
・カジュアル面談では、相手が知りたいことがなにかにフォーカスする
4.迅速な連絡
・次のステップについての連絡は迅速に行う
・次のステップに進んで欲しい候補者には、その場で次の日程を決めておく
どうしても次のステップに進むまでの連絡に時間がかかる場合は、その間の状況についてもこまめアップデートするコミュニケーションを挟みましょう。
5.具体的なフィードバック
・面接の結果について具体的なフィードバックをする
・お見送りの場合でも、建設的なフィードバックを伝える
採用プロセスを通して、なにかしらの「気づき」があれば、それは候補者にとってプラスになります。
6.スムーズな日程調整
・日程調整ツールを活用する
・面接官の業務における「面接」の優先順位の認識を合わせておく
7.面接官と一緒に働きたいと思ってもらえる
・一緒に働きたい相手かどうかとしてお互いに見ていることを認識する
・スキルや経験が合わない場合も、人としてリスペクトを持って接する
8.一貫したメッセージ
・面接官全員が同じ情報を共有し、一貫したメッセージを伝える
・面接官同士の評価基準を合わせておく
9.面接を通じて企業やポジションの魅力を感じてもらう
・企業やポジションの魅力だけではなく、現在の課題について率直に伝える
・候補者が「そこで働く自分」をイメージできるようにする
10.入社前と入社後のGAPをなくす
・入社前に詳細な情報提供を行い、候補者の期待と現実を一致させる
・オンボーディングプロセスで入社後のサポートを行う
良い候補者体験を作るためには
良い候補者体験を作るために必要となるアクションは、大きく3つあります。
1. 候補者のことを理解する
候補者の普段の行動動線、情報収集の習慣、仕事で感じるストレスのなかみ、何を大切にするのかという価値観等が含まれます。
2. 自社のことを理解する
自社の業界、とりまく市場の動向、現在の採用の課題、その原因、自社のアイデンティティとなる考えかた、価値観、競合との優位性等が含まれます。
3. 候補者「体験」を追体験し、改善するプロセスを繰り返す
永遠に完璧な候補者体験はありえません。
候補者をとりまく環境、自社の状況等、日々さまざまな要因が変化するなかで、理想に近づけたはずの候補者体験がいつの間にか違う方向を向いていたということもあります。
候補者体験をひとつひとつの「点」ではなく、一連の流れで追体験し、引っかかりになる箇所がないか、今できる範囲でベストになっているか、常にアンテナをはり、細かいアップデートを繰り返していくことで良い候補者体験に近づいていきます。
今回は、候補者体験について整理してみました。
候補者体験がどこからどこまでを指すのか、良い事例、悪い事例についてはとらえかたによって変わる部分でもあるので、あくまでも現時点での、私個人の意見であることを付け足しておきます。
少しでも参考になれば嬉しいです!